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2024年度以降の「がん研究に関する戦略」策定論議始まる、「患者・国民の視点」も重視せよ―がん研究あり方有識者会議

2023.4.12.(水)

2023年度は「がんがん研究10か年戦略」の最終年度にあたり、また、2023年度から新たな「第4期がん対策推進基本計画」が稼働していることを受け、「今後の新たな『がん研究に関する戦略』を定める」必要がある—。

4月12日に開催された「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」(以下、有識者会議)でこういった議論が始まりました。今秋(2023年秋)を目途に意見取りまとめを行います。

急速に進展するAIやデジタル技術を踏まえた「がん研究」を推進していく必要がある

Gem Medで報じているとおり、第4期のがん対策推進基本計画が3月28日に閣議決定されました。「誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す」ことを全体目標に掲げ、(1)がん予防(2)がん医療(3)がんとの共生—を進めるとともに、これらの共通基盤となる「研究」「人材育成」「教育・普及啓発」などに協力に取り組んでいく考えを打ち出しています(関連記事はこちら)。

第4期がん対策推進基本計画の概要



がん予防・医療・共生を支える「がん研究」については、現在、厚生労働省・文部科学省・経済産業省の共同による「がん研究10か年戦略」に沿って進められています。2014年度からスタートし、(1)がんの本態解明(2)アンメットメディカルニーズに応える新規薬剤開発(3)患者に優しい新規医療技術開発(4)新たな標準治療の創設(5)ライフステージやがんの特性に着目(小児、高齢者、難治性がん、希少がん)(6)がんの予防法や早期発見手法(7)充実したサバイバーシップを実現する社会の構築(8)がん対策の効果的な推進と評価—の8テーマを打ち出し、例えば▼高濃度乳房や乳がん検診に関して受診者の理解を深め、検診受診後の適切な行動推進に向けたパンフレット作成▼希少がんの診断・治療に関するガイドライン作成▼がん・生殖医療連携ネットワークの構築▼超低侵襲リアルタイムアダプティブ放射線治療の実現▼世界初のマイクロ波マンモグラフィの開発▼悪性神経膠腫治療薬「デリタクト注」の開発)▼経口抗がん剤「ティーエスワン」のホルモン受容体陽性・HER2陰性で再発高リスク乳がんにおける術後薬物療法の適応追加—などの成果が出ています。

がん研究の大きな流れ

がん研究10か年戦略の概要



上述のとおり「2023年度から第4期のがん対策推進基本計画が稼働」し、また2023年度は「がん研究10か年戦略の最終年度」にあたることから、有識者会議において「これまでのがん研究の成果を評価し、現状と課題を整理する」「今後10年間で取り組むべき研究の方向性を固める」こととなったものです。

厚労省健康局がん・疾病対策課の中谷祐貴子課長は、「今秋(2023年9月頃)を目途に有識者会議の意見をとりまとめる」べく、議論を進めてほしいと要望しています。

今後の方向策定に向けた議論の皮切りとなった4月12日の会合では、構成員間のフリートークが行われ、多様な意見が出ています。医療・医学分野はもちろん、関連する分野についても「技術革新」が目まぐるしいスピードで進んでいます。そうした最新技術について「基礎研究を進め、さらに臨床に実装していく」ことの重要性を説く意見が次のように数多く出ています。また研究を「効率的・効果的に進める」「個々の研究を統合し、大きな成果を上げる」ことの重要性を説く声も少なくありません。

▽この10年で日本のがん研究は大きく推進し、今後、さらに加速する。その中では「効率的に研究を進める」ことが非常に重要となり、人材育成やAIを活用した情報解析などにも取り組んでいく必要がある(中釜斉座長:国立がん研究センター理事長)

▽重粒子線治療が保険適用され、患者数も増えてきているが、さらに「小型化による一般病院への導入」などを進める必要がある。また放射性薬剤のさらなる推進、量子科学の診断・治療への応用をさらに図る必要がある(内堀幸夫構成員:量子科学技術研究開発機構量子生命・医学部門量子医科学研究所所長)

▽我が国ではAI・デジタル技術の利活用が遅れ、そこがボディブローのように効いてくる。将来の研究成果では諸外国の後塵を拝することを危惧している。また「がん医療・研究の集約化」が進められているが、例えば「地方では遺伝子パネル検査を行っても、最適な分子標的薬が手に入りにくい」という問題も生じている。「集約化」と「均てん化」のバランスを改めて考える必要もあるのではないか(中村祐輔構成員:医薬基盤・健康・栄養研究所理事長)

