全国の医療機関等情報を掲載する「ナビイ」、かかりつけ医機能情報や障害患者サービス情報なども搭載—医療機能情報提供制度等分科会(2)
2024.8.23.(金)
全国の医療機関等情報を掲載する「ナビイ」に、今後、「かかりつけ医機能に関する情報」や「障害を持つ患者へのサービスに関する情報」なども搭載していく—。
医療機能情報提供制度への報告状況を見ると、都道府県によるバラつきが大きく、「100%の報告」を目指した取り組みを強化する必要がある—。
8月22日に開催された「医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」(以下、分科会)では、このような「医療機能情報提供制度の報告項目の見直し」方向も固められました(同日の不適切広告に対する指導等手順書のひな型に関する記事はこちら)。
医療機関等の医療機能情報提供制度への報告、都道府県により大きなバラつき
医療機能情報提供制度は、国民が医療機関を適切に選択できることを目指し、医療機関等(▼病院▼診療所▼歯科診療所▼助産所―)に対し、自院の持つ機能を毎年度、都道府県に報告することを義務付けるものです(2007年度からスタート)。
従前、都道府県単位で運用されていましたが、例えば県境の居住者が利用しにくい」などの問題点があることから、この4月1日(2024年4月1日)から全国統一システム(愛称:医療情報ネット『ナビイ』)としてリニューアルスタートしています。
●「ナビイ」サイトはこちら
8月22日の分科会では、「ナビイ」について次の2点の見直しを行うことを正式決定しています。
(1)「かかりつけ医機能」報告制度の施行(来年(2025年)4月)を踏まえた見直し
(2)「障害のある方に対するかかりつけ医機能」情報の搭載
まず(1)については、「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」において、次の事項を毎年度、医療機関が都道府県知事に報告することの義務付けが決定されたことを受けたものです。下記のうち「1号機能・2号機能の報告で『当該機能有り』と現時点でならない場合は、今後担う意向の有無」以外の項目は、すべて「ナビイ」の情報提供項目に位置付けられる(つまり「ナビイ」に搭載される)ことがすでに決まっています。
8月22日の分科会ではこの旨が報告され、構成員から「ユーザー(一般国民、患者)の視点に立って、情報の並べ方などを工夫してほしい」(山口育子構成員:ささえあい医療人権センターCOML理事長)、「一般国民にはなじみの薄い医療用語も多い。用語解説や平易な言葉への書き換えなどの工夫を検討してほしい」(小林司構成員:日本労働組合総連合会生活福祉局長、幸野庄司構成員:健康保険組合連合会参与)、「紹介受診重点医療機関や地域医療支援病院については、『紹介を受けてから受診すべき医療機関である』旨が分かるような工夫をすべき」(幸野構成員)などの注文・要望が出されています。今後、こうした意見も参考にしながら「ナビイ」の改修などが検討・実施されます(本年度(2024年度)中に見直し仕様を厚労省で固め、2025年度から改修。各医療機関は2026年1月から報告をスタートし、順次、国民が閲覧できるようになっていく)。
●かかりつけ医機能報告制度における報告項目
【1号機能】(継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療、その他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能)
(1)「具体的な機能」を有すること、および「報告事項」について院内掲示により公表していること
(2)かかりつけ医機能に関する研修修了者の有無、総合診療専門医の有無(有無を報告すれば可、5年後を目途に改めて検討)
(3)17診療領域ごとの「1次診療」の対応可能の有無、いずれかの診療領域について1次診療を行うことができること(一次診療を行うことができる疾患も報告する)、医療に関する患者からの相談に応じることができること(5年後を目途に改めて検討)
→17診療領域:皮膚・形成外科領域、神経・脳血管領域、精神科・神経科領域、眼領域、耳鼻咽喉領域、呼吸器領域、消化器系領域、肝・胆道・膵臓領域、循環器系領域、腎・泌尿器系領域、産科領域、婦人科領域、乳腺領域、内分泌・代謝・栄養領域、血液・免疫系領域、筋・骨格系及び外傷領域、小児領域、
→報告できる疾患例(下表)
<上記以外の報告事項>
▽医師数、外来の看護師数、専門看護師・認定看護師・特定行為研修修了看護師数
▽かかりつけ医機能に関する研修の修了者数、総合診療専門医数
