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医薬品などの費用対効果評価、業界は「加算のみへの反映」を切望—中医協・費用対効果評価合同部会

2017.10.13.(金)

 13品目の医薬品・医療機器を対象に行われている費用対効果評価の試行導入、さらにその後の制度化(本格導入)において、価格調整は「加算率」に限定して行うべきである。また「費用対効果が優れている」と判断された製品については価格引き上げも行うべきである—。

 10月11日に開催された中央社会保険医療協議会の費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会において、製薬メーカーや医療機器メーカーの代表からはこういった意見が相次いで出されました(関連記事はこちら)。

10月11日に開催された、「第2回 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会」

10月11日に開催された、「第2回 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会」

費用対効果の結果、薬価全体に反映すべきか、加算のみに反映すべきか

 医薬品・医療機器の価格設定において「費用対効果評価」が導入されます。2018年度には13品目について試行的な価格調整が行われ、引き続き制度化(本格導入)されることになっています。現在、13品目の「試行的導入」の価格調整方法について詰めの議論が行われており、今般、製薬メーカー・医療機器メーカーの団体から意見聴取が行われたものです。

いずれの団体からも(1)価格調整は加算に限定して行うべき(2)費用対効果が優れていると判断された場合には価格引き上げも行うべき—といった見解が示されました。両者とも中医協で大きな論点となっているテーマであり、今後の議論に注目が集まります。

まず(1)については、費用対効果評価の結果に基づいた価格調整の範囲を「薬価や材料価格全体とすべきなのか」それとも「加算にとどめるべきなのか」という論点に関するものです。例えば類似薬効比較方式で「類似薬は100円、有用性があるので40%加算する」として140円に設定された医薬品Aがあるとして、費用対効果が悪いと判断されれば、当該医薬品・材料の価格は引き下げられることになります。その際、薬価・材料価格全体を対象とした仕組みでは「類似薬よりも低い価格」、つまり100円を割る可能性もあります。一方、加算のみ対象とした仕組みとすれば、「40%をどこまで引き下げるか」という検討がなされ、少なくとも類似薬と同価格に設定された100円を割ることはありません。

この点、製薬メーカー・医療機器メーカー団体のいずれも「薬価制度、材料価格基準制度との整合性を踏まえ、加算率の補正に限定すべき」と強く訴えています。日本製薬団体連合会の多田正世会長は「薬価基準制度の基本的な部分(例えば類似薬と同一価格を設定するなど)が変わってしまうと、予見性が失われてしまう」点を強調しています。

これに対し中医協の万代恭嗣委員(日本病院会副会長)と幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は明確に「加算に限定すべき」との主張に反論しました。とくに幸野委員は、「新薬の価格設定では加算が別建てで評価されるが、改定を経る中で加算部分は見えなくなる」旨を主張し、「加算部分のみの価格調整はできないはず」と述べています。一方、多田日薬連会長は「日本の薬価制度では市場実勢価格をベースに薬価を引き下げていくが、自由市場における実勢価格ではない」(基本的に薬価を上回る価格での取り引きはありえず、実勢価格は薬価よりも低くなり、それがため薬価改定では薬価は引き下げられる方向に動く)ことを指摘し、「現行の薬価基準制度と、費用対効果評価の理念とのバランスをとり『加算率の補正にとどめる』提案をしている」と理解を求めました。

極めて費用対効果が優れた製品、価格の「引き上げ」を行うべきか

 また(2)では、「費用対効果が極めて優れている」と判断された製品をどう評価するかという問題です。幸野委員は「費用対効果評価は、現在の薬価基準制度などと異なる角度で価格の妥当性を検証するものと言える。費用対効果が優れていると判断されれば『薬価基準に則った現在の価格が妥当である』ことを意味し、優れていなければ『現在の価格は不当に高い』ことを意味するので、価格引き上げという選択肢はない」と改めて強調。

 これに対し多田日薬連会長は、「現在の薬価を『費用対効果評価』という異なる角度で評価するのであれば、『より高く価格を設定すべき』という判断も当然ありうる」と反論しました。上記の例を持ち出せば、現行薬価基準では「有用性を40%加算」として評価しているが、別の角度から見れば「この有用性は実は70%に該当する」との判断もあり得るということになります。

 ▼現行薬価基準と異なる費用対効果評価に基づく検証という論理▼イノベーションの推進(優れた医薬品などには高い評価を行う)―などを考慮すれば、極めて優れた医薬品などには「価格の引き上げ」も行うべきではないでしょうか。

 なお、製薬メーカー団体からは「費用対効果評価の対象品目は、『加算率の高い』製品に限定すべき」との提案が、医療機器メーカー団体からは「制度化(本格導入)において、経済性を評価した新たな仕組み」の提案が行われています。

 後者は、保険収載時にメーカーから「当該製品は経済性が優れている(例えば生産性損失を抑えることができる)」との申請を行い、後に経済性を評価して(本当に生産性損失が抑えられたのか)、優れている場合にはプラスの評価を、優れていなかった(生産性損失は抑えられなかった)場合にはマイナスの評価を行うというものです。中医協委員からは「費用対効果評価とは考え方が異なるのではないか」(幸野委員)、「経済性が優れていれば市場の中で評価される、別途評価の必要はないのではないか」(松本吉郎委員:日本医師会常任理事)といった慎重意見が出されています。

  

 

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