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診療報酬改定セミナー2022 新型コロナ対策

救急救命士の院内業務実施に向け、医療安全等に関する「院内研修」など義務付け—救急・災害医療提供体制検討会

2021.6.8.(火)

今年(2021年)10月1日から、救急救命士が「救急外来」(つまり医療機関の中)で応急処置業務に携わることが可能となるが、従前よりもさらに「医療安全」「チーム医療」「感染対策」などが求められることから、これらの内容に関する「院内研修」の実施を求め、また研修実施等に向けて医療機関内に「委員会」を新たに設けることとなり、それらの雛形(素案)を関係学会の意見を踏まえて固めていく―。

ただし、その際、委員会には「メディカルコントロールについて理解している医師」の配置を必須とすべきか、などの論点を詰める必要がある―。

6月4日に開催された「「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった議論が行われました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

6月4日に開催された「第24回 救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」

救急救命士による「医療機関内での業務実施」に向けて、院内研修等の体制を整備

Gem Medでお伝えしているとおり、改正医療法(良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための 医療法等の一部を改正する法律)が成立し(5月21日)、施行に向けた準備が急ピッチで進められます。

改正法の柱は、(1)医師の働き方改革推進(2)各種医療職種の専門性発揮(3)地域の実情に応じた医療提供体制の確保―の3本柱で、このうち(2)では、▼診療放射線技師▼臨床検査技師▼臨床工学技士▼救急救命士—が実施可能な医行為の幅を拡大することになります(関連記事はこちら)。

今年(2021年)10月1日から、▼診療放射線技師▼臨床検査技師▼臨床工学技士▼救急救命士—が実施可能な医行為の幅を拡大する(改正医療法等)



救急救命士に関しては、従前「医療機関に搬送されるまでの間(病院前)に重度傷病者に対して救急救命処置を実施する」ことが認められていましたが、改正法では「救急外来」(救急診療を要する傷病者が来院してから入院(病棟)に移行するまで(入院しない場合は帰宅するまで)に必要な診察・検査・処置等を提供される場でも、つまり「医療機関の中」で救急救命処置を実施することが可能となります。

この点、従前の業務(医療機関外での業務)と追加される業務(医療機関内での業務)との間には、▼医療安全確保▼感染対策▼チーム医療—などの面で若干の違いがあります。例えば、「医療機関外での救命処置では、限定的な医療行為しか認められていない」ところ、「医療機関内での救命処置では、使用する医薬品などが格段に幅広くなる」という違いがあります。また、医療機関の中では「チームの1員」として多職種と協同することとなります。



こうした点を踏まえた「追加的な研修」を実施することが医療機関に新たに求められます(救急救命士では、研修受講が求められる)。

救急救命士による院内業務実施に向け、院内で必要な「研修」を実施する(救急・災害医療提供体制検討会1 210604)



あわせて、こうした研修を適切に実施し、救急救命士を含めたチーム医療の質を高めるために、医療機関内に新たな委員会を設置することも求められます。

救急救命士による院内業務実施に向け、院内に「委員会」を設置し、院内研修実施などの諸規定を設ける(救急・災害医療提供体制検討会2 210604)



検討会では、この2点(委員会設置、院内研修の実施)の方針を、改正法案を議論する時点で固めており、今般、詳細な規定整備論議に入りました。すでに固められた方針であることから、6月4日の検討会では、方向には異論が出ておらず、「関係学会(日本救急医学会や日本臨床救急医学会)に素案作成を依頼し、それをベースに議論を行う」方向で概ね一致しました。

新設する院内委員会に「メディカルコントロールを理解した医師」を必置とすべきか

ただし、新設する委員会のメンバー構成について「MC(メディカルコントロール)ついて十分な理解を持った救急医などを必置する」べきか否かで、意見が大きく分かれています。

メディカルコントロールとは、▼救急救命士などに、救急医等が応急処置に関する指示・指導・助言を行う▼事後に「救急救命士などの行った処置等が適切に行われたか」を検証する▼救急救命士に、病院実習を行う―といった一連のシステムのことです。従前、救急救命士は、「医師のいない環境」で一定の医行為を含む応急処置等を行うことから、当該医行為等の質向上を目指し、救急医等によるバックアップ体制が敷かれたものです。

溝端康光構成員(日本臨床救急医学会副代表理事)や大友康裕構成員(東京医科歯科大学大学院救急災害医学分野教授)、本多麻夫構成員(埼玉県保健医療部参事)らは、「院内の委員会にメディカルコントロールについて理解のある医師がいること」が極めて重要であるとし、委員会に必置とすべきと提案しています。

