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健保組合財政は2018年度に好転したが、医療保険の「給付と負担の見直し」早急に進めよ―健保連

2019.9.11.(水)

 昨年度(2018年度)には健康保険組合全体で3048億円の黒字決算で、黒字幅は前年度から1697億円増加した。協会けんぽの平均保険料率(10%)以上の料率を設定しなければならない組合は全体の22.4%、支出の過半が高齢者への支援金などとなっている組合は全体の28.5%で、前年度より好転している。しかし、団塊の世代が後期高齢者となりはじめる2022年度に向けて、「給付と負担の見直し」を早急に進める必要がある—。

 こうした状況が、9月9日に健康保険組合連合会(健保連)が発表した2018年度の「健保組合決算見込の概要」から明らかになりました(健保連のサイトはこちら(概要版)こちら(ポイント))(2017年度決算に関する記事はこちら、2016年度決算に関する記事はこちら)。

支出増を収入増が上回り、健保組合全体で3048億円の黒字

 健康保険組合(健保組合)は、主に大企業の従業員とその家族が加入する公的医療保険です。健保組合の連合組織である健保連では、2018年度末における1391組合の決算データを集計・分析しました。

 2018年度の経常収入は8兆3906億円(前年度比1903億円・2.32%増)、経常支出は8兆859億円(同207億円・0.26%増)となり、健保組合全体で3048億円の黒字決算となりました。5年連続の黒字決算となり、支出増に比べて収入増(被保険者数の増加や保険料率の引き上げなど)のほうが大きくなる見込みで、黒字額は前年度に比べて1697億円増加しています。

 
収入のうち最も大きな「保険料」について、少し詳しく見てみましょう。2018年度の保険料収入総額は8兆2730億円で、前年度から1884億円・2.33%増加しています。保険料収入増加の要因は、▼被保険者数の増加(増加の59.5%)▼報酬月額(加入者の給与)の増加(同18.3%)▼賞与額の増加(同13.6%)▼保険料率の引き上げ(同8.6%)―などです。

 今年(2019年)2月末時点の平均保険料率は9.210%(調整保険料率含む)で、前年度に比べて0.043ポイントの上昇となりました。保険料率を引き上げた組合は169で全体の12.1%、平均引き上げ料率は0.612ポイントとなっています。

また、2年連続で保険料率を引き上げたのは36組合(前年度に比べて8組合減)で、うち12組合は引き上げにも関わらず2年連続の赤字となっています(同6組合減)。給付費(つまり加入者の医療費)や拠出金(言わば高齢者の医療費)の伸びに、料率引き上げが追い付いていない状況です。なお112 組合(全体の8.1%)では保険料率を引き下げ(平均0.347ポイント)ています。

 
ところで、主に中小企業の従業員・家族が加入する「協会けんぽ」の平均保険料率(10.0%)以上の保険料率を設定している健保組合は、前年度に比べて2組合減少し、312組合(全体の22.4%)となりました。協会けんぽ以上の保険料率を負担しなければならないとなれば、事業主にとって「健保組合に加入するメリットがない」ことから、▼健保組合からの脱退→▼事業所数の減少等に伴う、健保組合の解散→▼協会けんぽへの加入者の増加→▼国費(協会けんぽには多額の国費が投入されている)の増加→▼医療保険改革(患者負担増、保険料の引き上げ、給付の縮小など)への圧力の高まり―という悪循環に陥ることに留意が必要です。

 
2018年4月以降は、6の健保組合が解散し(前年度に比べ6組合減)、うち5組合では保険料率が10%以上でした。
 

2018年度のマイナス改定で、給付費増の度合いは小さく

 次に、支出に目を移してみましょう。

健保組合の支出で最大の項目は、もちろん「給付費」(法定給付費、患者の窓口負担(年齢に応じて2-3割、高額療養費あり)を除く分)で、2018年度は3兆9955億円、前年度に比べて738億円・1.88%の増加となりました。2018年度にはネット(診療報酬本体と薬価、材料価格の合計)でマイナス1.19%の診療報酬改定があったため、支出の伸び率は前年度に比べて0.15ポイント低下しています。

