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大腸がん検診ガイドライン2024年度版、引き続き【便潜血検査免疫法】を対策型検診(住民健診)として実施することを推奨—国がん

2024.12.10.(火)

大腸がんの対策型検診として引き続き【便潜血検査免疫法】を推奨する(推奨グレードA)—。

【全大腸内視鏡】は「死亡率減少効果を示す」ものの、証拠の信頼性は低く対策型検診では推奨されない(推奨グレードC)。また任意健診(人間ドックなど)で行う場合には、利益と不利益に関する適切な情報を医療者が説明し、「検診対象者の判断(全大腸内視鏡検査を行うか否か)を支援する」必要がある—。

国立がん研究センターが11月27日に「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版」を公表しました(国がんのサイトはこちら)。

●「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版」はこちら)。

便潜血検査免疫法による検診の対象は原則「40歳-74歳」

大腸がんの罹患者・死者は年々増加しており、2023年の「人口動態統計月報年計(概数)」を見ると、男女ともに「もっとも死者数の多いがん種」なっています(関連記事はこちら)。

対策として「適切な検診による早期発見→早期治療」が重要です。しかし「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」は「2005年版」が最新であり、これまでに報告された大腸がん検診に関する新たな研究成果を盛り込んだ「2024年度版」が作成されました。

2024年度版では、次のように便潜血検査免疫法の推奨グレードをA、全大腸内視鏡検査の推奨グレードをCとしています。

【便潜血検査免疫法】(推奨グレードA)
▽がん検診の利益となる死亡率減少効果について、【便潜血検査免疫法】は、「免疫法の前に実施されていた便潜血検査化学法」(無作為化比較対照試験(RCT)で死亡率減少効果が証明されているが、免疫法よりも感度が低い)と同等以上の死亡率減少効果が期待できることがデータから明らかになった

▽【便潜血検査免疫法】について、対策型検診(集団全体の死亡率減少を目的として実施するもの、市区町村が行う住民検診が該当する)・任意型検診(対策型検診以外の検診、たとえば医療機関や検診機関が行う人間ドックなど)としての実施が勧められる

便潜血検査免疫法について



【全大腸内視鏡検査】(推奨グレードC)
▽がん検診の利益となる死亡率減少効果について、全大腸内視鏡の観察研究では大腸がん死亡率減少効果が示されている
▽しかし、検査目的が診療(有症状者などハイリスク者)なのか検診(平均リスク者)なのか明確に区別されていないという特徴があり、証拠の信頼性は低い
▽追加で実施した代替指標評価でも、参照基準としたS状結腸鏡検査の検出率を上回ることができなかった
→大腸内視鏡検査の受診率が他の検査よりも低いことが効果を検出しにくい理由と考えられる

▽「1万人を対象に大腸がん検診行った」と仮定した場合の大腸がん検出数は、▼便潜血検査免疫法:14名▼S状結腸鏡検査:16名▼全大腸内視鏡検査:11名—であった
▽がん検診の不利益として各検査法のNNS(Number Needed to Scope、便潜血検査免疫法による陽性者数を精密検査(全大腸内視鏡)で実際に大腸がんが発見された発見数で割った値、大腸がん1例を発見するために必要な精密検査数で、数値が大きいほど「不必要な精密検査数が多い」ことを意味する)は、▼便潜血検査免疫法:20▼S状結腸鏡検査:17▼全大腸内視鏡検査:200—であった

▽これらを総合すると、全大腸内視鏡は「死亡率減少効果を示す」ものの、証拠の信頼性は低く対策型検診では推奨されない
▽任意型検診においては、利益と不利益に関する適切な情報を医療者と検診対象者が共有し、医療者が「検診対象者の判断(全大腸内視鏡検査を行うか否か)を支援する」必要がある

全大腸内視鏡検査について



また、2005年版からの主な変更点としては次のような項目があげられています。
▽便潜血検査免疫法の感度と特異度の明示
→大腸がんを検出する感度(大腸がん患者が便潜血検査免疫法を受けて陽性となる確率)は84%、特異度(大腸がんでない人が免疫法を受けて陰性となる確率)は92%であった
→2005年版当時の便潜血検査免疫法の感度55.6-92.9%(国内)、30-87%(国外)に比べて、現在国内外で使用されている便潜血検査免疫法の感度が大幅に向上している

▽便潜血検査免疫法による大腸がん検診の対象年齢、検診間隔、採便回数の明示
▼検診対象:「40-74歳」が推奨されるが、▼45歳開始▼50歳開始も許容される
→40歳以上を対象に大腸がん検診が実施されているにもかかわらず、40・50代の大腸がん罹患率が国際的に高いレベルにあることを重視して決定した
→ただし、若年者ほど健診の不利益であるNNSが大きく、他国では「50歳開始」が多いことから、45歳開始・50歳開始も許容される
→終了年齢に関しては、対策型検診では様々なレベルの身体機能を持つ高齢者が受診するため、精密検査や治療に伴う偶発症や合併症を考慮して「74歳」が妥当と判断した

▼検診間隔:「1年」から「2年」にすることも可能

▼採便回数:「1回法」「2回法」のいずれも可能



国がんでは、▼大腸がんの対策型検診として引き続き便潜血検査免疫法を推奨するが、カットオフ値(陽性と判定する便中ヒトヘモグロビン値)の設定や郵送法などが今後の検討課題である▼全大腸内視鏡に対する今回の評価はあくまで「健常者を対象としたスクリーニング検査」としての評価であり、便潜血検査陽性者への精密検査や内視鏡治療における重要性は揺るがず、「全大腸内視鏡による検診の死亡率減少効果を調べる無作為化比較対照試験」結果後に再評価を行う—とコメントしています。



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