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GemMed塾 看護モニタリング

かかりつけ医機能は「地域の医療機関が連携して果たす」べきもの、診療報酬による評価でもこの点を踏まえよ—中医協総会(1)

2023.6.21.(水)

かかりつけ医機能を発揮するための制度整備が整えられてきており、「診療報酬での評価」を十分に議論できる環境も整ってきた—。

かかりつけ医機能を「1人の医師」で担うことは困難であり、「地域の医療機関全体が連携し、かかりつけ医機能を果たす」ことが現実的である。診療報酬でもこうした点を踏まえる必要がある—。

オンライン診療については「質・安全性の確保」が極めて重要であり、「いわゆるオンライン初診」の実態などを丁寧に見ながら、診療報酬の在り方を議論していく必要がある—。

6月21日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こうした議論(「外来その1」論議)が行われました。2024年度診療報酬改定に向けた「総論」論議(第1ラウンド、「その1」シリーズ)が進んでいます。同日には薬価制度改革・保険医療材料制度改革のキックオフ論議や、オンライン資格確認等システムに関して患者・国民が「メリットを感じているか」などの調査結果報告も行われており、これらは別稿で報じます。

かかりつけ医機能について、診療報酬での評価を十分に議論できる環境が整ってきている

2024年度の次期診療報酬・介護報酬改定に向けた議論が進んでいます。中医協では、春から夏までの第1ラウンド論議において、▼医師働き改革医療計画医療DX —を診療報酬でどうサポートしていくかをまず確認したうえで、入院、外来、在宅、歯科、調剤、感染症対策などの総論論議に入っていくことを確認しています(関連記事はこちら)。

6月21日の中医協総会では「外来医療に関する総論」論議を行い、厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長から、(1)かかりつけ医機能の強化、外来機能の明確化・連携を推進し、患者にとって安心・安全で質の高い外来医療の提供を実現するための診療報酬の在り方(2)生活習慣病対策、外来機能の分化を推進し、効果的・効率的な医療を提供するための診療報酬の在り方(3)今後のオンライン診療の適切な評価の在り方—という3つの大きな論点が提示されました。

今後、多くの地域で人口減少・高齢化進む中では、効果的かつ効率的な医療提供体制を地域ごとに構築していくこと、つまり「機能分化」が必要不可欠となり、それは「外来」でも例外ではありません。

この点、外来医療においては▼「かかりつけ医機能を持つ医療機関」が日常的な診療や、ファーストアクセスに対応する▼そこから紹介を受け、大規模病院の専門的な外来医療を受ける—という方向が従前より示されており、医療提供体制を議論する社会保障審議会・医療部会でも、診療報酬を議論する中医協でも、この方向に沿った検討が進められてきています。

医療提供体制に関しては、「主に紹介患者への外来医療提供を担う医療機関の明確化」(例えば紹介受診重点医療機関の新設など)や「かかりつけ医機能の明確化」(かかりつけ医機能報告制度の創設などに向けた制度整備が進められてきています。

【紹介受診重点医療機関に関する記事】
近く外来機能報告に基づく「紹介受診重点医療機関の明確化」論議が始まるため、議論の進め方を整理—厚労省
紹介状持たずに受診すると「特別料金」がかかる「紹介受診重点医療機関」、制度周知のためのポスターなど公表―厚労省
2022年度外来機能報告の詳細スケジュール案を提示、紹介受診重点医療機関の明確化は2023年夏頃に—厚労省
病床機能報告の期限は2023年1月13日、外来機能報告の期限は未定!紹介受診重点医療機関の明確化にも遅れが!—厚労省
病床機能報告・外来機能報告の「報告期限」(締め切り)を延期、新たな締め切りは別途示される—厚労省
紹介中心型病院の基準値など決定、「200床以上病院全体の40%」が該当―外来機能報告等WG

【かかりつけ医機能の明確化などに関する記事】
地域ごとに「かかりつけ医機能の確保」を目指し、患者・国民が「かかりつけ医機能を持つ医療機関」の選択を支援する—社保審・医療部会(1)
「かかりつけ医機能」持つ医療機関の情報を国民に分かりやすく提示し、地域で機能充実論議を進める—社保審・医療部会(1)
「かかりつけ医機能持つ医療機関」の情報充実と、「かかりつけ医機能報告」の新設に向けた論議続く!—社保審・医療部会(1)
医療法改正し「かかりつけ医機能」持つ医療機関情報を国民に提供!地域で「かかりつけ医機能」強化の協議も—社保審・医療部会(2)

