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高齢の大腸がん患者、3剤併用療法(FU+OX+BEV)でなく「2剤併用療法(FU+BEV)」を推奨—国がん他

2024.10.4.(金)

切除不能大腸がんの初回治療では「3剤併用療法(FU+OX+BEV)」が標準治療の1つとされているが、高齢者へ「3剤併用療法(FU+OX+BEV)」を行っても「2剤併用療法(FU+BEV)」より優れた効果が認められるわけでなく、かえって副作用の頻度が高まることが分かった。高齢の大腸がん患者では、「2剤併用療法(FU+BEV)」が推奨される—。

国立がん研究センター・埼玉医科大学国際医療センター・日本臨床腫瘍研究グループが先頃、こうした共同研究結果を公表しました(国がんのサイトはこちら)。

高齢者を対象にした臨床試験で、「3剤併用療法(FU+OX+BEV)」の有効性・安全性検証

大腸がんの罹患者・死者は年々増加しており、2023年の「人口動態統計月報年計(概数)」を見ると、男女ともに「もっとも死者数の多いがん種」なっています(関連記事はこちら)。

切除不能な大腸がんに対する初回治療は「フッ化ピリミジン(FU)+ベバシズマブ(BEV)+オキサリプラチン(OX)の3剤併用療法(FU+OX+BEV)」が標準治療の1つとして確立されていますが、高齢者への安全性・有効性は必ずしも十分に検証されていませんでした(臨床試験の多くが75歳以下を対象としており、年齢制限がない場合でも、高齢者は臓器機能障害や併存症により参加条件を満たさないケースが多い)。

一方、大腸がん患者の半数近くは「75歳以上の高齢者」です。また高齢者では▼臓器機能障害や併存症を有していることが多く、副作用が生じやすい▼重症化リスクもある—ため、「標準治療である3剤併用療法(FU+OX+BEV)」が高齢者にとって有効なのか、副作用などはなしのかを確認する必要があります。

そこで今般、国がん・埼玉医大国際医療センター・臨床腫瘍研究グループの共同研究チームは、3剤併用療法(FU+OX+BEV)の有効性・安全性(副作用の状況)を検証する研究を実施。

具体的には、「70歳以上(脆弱な70-74歳、75歳以上)で、治療歴のない切除不能大腸がん患者」(251名)を次の2つのグループにランダムに振り分け、それぞれの▼無増悪生存期間(研究試験の登録日から疾患が悪化せずに患者が生存している期間、主要評価項目)▼全生存期間(研究試験の登録日から患者が生存している期間)▼奏効割合(治療効果が得られて一定以上腫瘍が縮小した患者の割合)▼有害事象発生割合▼重篤な有害事象発生割合▼QOL(生活の質)—を比較しました。

【A群】2剤併用療法(FU+BEV):125名

【B群】3剤併用療法(FU+OX+BEV):126名



その結果、次のような状況が明らかになりました。

【主要評価項目】
●無増悪生存期間

・A群の中央値:9.4か月
・B群の中央値:10.0か月
→B群に対するA群のハザード比(死亡あるいは増悪のリスクが何倍かを示す数値、数字が小さいほどAよりもBのほうが優れていると判断できる)は0.84で、研究チームでは「B群の優越性は示せない」と判断

無増悪生存期間比較



【副次評価項目】
●全生存期間

・A群の中央値:21.3か月
・B群の中央値:19.7か月
→B群に対するA群のハザード比は1.05で、研究チームでは「B群の優越性は示せない」と判断

全生存期間比較



●奏効割合
・A群:29.5%(好中球減少15%、高血圧15%、死亡1名など)
・B群:47.7%(好中球減少24%、高血圧20%、末梢神経障害11%、死亡3名など)
→「B群のほうが腫瘍縮小効果は高い」と研究チームは判断



●重篤な有害事象発生割合
・A群:52%(好中球減少15%、高血圧15%、死亡1名など)
・B群:69%(好中球減少24%、高血圧20%、末梢神経障害11%、死亡3名など)
→B群のほうが副作用発生頻度が高い

副作用比較



●QOL
・研究チームは「A群・B群で明確な差はない」と判断

QOL比較



高齢者の参加が少ない既報の臨床試験では「2剤併用療法(FU+BEV)よりも3剤併用療法(FU+BEV+OX)のほうが効果が高い」とされていますが、今般の、高齢者のみを対象とした試験では「3剤併用療法の効果」は示せず、かえって「副作用が強くなる」ことが示唆されました。

こうした点を踏まえて研究チームでは、「高齢の切除不能大腸がん患者への初回抗がん剤治療の標準治療は『FU+BEVの2剤併用療法』が推奨される」とコメント。

あわせて、我が国の診療ガイドラインでは「全身状態や主要臓器機能、併存疾患などのため、3剤併用療法に対する忍容性に問題があると判断される患者への初回抗がん剤治療の標準治療の1つとして『FU+BEVの2剤併用療法』が推奨されている」ことを紹介し、「高齢の患者」は「3剤併用療法に対する忍容性に問題があると判断される患者」に含まれると結論づけています。



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