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GemMed塾 看護モニタリング

2018年4月までに965件の医療事故、うち68.5%で院内調査完了―日本医療安全調査機構

2018.5.11.(金)

 今年(2018年)4月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は20件。2015年10月の医療事故調査制度スタートから、累計で965件の医療事故が報告され、68.5%で院内調査が完了しており、調査スピードが確実に上がっている―。

 日本で唯一のセンターとして指定されている「日本医療安全調査機構」が5月9日、こういった状況を公表しました(機構のサイトはこちら)(前月の状況はこちら)。ただし、医療安全調査機構の調べでは「事故発生から報告までの期間が延びている」ことも分かっており、より詳細な分析が必要です(関連記事はこちら)。

医療事故報告の件数、2018年4月は整形外科で4件、内科で3件、外科で2件

 2015年10月から、すべての医療機関で、院長などの管理者が予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産」のすべてをセンターに報告しなければならない仕組み(医療事故調査制度)がスタートしました。事故の原因を調査・救命する中で「再発防止策」を構築し共有することを主眼とし、「責任追及」を目的とするものではありません(関連記事はこちら)。

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける

 
すでにセンターでは再発防止策を3本構築しており、(1)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―(2)急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析(3)注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析—が公表されています。

 医療事故調査制度の大きな流れを確認すると、▼医療事故発生を管理者が確認した場合、速やかにセンターに実行発生を報告する → ▼当該医療機関で事故原因を調査【院内調査】し、調査結果をセンターに報告する → ▼当該医療機関が、調査結果に基づいて事故の内容や原因について遺族に説明する(調査結果報告書などの提示までは不要) → ▼センターが事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを練る—というものです(関連記事はこちら)。
 
我が国唯一のセンターとして指定された日本医療安全調査機構は、毎月、医療事故報告の状況を極めて迅速に公表しています(前月の状況はこちら、前々月の状況はこちら)。今年(2018年)4月には、新たに20件の医療事故が報告され、制度発足からの累計報告件数は965件となりました。

 今年(2018年)4月に報告された事故の内訳は、病院からが18件、診療所からが2件で、制度発足からの累計では、病院から906件(事故全体の93.9%)、診療所から59件(同6.1%)となっています。

今年(2018年)4月報告分の事故を診療科別に見ると、▼整形外科4件▼内科3件▼外科2件―などで多くなっています。制度発足からの累計では、▼外科166件(同17.2%)▼内科126件(同13.1%)▼整形外科84件(同8.7%)▼消化器科82件(同8.5%)―などとなりました。

2018年4月に、新たに20件の医療事故が報告され、制度発足(2015年10月)からの累計で965件の医療事故が報告されている

2018年4月に、新たに20件の医療事故が報告され、制度発足(2015年10月)からの累計で965件の医療事故が報告されている

 

センターへの相談件数は累計で4946件、遺族への制度浸透はまだまだ

 前述のとおり、センターに報告しなければならない医療事故は、「医療機関で生じた死亡・死産事例」のすべてではなく、死亡・死産事例のうち「院長などの管理者が▼予期しなかった▼医療に起因し、または起因すると疑われる—」ものに限定されます。火災などで瀕死の状態となり、救急搬送されたものの、治療の甲斐なく死亡してしまった場合には、「死亡が予期された」ため一般に報告対象からは除外されます。もっとも、そうした患者でも通常の治療過程とは異なるプロセス(例えば、医薬品の誤投与など)で死亡した場合には、「予期されなかった」ものとして、報告対象となります。

こうしたことから、医療現場では「患者が死亡してしまったが、センターに報告すべき医療事故に該当するのだろうか?」といった疑問が生じます。また、初めての報告などでは、「センターへの報告方法などがよく分からない」といった疑問も当然生じます。一方、遺族側は、「家族が医療機関で死亡したが、医療事故として報告されていない。医療機関側が隠蔽しているのではないか」といった疑念を抱くこともあります。

 これらの疑問・疑念を放置することはできないので、センターでは相談対応を行っています。今年(2018年)4月には、新たに169件の相談がセンターに寄せられました。制度発足からの累計相談件数は4946件にのぼっています。

今年(2018年)4月に寄せられた新規相談の内訳は、▼医療機関から75件▼遺族などから87件▼その他・不明7件―でした。

医療機関からの相談内容は「報告の手続き」がもっとも多く49件(医療機関からの相談の65.3%)。次いで「院内調査に関するもの」が14件(同じく18.7%)、「報告すべき医療事故に該当するか否かの判断」が14件(同じく18.7%)となりました。一昨年(2016年)6月に医療事故調査制度の運用改善(医療事故該当性の判断などを標準化するための「支援団体等連絡協議会」を設置するなど)が行われており、医療現場に制度が定着してきている証左と言えそうです(関連記事はこちらこちら)。

 また遺族などからの相談内容を見ると、依然として「医療事故に該当するか否かの判断」が圧倒的多数を占め、81件(遺族などからの相談の93.1%)となりました。一般国民への制度浸透には、まだ時間がかかり、「医療現場と一般国民との意識のズレ」が拡大してきている点が気になります。なお、相談の中には、「制度開始前の事例」「生存事例」など、そもそも「報告すべき医療事故でない」ものも含まれており、さらなる「制度の普及・啓発」が必要な状況です。

センターへの相談は2018年4月に169件あり、うち75件が医療機関から、87件が遺族などからのものとなっているが、これらの中には「制度の対象外の事例」も含まれている点には注意が必要である

センターへの相談は2018年4月に169件あり、うち75件が医療機関から、87件が遺族などからのものとなっているが、これらの中には「制度の対象外の事例」も含まれている点には注意が必要である

 

センターへの調査依頼は65件のまま(新規依頼なし)、うち5件ではセンター調査完了

 前述のとおり、医療事故調査制度の目的は「再発防止」にあります。事故が発生した医療機関が「自ら」が再発防止策を練るために、自院で原因究明に向けた調査【院内調査】を行うことがベースとなります。

今年(2018年)4月に新たに院内調査が完了した事例は28件で、制度発足からの累計では661件となりました。これまでに報告された全965件の医療事故のうち68.5%で院内調査が完了しており、調査スピードがさらに向上しています。
 
 ところで、遺族の中には「院内調査の結果に納得できない」「院内調査が遅すぎる(時間稼ぎをしていないか)」と感じる人もいるでしょう。また、小規模医療機関等の中には「自力での院内調査が難しい」ところもあるでしょう(医師会や病院団体などの支援団体によるサポート体制がある)。

そこで、センターでは、「遺族や医療機関からの調査依頼を受け付ける」体制も整えています。ここでは、「院内調査が時期・内容ともに適正に実施されたか」という観点での調査が中心となります。ただし今年(2018年)4月に、センターになされた調査依頼は0件(すべて遺族から)でした。制度発足からの累計は65件(遺族から50件・76.9%、医療機関から15件・23.1%)で、その進捗状況は、▼センター調査終了が5件▼院内調査結果報告書の検証中(院内調査が適切に行われたかどうかを確認)が59件▼院内調査結果報告書検証準備作業中が1件—となっています。

医療事故を報告した医療機関のうち、新たに院内調査が完了したものは2018年4月に28件、制度発足からの累計で661件となった(報告された事故全体の68.5%)

医療事故を報告した医療機関のうち、新たに院内調査が完了したものは2018年4月に28件、制度発足からの累計で661件となった(報告された事故全体の68.5%)

 
 
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