要介護度の改善のみを指標とした介護保険制度は好ましくない―老施協
2016.12.6.(火)
要介護度の改善のみを評価指標とする、いわゆる「自立支援介護」によって、改善の見込みが少ない高齢者の施設受け入れなどを阻害してしまう―。
全国老人福祉施設協議会は5日、塩崎恭久厚生労働大臣に宛ててこういった意見(いわゆる「自立支援介護」について)を提出しました。
要介護度改善が見込めない高齢者の施設受け入れが阻害される可能性も
意見の中で指摘された「自立支援介護」とは、要介護度の改善のみを評価指標とし、「要介護度を改善させた介護事業所にはインセンティブを与える」「自立支援に向けた標準的な取り組みを行わない介護事業者にはディスインセンティブを課す」といった内容です。
老施協では、こうした考え方には(1)要介護度が改善する見込みの低い高齢者の施設受け入れを阻害する(2)利用者に望まぬ栄養摂取やリハビリを課すことになる(3)在宅復帰が困難な利用者に強迫観念を与える―と批判します。
(1)について、老施協は、暮らしの質向上(例えば、終日ベッドの上で過ごしていた状態から、介助つきで外出が可能になる状態への改善)は、必ずしも要介護度の改善には反映されないことを強調し、要介護度改善飲みを評価指標とすることは好ましくないと強調。
また(2)では、「ADL改善は、QOL向上を実現するための手段に過ぎず、ADL改善事態を自立と捉えることはできない」「自立には▼身体機能▼社会生活▼個人の尊厳―のすべてを含めた状態を指す」という点を強調。
さらに、社会に居場所がなく、安心・安全の終の棲家である特別養護老人ホームにおいて、利用者の意に反するリハビリなどが強いられること(これらは虐待であるとも指摘)は好ましくないと訴えます。
こうした点を踏まえて老施協は、「いわゆる自立支援介護は、すべての施設・事業所、対象者に普遍性を持たないため、すべからく義務とすべきではない」と要望しています。
ただし、社会保障審議会・介護保険部会などでも、高齢化に伴って介護費がますます増加していくことを踏まえ、「要介護度の改善、自立に資する介護サービスに、介護保険給付を重点化していくべきである」との指摘が、数多くの委員から出されており、介護保険制度の理念・在り方に遡った議論をする時期に来ているのかもしれません。
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