その理由としては、「救急救命士は看護師とは異なるので、医師による指示出しの仕方も変わってくる。このため、救急救命士に指示等を出すメディカルコントロールについて、ある程度理解した医師などが委員会に入るべきである」(溝端構成員)ことなどが挙げられています。



これに対し、猪口正孝構成員(全日本病院協会常任理事)や長島公之構成員(日本医師会常任理事)らは、「従前の『医師のいない救急現場や救急車内』などと異なり、医師が常駐する医療現場で、チーム医療の一環として救急救命士が業務を行うこととなり、現場で適切な指示を行うことは可能である」「メディカルコントロールに関わった医師を必置とすれば、比較的規模の小さな2次救急医療機関などでは、救急救命士に活躍してもらうことができなくなってしまう」と述べ、「必置案」に反対しています。



いわば前者は「救急救命士による医行為の質を担保するために、まず『人材や設備の整った大規模救急病院』でスタートすべき」という考えが、後者は「救急現場の医師負担を軽減するために、小規模も含めた医療機関で広範に救急救命士による医行為実施を可能にすべき」という考えがあると言えます。単に「委員会のメンバー構成をどうするか」という議論では終わらない点に留意すべきでしょう。

遠藤久夫座長(学習院大学教授)は、非常に重要な論点であると判断し「次回以降も議論を継続してもらう」ことを決定しました。

なお、厚労省では「改正法の趣旨・条文に照らせば、救急救命士による医療機関内での業務実施は、大規模病院に限らず、小規模の医療機関も対象となる。体制の整った一部の医療機関に限定したのでは、タスク・シフティングを含めた改正の意味が失われてしまう」との考えを示しています。あわせて「他の委員会(医療安全委員会)の構成メンバーについて詳細な規定はしておらず、新たな委員会でのみ詳細規定を置くことに違和感を覚える」との考えも示しています。

すべての勤務医に対し、2024年度から「原則、時間外労働の上限を年間960時間までとする」(地域医療確保のために必要なケースなどでは例外的に1860時間までの時間外労働が可能)ことになります(医師働き方改革)。しかし、手厚い地域医療を確保しながら、勤務医の労働時間を短縮していくことは難しく、そこでは「医師から他職種への業務移管(タスク・シフティング)」が非常に重要となります。

このタスク・シフティングの担い手の一つとして「救急救命士」に期待が集まり、今般の法改正(医療機関内で、救急医等とともに応急処置を行うことを可能とする)が行われました。その趣旨に照らせば、多忙を極めている救急医等の業務を少しでも軽くすることが求められ、「広い医療機関での救急救命士の活躍」に期待が集まります。

もちろん溝端構成員らの指摘する「医療の質」確保も極めて重要な視点であり、「院内研修」の充実を目指していくことが必要です。この点、救急救命士に対する研修が重要であることはもちろん、「指示を出す医師」や「協同する看護師をはじめとする他のメディカルスタッフ」も、救急救命士を交えたチーム医療について学んでいくことが重要です。

救急救命士の業務拡大は「今年(2021年)10月1日」に施行されるため、諸準備(関連法令の告示や通知等の発出、その前提となるパブリックコメント募集など)に必要な時間を考慮し、「6月、7月、遅くとも8月には検討会で意見をまとめる」ことになります。

「臨床検査技師・救急救命士によるワクチン接種」は実質を見れば医師法に違反しない

なお、6月4日の検討会では、「臨床検査技師・救急救命士によるワクチン接種」について「外形上は医師法に違反する」ものの、「実質的に違法性が阻却される」旨の考えが、厚労省から説明されました。

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中で、「ワクチン接種」の拡大に大きな期待が集まっていますが、「打ち手の確保」に大きな課題があります。短期間に、非常に多くの国民にワクチンを接種しなければならないためです。

しかし、ワクチン接種は「医行為」であり、臨床検査技師や救急救命士の実施は外形的には「医師法に違反する」ことになります。またワクチン接種は「緊急性」がないために「正当行為」(刑法第35条)として違法性が阻却されるものでもありません。

しかし、▼コロナワクチン接種のために「打ち手」として両職種の協力が必要なこと▼両職種は「静脈路確保、薬剤投与」といった基本的教育を受け、救急現場等でも実施しており、協力に必要な技術的基盤を持っていること▼「非接種者の同意を得る」仕組みとすること―から、本行為は「実質的に違法性が阻却される」(医師法に違反しない)と考えることが可能であると厚労省は説明しています。



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