かかりつけ医機能報告など「かかりつけ医機能が発揮される」制度整備が、改正医療法の中で行われた(中医協総会(1)1 230621)



こうした状況を踏まえて(1)(2)の論点が浮上しており、例えば「かかりつけ医機能をどのように診療報酬で評価していくのか」、「現在、かかりつけ医機能を評価する診療報酬項目として【地域包括診療料】【地域包括診療加算】【特定疾患療養管理料】【生活習慣病管理料】などがあるが、これらの位置付け等をどう考えていくのか」、「機能分化をした場合には、医療機関間の連携が極めて重要になるが、その連携をどう評価していくのか」などの個別論点(詳細な議論は秋以降となる)に繋がっていきます。

この点、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「2022年度の前回改定では『かかりつけ医機能に関する医療提供体制議論』が半ばであったことから、踏み込んだ議論ができなかったが、すでに『かかりつけ医機能報告制度』創設などの方向が明確になっており、2024年度の次期改定に向けて『かかりつけ医機能の評価』論議をしっかり行っていく必要がある」との意気込みを強調しました。もっとも「かかりつけ医機能報告」が稼働にするのは2025年度以降であり、現時点では「報告制度の詳細」(省令など)が固められていません。このため「2024年度診療報酬改定でどこまで踏み込んだ議論が行われるのか」については現時点では不透明と言わざるを得ません。

かかりつけ医機能報告制度などを盛り込んだ改正医療法の概要(中医協総会(1)2 230621)



あわせて、▼かかりつけ医機能としては「時間外に対応する機能」が重要であるが、算定要件が緩やかな【時間外加算3】の算定状況が芳しくない。輪番制の場合の要件緩和(なども考慮し、しっかり「時間外対応」を行ってほしい▼他医療機関や介護サービスなどとの連携を「かかりつけ医機能評価の要件」とすることも考えられる▼改正医療法では「患者が希望した場合の書面交付」をかかりつけ医機能の1つに据えており、生活習慣病管理料の「療養計画書」交付要件とつながってくる。今後、報酬面と医療提供体制面の双方の視点で「書面交付」要件などを整理していく必要がある(例えばB000【特定疾患療養管理料】の算定要件に「療養計画書の交付」を盛り込むなど)▼かかりつけ医機能を評価する【地域包括診療料】【地域包括診療加算】【特定疾患療養管理料】【生活習慣病管理料】などの整理を体系的に行っていく必要がある—といった具体的な見解も示しています。

時間外対応加算3の算定は芳しくない(中医協総会(1)3 230621)

かかりつけ医機能はさまざまな診療報酬で評価されている(中医協総会(1)4 230621)



一方、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「医科歯科連携が糖尿病治療に効果的であるとのエビデンスが示されており、こうしたエビデンスに基づく『かかりつけ医機能評価』を検討していく必要がある」と要請。

また、同じく診療側の池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)は「かかりつけ機能には、さまざまな要素があり、クリニックの医師1人で担うことは不可能だ。中小病院、在宅療養支援病院などとクリニックが連携し、地域全体で『かかりつけ医機能』を総合的に提供することが現実的であろう。そうした地域医療連携を診療報酬で評価することを考えていく必要がある」と提案。診療側の島弘志委員(日本病院会副会長)も「コロナ禍・コロナ5類移行後に、外来受診患者は減っており、『以前の外来受診は真に必要なものであったのか』との疑問もわく」とコメントしたうえで、「地域ごとに、各医療機関の機能を明示し、連携し、地域単位で患者を診ていくことが重要である」と同旨の考えを強調しています。今般の新設される「かかりつけ医機能報告」にもマッチする考え方と言えます。

こうした「地域連携」を進める際に鍵となるのが、「ICT、とりわけオンライン資格確認等システムを基盤とするネットワークを活用した医療等の情報連携」です。眞鍋医療課長も、(1)の論点において「今後の医療DXの推進も踏まえて、機能分化・連携を進めていく」ことの重要性を強調しています。ただし、長島委員は「医療DXは始まったばかりである。今の『過渡期』を評価する診療報酬を考えるべき」とコメントしています。

