地域医療連携推進法人における会計書類作成の指針を公表―厚労省
2017.3.23.(木)
厚生労働省は21日、4月からスタートする地域医療連携推進法人の会計基準(厚生労働省令)を制定。あわせて留意事項や計算書作成方法の運用指針に関する通知「地域医療連携推進法人会計基準適用上の留意事項並びに財産目録、純資産変動計算書及び附属明細表の作成方法に関する運用指針」を都道府県知事に宛てて発出しました(厚労省のサイト、省令はこちら、通知はこちら)。
地域包括ケアシステムの構築などに向けたツールの1つ
地域医療連携推進法人(以下、連携推進法人)は、一昨年(2015年)の医療法改正で創設された「地域包括ケアシステムを構築する、また病院・病床の機能分化・連携を推進するためのツール」の1つです。
各都道府県で地域医療構想の策定が進められ、2025年に向けて、地域の一般病床・療養病床を▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期―などの機能に再編していくこととなっています。その際、地域の病院・診療所・介護保険施設・介護サービス事業所などが強調し、「主に●●病院が高度急性期を担う」「主に◆◆病院が回復期を担う」といった見解を一致させることが重要です(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
このために地域医療構想調整会議という協議の場が設けられますが、この考え方をさらにすすめ、「地域の病院・診療所・介護老人保健施設などを開設する複数の非営利法人・個人が参加して、機能分化・連携に関する意思決定を行う連携推進法人を設立する」ことを可能としたものです。連携推進法人で機能分化・連携方針(地域医療の再編に向けた統一的な連携推進に向けた方針)を固め、参加法人はこの方針に基づいた運営を行っていくことになります(関連記事はこちらとこちら)。
厚労省は2月17日に、連携推進法人の詳細に関する通知「地域医療連携推進法人制度について」を発出(厚労省のサイトはこちら)。その中で、連携推進法人の計算については別途定めること、医療連携推進法人の認定基準の1つとして「医療連携推進業務を行うことを主たる目的とする(医療連携推進業務会計の経常費用が、法人業務の全費用の50%超である)」ことなどを掲げていました。
今般の省令・通知は、「連携推進法人の計算」に関する諸規定を定めるものです。省令では▼貸借対照表▼損益計算書―について、通知では、これに加えて▼財産目録▼純資産変動計算書▼附属明細書―の作成基準を定めています。
例えば、連携推進法人と参加法人との取り引き(例えば、連携推進法人から参加法人への貸し付けなど)については、▽経常収益▽経常費用▽特別利益▽特別損失▽金銭債権▽金銭債務―の額を参加法人ごとに注記することが求められる点を明確にしています。
また連携推進法人の貸借対照表には、「法人の財務状態または損益の状況を明らかにするために必要な事項」を注記することが求められますが、その具体例として次のような事項を列挙しています。
▽固定資産の償却年数、または残存価額の変更に重要性がある場合の影響額
▽固定資産について減価償却累計額を直接控除した残額のみを記載した場合には、当該資産の取得価額、減価償却累計額および期末残高
▽原則法を適用した場合の退職給付引当金の計算の前提とした退職給付債務などの内容
▽繰延税金資産および繰延税金負債に重要性がある場合の主な発生原因別内訳
▽補助金などに重要性がある場合の内訳、交付者および貸借対照表等への影響額
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