心疾患、脳血管疾患による年齢調整死亡率、都道府県間で2倍の格差—厚労省
2017.6.15.(木)
2015年における三大死因の年齢調整死亡率は悪性新生物では男性165.3・女性87.7、心疾患では男性65.4・女性34.2、脳血管疾患では男性37.8・女性21.0となっており、20年前に比べて20-60ポイント程度低下した。しかし、悪性新生物では1.5倍程度、心疾患・脳血管疾患では2倍程度の地域格差がある—。
厚生労働省が14日に公表した2015年度の「都道府県別年齢調整死亡率の概況」(2017年度人口動態統計特殊報告)から、こういった状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
年齢調整死亡率、男女ともに最低は長野、最高は青森
年齢構成を考えずに単純な死亡率(死亡数÷人口)を比較すると、「高齢者の多い地域で高い」という不都合が出ます。そこで年齢構成を揃えた「年齢調整死亡率」を用いることで、地域間あるいは年次間の比較が可能になるのです。
2015年における全国の年齢調整死亡率は男性486.0、女性255.0で、5年前(2010年)に比べて男性で58.3ポイント、女性で20.0ポイント低下しています。
これを都道府県別に見ると、男性で低いのは▼長野(434.1)▼滋賀(437.9)▼奈良(452.9)▼福井(453.5)▼京都(455.1)―など、女性では▼長野(227.7)▼島根(236.9)▼岡山(238.4)▼熊本(240.7)▼滋賀(240.8)―などとなっています。逆に男性で高い▼青森(585.6)▼秋田(540.3)▼岩手(522.5)▼和歌山(520.7)▼鳥取(518.9)―など、女性では▼青森(288.4)▼福島(275.7)▼茨城(273.8)▼栃木(272.5)▼和歌山(268.9)―などという状況です。
男女とも最低が長野、最高が青森で、その格差は男性で1.35倍、女性で1.27倍となりました。かつては「東高西低」の傾向があり、また都道府県間に大きな格差がありましたが、年齢調整死亡率は全国的に低下し、その格差は小さくなってきています。厚労省のその理由として「東高西低傾向のある脳血管疾患の死亡率が大幅に低下し、差が小さくなってきている」点をあげています。
心疾患と脳血管疾患の年齢調整死亡率に大きな地域差、救急医療体制の見直しを
次に三大死因(悪性新生物、心疾患、脳血管疾患)の年齢調整死亡率を見ると、次のようになっており、20年前に比べて20-60ポイント程度低下していることが分かります。医療技術の進展や生活習慣の変化などが影響していると考えられます。
▼悪性新生物:男性165.3(20年前から60.8ポイント低下)・女性87.7(同20.6ポイント低下)
▼心疾患:男性65.4(34.3ポイント低下)・女性34.2(24.2ポイント低下)
▼脳血管疾患では男性37.8(61.5ポイント低下)・女性21.0(43.0ポイント低下)
これら三大死因について、都道府県別の年齢調整死亡率を見てみましょう。
悪性新生物については、男性で低いのは▼長野(132.4)▼滋賀(149.1)▼福井(150.5)―など、女性で低いのは▼岡山(75.2)▼長野(76.6)▼徳島(78.1)―などです。逆に男性で高いの▼青森(201.6)▼秋田(185.8)▼鳥取(185.8)―など、女性では▼青森(103.0)▼北海道(99.5)▼秋田(97.7)―などとなっています。最高と最低の格差を見ると、男性では1.52倍、女性では1.37倍です。
心疾患については、男性で低いのは▼福岡(42.3)▼佐賀(50.2)▼愛知(52.6)―など、女性では▼福岡(23.9)▼富山(27.3)▼長野(28.3)―などで、逆に男性で高いのは▼千葉(81.0)▼岩手(80.5)▼愛媛(80.3)―など、女性で高いのは▼愛媛(42.8)▼和歌山(42.1)▼千葉(41.3)—などです。最高と最低の格差を見ると、男性では1.91倍、女性では1.79倍と非常に大きくなっています。救急搬送・受入体制などを改めて見直す必要があるかもしれません(関連記事はこちら)。
脳血管疾患を見てみると、男性で低いのは▼滋賀(26.4)▼奈良(29.0)▼和歌山(32.4)―など、女性で低いのは▼大阪(16.6)▼滋賀(17.1)▼沖縄(17.5)―などという状況。逆に男性で高いのは▼青森(52.8)▼秋田(52.2)▼岩手(51.8)―などで、女性では▼岩手(29.3)▼栃木(28.5)▼青森(28.2)―などで低くなりました。最高と最低の格差を見ると、男性では2.0倍、女性では1.76倍と、こちらも大きく、やはり救急医療体制の見直しが必要でしょう(関連記事はこちら)。
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