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新型コロナ対策 医療崩壊の真実

「コロナ感染症対策」と「医師の働き方改革」とを計画的に並行して進めなければならない―全自病の小熊会長・望月副会長(2)

2021.4.16.(金)

新型コロナウイルス感染症が蔓延する中であっても、医師の働き方改革を着実に進め2024年度に備えなければならない。まず「スタッフの労働時間把握」「労働基準監督署からの宿日直許可取得」などを着実進め、いわゆるB・連携B・C水準指定のベースとなる「医師労働時間短縮計画」作成に向けて計画的に動く必要がある―。

全国自治体病院協議会の小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)と望月泉副会長(八幡平市病院事業管理者兼八幡平市立病院統括院長)は、4月15日の定例記者会見でこういった考えも強調しました。

4月15日の定例記者会見に臨んだ、全国自治体病院協議会の小熊豊会長

一部の公立病院では「宿日直許可」が出ておらず、救急医療提供等に支障が出る可能性も

2024年4月から、すべての勤務医に新たな時間外労働の上限規制が適用されます。原則として「年間960時間以下」が上限となりますが【いわゆるA水準】、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関【いわゆるB水準】や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師【いわゆるC水準】では、「年間1860時間以下」までに上限が緩和されます。ただし、一般労働者と比べて「多くの医師が長時間労働に携わらなければならない」状況そのものは変わっておらず、医療機関の管理者(院長等)には、▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)―といった追加的健康確保措置を講じる義務が課されます【医師の働き方改革】



「医師の働き方改革の推進に関する検討会」では、こうした「医師の働き方改革」の制度化(法令等の規定整備)に向けて▼B・C水準の対象医療機関や指定の枠組み▼追加的健康確保措置の内容と実施確保―などの検討を一昨年(2019年)7月から進めて、昨年(2020年)末に詳細を取りまとめ、現在、医療法等改正案(良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案)として国会に上程されています。



ところで、昨年初頭から我が国でも猛威を振るう新型コロナウイルス感染症は「医師の働き方改革」にも大きな影響を及ぼしていることが各種の調査で明らかになってきています。例えば、「新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた医師の働き方改革が大学病院勤務医師の働き方に与える影響の検証とその対策に資する研究」の結果(速報版)では、新型コロナウイルス感染症の影響で、大学病院の勤務医負担が大きくなっており、第3波が到来した昨年(2020年)12月には、10.5-23.2%の大学病院勤務医が「1860時間超」相当の時間外労働を行っていたことなどが分かっています。

新型コロナウイルス感染症については、労働基準法第33条の「災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合には、必要な限度の範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができる」との規定対象となります。したがって、法令上は「長時間の労働」に問題は生じませんが、新型コロナウイルス感染症に対応する呼吸器科や内科の医師等では「大きな負担」が生じてしまいます。この点、専門的な知識・技術も必要なことから、「他の診療科の医師にタスク・シェアし、負担の平準化を図る」ことが難しいのが悩みどころです。



また、新型コロナウイルス感染症で医療現場が混乱する中では「医師の働き方改革を進められるのか」という疑問もわきます。

この点について望月副会長は、「パンデミックが収束しない場合は別であろうが、そうでない限り2024年度からの労働基準法施行を後ろに動かすことはできない。新型コロナウイルス感染症対策と、医師の働き方改革に向けた労働環境整備等とを、並行して進めなければならない」との考えを強調。

具体的には、まず「医師の労働時間把握」を行い、2022年度からのB・連携B・C水準の申請のベースとなる「医師労働時間短縮計画」作成に向けて、目標を定め、計画的に各病院が動く必要があります。例えば、ICカードなどで各医師(1人1人の医師について、冒頭の労働時間上限を遵守しなければならない)の労働時間を把握(「960時間超の時間外労働をしている医師はどの程度いるのか」「1860時間超の時間外労働をしている医師はどの程度いるのか」)したうえで、例えば「まず1860時間超の時間外労働をしている医師について、どうすれば労働時間を短縮できるのか」などを、「〇年●月までに◆◆を行い、△年▲月までに◇◇を行う」などのスケジュールを立てて対策を打っていく必要があります。その際、各病院で実行可能な部分と、地域の医療機関と協力しなければ実行できない部分とがあり、早めに動くことが必要となる点に留意が必要です。



また、小熊会長は「公立病院の中にも、一部、宿日直許可が出ていない病院がある。労働基準監督署との協議などを進める必要がある」点も強調しました。厚労省が2019年7月に示した新たな「医師・看護師等の宿日直許可基準」では、「通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のもの」で、「特殊の措置を必要としない軽度または短時間の業務」を実施する場合に限り宿日直と認められる旨が示されています。したがって、例えば、夜間の救急搬送患者が常に多く、それに少ない宿直医等で対応しなければならないなど、「通常の業務と同態様の業務」が稀でないような場合には、宿日直とは認められません(関連記事はこちら)。

宿日直と認められなった業務時間は「夜勤」として時間外労働にカウントされ、上記の「960時間」「1860時間」に組み込まれます。ケースによっては「救急医療提供体制を縮小しなければならない」ことも生じえることから、病院サイドが十分に規定を理解し、労働基準監督署と綿密な協議を行う(どのように対応すれば宿日直と認められるのかのアドヴァイスを受けるなど)、さらには「地域の医療機関で救急対応の在り方を再検討する」ことなども必要になってくるでしょう。小熊会長は「全自病でも実態把握を行い、必要な対応策を検討する」考えを明らかにしています。

なお、小熊会長は「勤務医の労働時間は徐々にではあるが、かつてに比べて着実に短縮してきている」ことを紹介するとともに、今後、▼軽症の高齢患者について、大病院の外来ではなく、かかりつけのクリニックや中小病院で初期対応を行う(必要に応じて大病院に紹介してもらう)▼ごく軽症で医療機関を受診するまでもないような患者について、電話などでトリアージを行えるシステムを充実する▼クリニックや中小病院の医師に、「夜間の救急患者」を振り分ける業務に参画してもらう―などの、「勤務医(とりわけ急性期の大病院に勤務する医師)の負担軽減策」を具体化・実体化していくことが重要であると訴えています。



全自病では全国自治体病院開設者協議会(県立病院の開設者である知事、市町村立病院の開設者である市町村長らの協議会)と連盟で総務省や厚生労働省、国会議員らに宛てて「要望書」を定期的に提出しています。地域医療の重要な砦である自治体病院の運営を円滑にするための処施策実施を求めるもので、今春には「医師の働き方改革」のほか、「新型コロナウイルス感染症対策」「医師偏在対策」などを要望する構えです。

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