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非喫煙者に多く発生する「EGFR変異陽性の肺がん」は、「遺伝子の個人差の積み重ね」が危険因子となる—国がん他

2024.12.25.(水)

肺がんの多くを占める「肺腺がん」の半数弱は「非喫煙者」に発生し、その多くはEGFR遺伝子変異が発生要因となっている—。

東アジアの非喫煙者女性の肺腺がん患者を対象にした研究では、「EGFR変異陽性の肺腺がん」では、「EGFR変異を持たない肺腺がん」に比べて「より強く遺伝子多型の影響を受けて発症する」ことが明らかになった—。

国立がん研究センター・愛知県がんセンター・東京大学医科学研究所・滋賀医科大学・東京科学大学・日本赤十字社医療センター・神奈川県立がんセンター・秋田大学・信州大学・群馬大学の共同研究チームが12月23日に、こうした研究結果を発表しました(国がんのサイトはこちら)。「煙草を吸わない者」の肺がん予防・早期発見に役立つと期待されます。

「煙草を吸わない者」の肺がん予防・早期発見に役立つと期待される

肺がんは日本では年間12万人が罹患し、がんにおいて最も死亡率が高いことが知られています(2023年には男女計で7万6000名弱が肺がんで死亡している)。

肺がんの中でも「肺腺がん」が最も多く、その半数弱は「非」喫煙者に発生します。このため「禁煙以外の予防法」「早期発見の方法」が強く求められています。

さらに、日本を含めたアジアでは「EGFR」という遺伝子の変異を原因として発生する肺腺がんが非喫煙者に多く、そのメカニズム解明にも期待が集まっています。

日本人と欧米人とで、肺腺がんでのEGFR遺伝子変異には相当の違いがある



ところで、先行研究では「EGFR変異を持つ肺腺がん」への罹りやすさにはHLAクラスII遺伝子やテロメア制御遺伝子などの個人差(遺伝子多型)が危険因子であることが明らかにされており、今回、▼「遺伝子多型の積み重ねによる危険度」の数値化▼遺伝子多型の肺がんリスクへの影響—に関する調査を行いました。

まず、東アジア(▼日本▼台湾▼中国▼香港▼シンガポール▼韓国—)における「非喫煙者の肺腺がん患者」(998名)と「肺がんに罹患していない非喫煙者女性」(4544名)について、全ゲノムにわたる遺伝子多型を明らかにし、「遺伝子多型の積み重ねによる危険度」を表すポリジェニックリスクスコアを算出。さらにその際、「EGFR変異を持つ肺腺がん」と「EGFR変異を持たない肺腺がん」との差も比較しています。

次いで、「遺伝子多型の積み重ねによる危険度」に基づいて集団を4等分し、「最も危険度の低い、下位25%のグループ」(Q1)の危険度を1としたとき、他の3グループの危険度が何倍となるかを算出しました。

その結果、「最も危険度の高い、上位25%のグループ」(Q4)の、EGFR変異陽性の肺腺がんへの罹りやすさは、「最も危険度の低い、下位25%のグループ」(Q1)に比べて8.6倍も高いことが分かりました。一方、EGFR変異を持たない肺腺がんへの罹りやすさは3.5倍にとどまりました。

遺伝子多型の組み合わせに基づく4グループ別の肺腺がん発症危険度



ここから、「EGFR変異陽性の肺腺がん」では、「EGFR変異を持たない肺腺がん」に比べて「より強く遺伝子多型の影響を受けて発症する」ことが明らかになったと言えます。

共同研究グループでは、今後「日本人としての危険度の算出」も行っていく予定です。

こうした研究結果は、「遺伝子情報をもとに『EGFR変異陽性の肺がんに罹りやすい人』(高危険群)を予測し、検診により早期発見する」仕組み、「煙草を吸わない者の肺がん予防・早期発見」などにつながっていくと期待されます。



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