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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

2017年度の臨床研修医は8439人、地方採用が過去最高の58.2%に―厚労省

2017.7.28.(金)

 今年度(2017年度)の初期臨床研修医は、過去最多だった前年から133人減の8489人が採用となり、東京など6都府県を除く道県での採用割合は過去最高の58.2%となった―。

 このような状況が、厚生労働省がさきごろ公表した2017年度の「医師の臨床研修医の採用実績」から明らかになりました(前年度の状況はこちら)(厚労省のサイトはこちら)。

医学部入学定員増を受け、2017年度の研修医採用実績は8439人と高水準

 2004年度から新たな臨床研修医制度がスタートし、「臨床現場に立つためには、医師は2年間以上の初期臨床研修を受ける」ことが必修化されました。「私は◯◯科の医院を継ぐので、他の診療科のことは知らなくて良い。当該科の医師が対応すればよい」と行動することは許されず、将来専門とする分野に関わらず、基本的な診療能力を身につけた医師の養成を目指しています。

 新臨床研修制度は、▼研修医が研修先病院の希望を出し、公的なマッチング機構で研修先病院を決める▼基本的な診療能力を身につけるために、複数の診療科での研修を必須とする―ことなどが特徴となっています。ただし、現場の実態とマッチさせるために、新制度の見直し(都道府県別の募集定員に上限を設ける、小児科、産婦人科、精神科に重点を置いたプログラムを認めるなど)も逐次、行われています。

 臨床研修医が2017年度にどれだけ採用されたのかを見ると、8439人で、過去最高だった前年の8622人から133人減少しています。ただし、医学部定員増(地域の医師確保対策2012)の影響も受け、前々年度(2015年度)以前よりは、200人以上多い水準となっています。

都道府県別の研修医定員設定により、地方での研修医採用は58.2%に拡大

 臨床研修医の採用状況を都道府県別に見ると、大都市を抱える東京・神奈川・愛知・京都・大阪・福岡の6都府県の割合は2017年度には41.8%(前年度から0.8ポイント減)となりました。逆に、これら6都府県を除く道県の割合は過去最高の58.2%(同0.8ポイント増)となっています。新制度スタート前の2003年度には、6都府県の割合が51.3%だったので、13年間で9.5ポイント下がっています。

2017年度、都市部(東京・神奈川・愛知・京都・大阪・福岡)の初期臨床研修医採用割合は41.8%、それ以外の地方部採用割合は58.2%となった

2017年度、都市部(東京・神奈川・愛知・京都・大阪・福岡)の初期臨床研修医採用割合は41.8%、それ以外の地方部採用割合は58.2%となった

都市部(東京・神奈川・愛知・京都・大阪・福岡)の初期臨床研修医採用人数は3546人、それ以外の地方部採用人数は4943人となった

都市部(東京・神奈川・愛知・京都・大阪・福岡)の初期臨床研修医採用人数は3546人、それ以外の地方部採用人数は4943人となった

 
 この背景には前述の「都道府県別の募集定員上限」設定があります。臨床研修医が大都市に集中しているとの批判を受けて定員を設定したことによって、「地方へ分散」という流れが生まれていると言えます。将来的にも、都市部においては上限を厳し目に設定する方向で議論が進んでいます(関連記事はこちら)。

 臨床研修医の採用実績が増えた上位5県、および今年度の採用人数を見ると、(1)長崎県116人(前年度に比べて32人・39.8%増)(2)福井県62人(同13人・26.5%増)(3)徳島県63人(同12人・23.5%増)(4)島根県59人(同9人・22.9%増)(5)鳥取県50人(同9人・22.0%増)―となっています。厚労省の分析によれば、「臨床研修を受けた都道府県で、研修修了後も勤務する医師が多い」ことが分かっており(関連記事はこちらこちらこちら)、地方部で臨床研修を受ける医師の増加は、長い目で見て医師の地域偏在是正に相当の効果があると期待できます。

大学病院での研修が40.4%、臨床研修病院での研修が59.65%

 新制度の実施前(旧臨床研修制度)は、卒業した医学部の附属病院で研修を受ける医師が圧倒的多数を占め、大学病院での研修が7割超を占めていました。

 しかし、新制度では「研修医が研修先病院の希望を出せる」ため、大学病院以外の臨床研修病院で研修を受ける医師が増加しています。「大学病院で研修を受ける医師」と「臨床研修病院で研修を受ける医師」の比率は、新制度がスタートした2004年度には55.8対44.2になり、翌05年度には49.2対50.8と、臨床研修病院で研修を受ける医師のほうが多くなりました。研修医の受け入れを希望する病院が、特色ある研修プログラムを準備したり、研修医に厚い待遇を用意したりしたことが大きいようです。

 その後、11年度からは臨床研修病院で研修を受ける医師の割合がさらに増加傾向を強まり、2017年度は40.4対59.6(大学病院での研修割合が40.4%)となり、0.1%とわずかですが大学病院での研修割合が減少し、臨床研修病院での研修割合が増加しています。

大学病院と臨床研修病院とで、採用割合の差はさらに開き、大学病院40.4%、臨床研修病院59.6%となった

大学病院と臨床研修病院とで、採用割合の差はさらに開き、大学病院40.4%、臨床研修病院59.6%となった

2017年度、大学病院における初期臨床研修医の採用数は3432人、臨床研修病院は5057人となった

2017年度、大学病院における初期臨床研修医の採用数は3432人、臨床研修病院は5057人となった

 
 なお、この点について全国医学部長病院長会議では「地方大学における臨床医不足が、関連病院、つまり地域の医師不足・偏在を生んでいる」とし、初期臨床研修制度の「抜本見直し」が必要と訴えています。

 
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