次に大きな支出項目は、高齢者医療を支えるための「拠出金」で、前年度に比べて728億円・2.06%減の3兆4537億円となりました。健保連では「2015年度から退職被保険者の新規適用がなくなり対象者数が急減したことなどから退職者給付拠出金が前年度に比べて78.89%と大幅減少したが、この影響は今後縮小していく。退職者給付拠出金を除いた後期高齢者支援金・前期高齢者納付金は、前年度に比べて0.2%の増加となっている」点を指摘しています。

 

介護納付金の総報酬割、2018年度は2分の1導入

後期高齢者医療制度、もっぱら収入が少ない(主に年金収入のみ)一方で、医療費の嵩む(現役世代の4倍程度)後期高齢者(75歳以上)が加入することから、安定運営のために現役世代(若人)からの財政支援が行われます(後期高齢者支援金)。この支援金は、被用者保険(健保組合や協会けんぽなど)に関して、従前は「各医療保険の加入者数に応じる」(加入者割)が採用されていました。しかし、より公平な負担を目指すために、加入者数に加えて「負担能力、つまり給与・賞与の水準」をも勘案した方式(総報酬割)が段階的に導入され、2017年度から「全面総報酬割」となっています。端的に言えば「給与・賞与の高い人が、より多くの支援金を負担する」という仕組みです。

協会けんぽに比べて、健保組合のほうが給与・賞与水準が高い傾向にあるため、健保組合の後期高齢者支援金負担は増大しています。

また、介護保険制度においても、後期高齢者支援金と同様に、「介護納付金(65歳以上高齢者の介護給付を若人が支えする支援金)の計算方法について、段階的に総報酬割を導入していく」こととなっています。2018年度からは「2分の1総報酬割」、今年度(2019年度)から「4分の3総報酬割」、来年度(2020年度)から「全面総報酬割」となり、健保組合の介護納付金負担が2020年度にかけて増加していきます。

  

28.5%の健保組合で、支出の半分以上が高齢者への支援等に使われる

こうした影響から、拠出金や支援金などが義務的経費(法定給付費と高齢者医療への拠出金)に占める割合は46.36%で、前年度から0.99ポイント低下しています。

この割合を健保組合ごとに見てみると、▼40%未満が190組合・13.7%(前年度に比べて1.8ポイント増加)▼40%以上50%未満:804組合・57.8%(同4.9ポイント増加)▼50%以上60%未満:385組合・27.7%(同5.9ポイント減)▼60%以上70%未満:12組合・0.9%(0.7ポイント減少)—となりました。

拠出金負担は、前年度に比べて低下してはいるものの、「3割近く(28.5%)の健保組合で、支出の半分以上が自組合の加入者のためでなく、高齢者のための支出となっている」状況は、加入者の理解・納得という点で問題のある状況と考えるべきでしょう。


 
 
 後期高齢者医療制度が創設される直前の2007年度と2018年度を比べると、「支出の半分超が高齢者のための支援金等」となっている健保組合の割合は6.5%から28.5%に増加(プラス22ポイント)しています。医療保険制度は「社会連帯」という崇高な理念に基づくもので、負担能力のある若人が負担能力の小さな高齢者を支える構造は、もちろん「当然」のことではあります。若人もいずれ高齢者になり、その際には「その時代の若人」に支えてもらう必要があるのです。

ただし、「収入の過半を加入者以外の医療費に充てなければならない」事態があまりに長期間続けば、「社会連帯」という医療保険制度の基盤が崩れていく可能性は小さくありません。国民皆保険制度を維持するためにも、「負担感の公平性」(若人並み、あるいはそれ以上の負担能力を持つ高齢者に応分の負担を求めるなど)をより担保する仕組みの必要性は変わっていません。

 
 こうした厳しい状況について健保連は、「現役世代の負担は限界に達しており、将来にわたり、国民皆保険を維持するため、早急に高齢者医療費の負担構造改革等に取り組むべき」と強調。▼75歳以上の後期高齢者における窓口負担を2割に引き上げる▼市販品類似薬について保険給付の在り方を見直す―ことを早急に行うよう求める提言を行っています(関連記事はこちら)。

 
 
 

 

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