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病院の情報セキュリティ確保は必ずしも十分ではない、ベンダとの責任分解明確化も2割の病院にとどまる—日病

2023.2.6.(月)

病院の情報セキュリティ確保は必ずしも十分ではなく、例えば25%の病院が機器・ソフトのバージョン情報把握を行えていない—。

また、システムベンダとの情報セキュリティに関する「責任分解」について、2割の病院では明確化ができていない—。

日本病院会が2月2日に公表した「電子カルテシステム等のセキュリティ対策状況について」報告から、こうした状況が明らかになりました(日病のサイトはこちら)。日病では、脆弱性の認められた病院に対し、個別の注意喚起を行っています。

情報セキュリティ確保には多額のコストが必要だが・・・

多くの医療機関において電子カルテ等の院内情報システムの整備が進んでいます。さらに、医療分野における質向上・生産性向上に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が強く指摘され、その一環として「患者の電子カルテ情報を全国の医療機関等や患者とも共有・確認し、その情報を現在の診療に活かす」取り組みが始まり、順次拡大が進められています(関連記事はこちらこちら)。

ただし、こうした取り組みの大きなハードルとなっているのが「情報セキュリティ確保」です。

昨今、「ランサムウェアと呼ばれるコンピュータウイルスによって医療機関等が多大な被害を受けてしまった」事例が散発しています。

ランサムウェア(Ransom(身代金)+Software(ソフトウェア)の造語)はコンピュータウイルスの1種で、例えば医療機関の保有する診療データ等を全て暗号化して閲覧不能とたうえで「データを元に戻して欲しければ多額の費用(身代金)を支払え。言うことを聞かなければ機密データを公開するぞ」などと脅す犯罪に使われています。昨秋(2021年秋)には徳島県の病院がランサムウェア攻撃を受け、今秋(2022年秋)には大阪府の大規模急性期病院が被害にあいました。患者の電子カルテをはじとする医療データがすべて暗号化され病院内で利用できなくなり、大阪府の大規模急性期病院では全面復旧までに数か月が必要となりました。

こうした事態も踏まえ、厚生労働省と健康・医療・介護情報利活用検討会の「医療等情報利活用ワーキンググループ」では、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を改訂し、例えばシステム担当者のみならず、医療機関の管理者(院長等)もセキュリティ確保の重要性強く認識することの重要性などを注意喚起していくこととしています。

そうした中で日本病院会では、会員の病院における情報セキュリティ体制を調査(382病院が回答)。そこから、次のような状況が明らかになりました。

▽情報システムの管理体制は、「専任の担当部門がある」:217病院(56.8%)、「委員会等を設置している」:199病院(52.1%)、「専任の担当者がいる」:152病院(39.8%)、「兼務の担当者がいる」:168病院(44.0%)など

日病情報セキュリティ調査結果1



▽情報システムの保守体制は、「内部スタッフおよび外部業者」:276病院(72.2%)、「外部業者」:61病院(16.0%)、「内部スタッフ」:43病院(11.2%)、「実施していない」:1病院(0.3%)、「わからない」:1病院(0.3%)

日病情報セキュリティ調査結果2



▽院内の医療情報システムの「リモートメンテナンス」について、373病院(97.6%)が許可している

▽リモートメンテナンスを許可している病院のうち、「バージョン情報を把握できている」のは279病院(75.0%)、「バージョン情報を把握できていない」のは93 病院(25.0%)

日病情報セキュリティ調査結果3



▽システムセキュリティに関する責任分界(どこまでを医療機関が負い、どこまでを外部システム事業者等が負うか)について、契約書・SLA(サービス合意書)で明示的に定めているのは76病院(20%)、契約を取り交していないのは194病院(51.1%)

日病情報セキュリティ調査結果4



▽「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に基づき、外部ITベンダから報告を受け内容の確認を行っているのは171病院(45.0%)、行っていないのは168病院(44.2%)、わからないが41病院(10.8%)

日病情報セキュリティ調査結果5



ここから、「すべての病院でセキュリティ確保が十分に行われているとは言えない」状況が伺えます。セキュリティに問題があれば、上述したランサムウェア等の被害に合い、長期間の診療停止等に追い込まれる確率が非常に高くなります。

日病でICT推進委員会の委員長も務める大道道大副会長(社会医療法人大道会理事長)は「回答病院の中で脆弱性があるとされる機器を使用している病院へは、個別に注意喚起している」ことを明らかにしています。

なお、セキュリティ確保には、やはり相応のコストがかかります。日病・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会で構成される四病院団体協議会の調査によれば300床台の病院では1050-2600万円程度、500床以上の大規模病院では5900万-1億3000ま万円程度の費用がかかるとされています(関連記事はこちら)。

日病の相澤会長も「責任分解について個々の医療機関にまかせず、国が統一の基準を示すべきではないか」「サイバーセキュリティ確保対策を国が支援すべきではないか」などの考えを強く打ち出しています。



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