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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

「聴力が低下し、孤独感を感じる高齢者」は要介護状態に陥るリスクが1.7倍に高まる—長寿医療研究センター

2023.4.14.(金)

「聴力低下のない高齢者」では、「孤独感」と「要介護状態の新規発生」との間に有意な関連は認められないが、「聴力低下のある高齢は」では、「孤独感」を有する場合、そうでない場合に比べて約1.7倍も要介護状態の新規発生が多い—。

「男性」「教育年数が少ない」「現在、仕事をしていない」「1人暮らし」「運動習慣がない」「難聴の重症度が高い」「うつ傾向」といった特徴のある人が、孤独を感じやすい—。

国立長寿医療研究センターは4月10日に、こうした研究結果を公表しました(センターのサイトはこちら)。地域の介護予防対策において「高齢者の聴力低下」にも十分に配慮し、工夫を行うことが強く求められます。

男性・仕事をしていない・1人暮らし・運動習慣がない」などの場合、孤独を感じやすい

昨年度2022年度から、我が国人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。高齢化の進展は「要介護者、要支援者の増加」につながるため、「介護予防」などが非常に重要となります。

この点、「社会的孤立や孤独が身体的・精神的疾患等の健康問題、要介護状態と強く関連する」ことが明らかになってきています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

そうした中で長寿医療研究センターは「加齢に伴う『聴力低下』が、孤独感や要介護状態の新規発生に与える影響」に着目。大規模コホート研究(National Center for Geriatrics and Gerontology–Study of Geriatric Syndromes:NCGG-SGS) に参加した、愛知県東海市在住の65歳以上の高齢者5563名(うち参加基準を満たしたのは4739名)を対象に、▼聴力低下の有無▼孤独感▼要介護状態の新規発生—との関連を縦断的に分析しました。

「聴力低下」の有無は「難聴高齢者のハンディキャップスクリーニング検査」(Hearing Handicap Inventory for Elderly-Screening : HHIE-S)で評価し、20.0%(947名)で聴力低下(HHIE-S が9点以上)が見られました。

また、孤独感は「UCLA孤独感尺度: 第3版(University of California, Los Angeles Loneliness Scale)」で評価しています。

そこから、次のような状況が明らかになりました。

▽要介護状態の新規発生は、「聴力低下のない群」では4.5%であったが、「聴力低下のある群」では8.3%で優位に高い

▽「聴力低下のない群」では、「孤独感」と「要介護状態の新規発生」との間に有意な関連は認められなかった

▽「聴力低下のある群」では、「孤独感」を有する場合、そうでない場合に比べて約1.7倍も要介護状態の新規発生が多い

「聴力低下のない高齢者」では、「孤独感」と「要介護状態の新規発生」との間に有意な関連は認められないが、「聴力低下のある高齢は」では、「孤独感」を有する場合、そうでない場合に比べて約1.7倍も要介護状態の新規発生が多い



▽「男性」「教育年数が少ない」「現在、仕事をしていない」「1人暮らし」「運動習慣がない」「難聴の重症度が高い」「うつ傾向」といった特徴のある人が、孤独を感じやすい

「男性」「教育年数が少ない」「現在、仕事をしていない」「1人暮らし」「運動習慣がない」「難聴の重症度が高い」「うつ傾向」といった特徴のある人が、孤独を感じやすい



長寿医療研究センターでは、「聴力低下のある高齢者は、聴力低下のない高齢者と比べ、要介護状態の新規発生の割合が高い」「聴力低下を有する高齢者では、孤独感が要介護状態の新規発生と関連する」と結論づけています。

例えば「聴力が低下する」→「他者とのコミュニケーション、外出や社会参加が困難になる」→「孤独感が増す」→「外出減などにより身体活動性も低下する」→「身体能力(筋力)が低下する」→「要支援・要介護状態に陥る」などの悪循環が考えられるでしょう。

地域における「介護予防」対策を進めるうえでは、「聴力低下のある高齢者」にとりわけ注意が必要であると言えます。

今般の研究結果では、「男性」「教育年数が少ない」「現在、仕事をしていない」「1人暮らし」「運動習慣がない」「難聴の重症度が高い」「うつ傾向」といった特徴のある人が、孤独を感じやすいことも分かりました。こうした特徴を持つ高齢者において、加齢に伴って「聴力低下」が生じれば、要介護状態に陥りやすくなると考えられそうです。

介護予防対策として、「通いの場を設置し、そこへの参加を促す」ことなどが地域で進められていますが、聴力の低下した高齢者は「通いの場」への参加に二の足を踏むケースも少なくないと思われます。▼「通いの場」において聴力の低下した高齢者でも楽しく過ごせるような工夫を行う▼地域の様々なネットワークを活用して、聴力の低下した高齢者に積極的に接触し、「通いの場」などへの参加を促す▼かかりつけ医や家族などが、高齢者の聴力の状況を定期的にチェックし、低下が見られた場合には必要な治療や支援を行う―ことなどにも力を入れていく必要がありそうです。



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