なお、オンライン資格確認等システムを活用した「情報連携」を評価する【医療情報・システム基盤整備体制充実加算】について、国民がそのメリットを実感しているか否かに関する調査結果が報告されています。詳細は別稿で報じますが、「一定のメリットを感じている」と見る診療側委員と、「メリットを感じている国民はごく一部に過ぎない」と見る支払側委員とで、見解に大きな相違があるようです。

オンライン診療を「適切な形」で推進するために、診療報酬でどう評価すべきか

また(3)は、「オンライン診療」(情報通信機器を活用した診療)については、▼オンライン診療を行うに当たり遵守しなけれならない「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の改正(不適切なオンライン診療の是正策強化など)▼オンライン診療に関する国民・患者の意識(多くは対面診療を希望しているが、オンライン診療のメリットも感じている)▼オンライン診療を推進するための基本方針作成—などの環境変化を踏まえて、今後、その評価(診療報酬)の在り方をどう考えていくべきかという論点です。

2022年度の前回改定では「いわゆるオンライン初診の解禁」を踏まえた大きな見直しが行われましたが、2024年度改定でどういった点が重視されるのか、注目を集めています。

この点、診療側の長島委員は「オンライン診療においては、質と安全性の確保が極めて重要な視点である。オンライン初診・事前相談などの実態をしっかりと見ていく必要がある。また、不適切なオンライン診療が散見され、オンライン診療指針に『学会ガイドラインの遵守』などの事項を盛り込んだが、こうした点への取り組み状況なども丁寧に見ていく必要がある」と要望。また同じく診療側の池端委員や島委員は「医療の基本は対面診療であり、オンライン診療は患者の選択の幅を広げるもで、対面診療と上手に組み合わせ、質・安全性を十分に確保する必要がある」旨を説いています。

これに対し支払側の松本委員は「患者・国民にはオンライン診療のメリット(感染リスク低減、リラックスした状態での受診、待ち時間の短縮)も感じており、メリット・デメリットをしっかり踏まえてオンライン診療を活用する必要がある。いわゆるD to P with Dを評価する【遠隔連携診療料】の活用が遅れいている。課題を整理し対応を検討する必要がある」との考えを示しました。

【遠隔連携診療料】は、難病などの患者がかかりつけの医師との対面診療を受けながら、遠方の専門医とオンライン診療を受けることを評価するものです(2020年度改定で新設され、22年度に拡充)。かかりつけ医との対面診療で「オンライン診療のデメリットである情報収集の困難さなどを克服」できるとともに、遠方の専門医の診療を「身近に受けられる」という大きなメリットがあることから、医師の地域偏在解消にもつながると期待されています。

しかし、算定回数を見ると、2022年6月審査分でも「わずか4回」にとどまっており、「ほとんど活用されていない」のが実際です。オンライン診療のデメリットを克服しながら、メリットを受けられる優れた仕組みの普及に向けた検討が求められますが、厚労省では「1人の患者に2人の医師が同時間に対応することになる。遠方の専門医は多忙であり、予約診療の中でも対応が困難なのではないか」と推察しています。

遠隔連携診療料の活用は芳しくない(中医協総会(1)5 230621)



ところで、オンライン診療のメリットの1つとして、患者・国民からは「気軽に受診できる」という声が出ています。例えば「精神疾患などで、医療機関を受診しにくい、医療機関にはいるところを他人に見られたくない」などの点を考慮すれば気軽に受診できる」点は確かにメリットの1つと言えるでしょう。

しかし、「安易な受診」を助長しているとすれば、それは医療保険財政の健全化という面から非常に大きな問題となります。松本委員もこの点を危惧していますが、当初から心配された事項でもあり、仮に「オンライン診療が、医療機関にかかるまでもない軽微な症状の患者の医療機関受診を促進してしまっている」ことが明らかになった場合(例えば軽微な頭痛などがある場合に、「薬局で市販薬を購入するよりも、3割負担で医療用医薬品が手に入るので、オンライン診療を受けよう」などという受療行動変化が認められる場合など)には、「オンライン診療の推進」を強調してきた支払側としてどういった対応をとるのか注目されます。

かかりつけ医機能やオンライン診療などについては、秋以降に、より具体的な第2ラウンド論議が行われます。上記の意見は、その際の論点などに反映されていきます。



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