▽全国医療情報プラットフォームに参加・活用する体制の有無
▽全国医療情報プラットフォームの参加・活用状況、服薬の一元管理の実施状況
【2号機能】
○通常の診療時間外の診療
(1)自院または連携による通常の診療時間外の診療体制の確保状況(在宅当番医制・休日夜間急患センター等に参加、自院の連絡先を渡して随時対応、自院での一定の対応に加えて他医療機関と連携して随時対応等)、連携して確保する場合は連携医療機関の名称
(2)自院における時間外対応加算1-4の届出状況、時間外加算、深夜加算、休日加算の算定状況
○入退院時の支援
(1)自院または連携による後方支援病床の確保状況、連携して確保する場合は連携医療機関の名称
(2)自院における入院時の情報共有の診療報酬項目の算定状況
(3)自院における地域の退院ルールや地域連携クリティカルパスへの参加状況
(4)自院における退院時の情報共有・共同指導の診療報酬項目の算定状況
(5)特定機能病院・地域医療支援病院・紹介受診重点医療機関から紹介状により紹介を受けた外来患者数
○在宅医療の提供
(1)自院または連携による在宅医療を提供する体制の確保状況(自院で日中のみ、自院で24時間対応、自院での一定の対応に加えて連携して24時間対応等)、連携して確保する場合は連携医療機関の名称
(2)自院における訪問診療・往診・訪問看護の診療報酬項目の算定状況
(3)自院における訪問看護指示料の算定状況
(4)自院における在宅看取りの実施状況
○介護サービス等と連携した医療提供
(1)介護サービス等の事業者と連携して医療を提供する体制の確保状況(主治医意見書の作成、地域ケア会議・サービス担当者会議等への参加、ケアマネと相談機会設定等)
(2)ケアマネへの情報共有・指導の診療報酬項目の算定状況
(3)介護保険施設等における医療の提供状況(協力医療機関となっている施設の名称)
(4)地域の医療介護情報共有システムの参加・活用状況
(4)ACPの実施状況
【その他の報告事項】
▽健診、予防接種、地域活動(学校医、産業医、警察業務等)、学生・研修医・リカレント教育等の教育活動等
▽1号機能・2号機能の報告で「当該機能有り」と現時点でならない場合は、今後担う意向の有無(この項目についてのみ、「ナビイ」に掲載されない)
また、(2)については障害者団体とのヒアリングを通じて「障碍者が医療機関を選択・受診するにあたり、こうした情報が事前に分かるとよい」と寄せられた声をもとに、例えば次のような内容を「ナビイ」に掲載する方針が固められました。
▽障害者向け駐車場があるか、何台駐車できるか
▽電話による診療予約の可否と予約用電話番号
▽メールによる診療予約の可否と予約用メールアドレス
▽入院中の家族・介助者の宿泊環境の有無
▽入院中の家族・介助者の付き添い・同行の可否
▽「手話」に限らず、どのような形で障害を持つ患者と意思疎通が可能であるか
▽視覚障害者への配慮(施設内案内等の音声案内対応)の有無
▽障害のある方の外来受診時・待ち時間における介助の取組内容(身体障害補助犬・介助者の付添い、車内待機、院内個室待機等の可否、診察や窓口への振動式呼出し、施設内放送の文字化等)
▽障害者・家族向けの相談窓口の有無
▽職員に対し、障害者への合理的配慮や障害特性に関する研修を実施しているかどうか
▽施設・敷地のバリアフリー対応状況に関するホームページへの写真掲載の有無
▽車椅子・杖等利用者への配慮がなされたバリアフリートイレの設置状況
▽脊髄損傷の治療が実施可能かどうか
▽医療的ケア児等への定期的訪問診療が実施可能かどうか
▽精神科領域の在宅患者訪問診療を行っているかどうか
▽障害福祉サービス事業者と連携しているかどうか
なお、医療機関による自由記載欄も設けられ、厚労省は「例えば診療予約の時点で、障害者専用駐車場の予約もできるか否かなどを記載できる」旨を記載要領として示し、より詳しい情報掲載も可能であることを明らかにする予定です。
ところで、すべての医療機関等には「医療機能情報提供制度に自院の状況を報告する」義務が課されていますが、2023年度の報告状況を見ると、全国平均では73.5%にとどまり、秋田県や徳島県、佐賀県、熊本県は100%(すべての医療機関等が報告している)ものの、沖縄県(27.3%)や京都府(29.3)などでは著しく低い状況が明らかにされました(石川県では「能登地震」の影響により、やむを得ず報告が遅れていると考えられる)。
構成員からは「遺憾である」旨の声が多数出ており、各都道府県における「報告の督促」、各医療機関による適切な報告実施などが待たれます。
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