▽大学医学部・大学病院において「比較的小規模な研究」が進まないようになっていると感じている。例えば「既存薬剤の適応拡大」などのアイデアは大学医学部・大学病院に数多くあるが、臨床研究法がハードルになり、進みにくくなっている。例えば「適応外薬を評価療養制度(保険診療と保険外診療を併用できる仕組み)を用いて、より使用しやすくする」などの制度的改善なども検討していくべきであろう(土岐祐一郎構成員:日本癌治療学会理事長、大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学教授)

▽大きな成果を上げるためには、「小さな研究の統合」の視点が必要かつ重要である。そうした枠組みこそ、この有識者会議で検討していく必要がある(古関明彦構成員:理化学研究所生命医科学研究センター副センター長)

ただし、黒瀨巌構成員(日本医師会常任理事)は「AIを活用した診断・治療を進める必要があるが、その際には『AI診断等の精度向上』『誤診時の責任の明確化』『AI結果に従わない場合、AIを活用しない場合の医療従事者の責任』などもセットで考えていく必要がある。またAI診断・治療に関する医療従事者の教育も重要となる。患者の尊厳・意思を尊重したAI診断・治療を進める必要がある」とコメントしています。非常に重要な視点と言えます。

がん研究も「国民の健康の資する」という視点で進め、成果を公表することが重要

ところで患者・一般国民からすると「がん研究はどこまで進んでいるのか」が見えにくいとの思いもあります。

阿久津友紀構成員(北海道テレビ放送株式会社東京編成業務部長、SODANE編集長)や谷島雄一郎構成員(ダカラコソクリエイト発起人・世話人、カラクリLab.代表)は「患者目線では、がん研究は『ゆっくりと進んでいる』ように見える。第4期がん対策推進基本計画の目標にもあるように『誰も取り残さない』視点をがん研究でも重視してほしい」と要望しました。

この点については、医療サイド・研究者サイドからも、「がん研究の最終ゴール・成果物を『国民の健康に資する』(死亡率の低下、罹患率の低下など)という点に置けば、『薬剤の開発、保険適用』などを最終ゴールに据えるのでは十分とは言えない。患者の視点も重視し、予算獲得・配分などを行う必要がある(石岡千加史構成員:日本臨床腫瘍学会理事長、東北大学大学院医学系研究科臨床腫瘍学分野教授、東北大学病院腫瘍内科長)、「この10年間で基礎的な研究が大きく推進したが、『薬剤開発』『治療や診断への応用』などが国民の目に見えるようには必ずしもなっていないのではないか。今後は『基礎研究を臨床に実装するための『橋渡し研究』を強化する」必要がある(佐谷秀行構成員:日本癌学会理事長、藤田医科大学がん医療研究センター特命教授兼センター長)との意見が出ています。

上述のように、がん研究は「がんの予防・医療・共生」を下支えする基盤です。「研究」を目的するのではなく、例えば「がん罹患率の低下、がん死亡率の低下」などの最終ゴール・最終目的と達成するために「どのような研究を行うか」を考え、研究成果を臨床に実装していくことが非常に重要となります。

また、この点に関連し安川健司構成員(日本製薬工業協会副会長、アステラス製薬株式会社代表取締役社長)や山本章雄構成員(日本医療機器産業連合会副会長、富士フイルムヘルスケア株式会社代表取締役社長)は「ドラッグラグの解消、優れた医療機器の開発・上市に向けて『制度的な課題』も数多く存在する。その解消も検討視点として持つべきである」との考えを示しています。有識者会議の中で正面から議論するテーマではありませんが、「研究成果の臨床実装」においてハードルとなっている制度があれば、「その改善を検討せよ」と有識者会議から国に進言することも重要になってきそうです。

なお、従前は「5年計画のがん対策推進基本計画」と「10年計画のがん研究10か年戦略」とで歩調があっていました。しかし、がん対策推進基本計画が「6年計画」となった現在では「歩調が乱れてしまう」可能性もあります。このため、大井賢一構成員(がんサポートコミュニティ事務局長)は「がん研究についても『12年計画』として、がん対策推進基本計画と歩調を合わせる必要があるのではないか」との考えを示しています。



【GHCからのお知らせ】
約200超のがん診療連携拠点病院などが参加する CQI(Cancer Quality Initiative)研究会(代表世話人:望月泉:八幡平市病院事業管理者・岩手県立病院名誉院長)では、DPCデータをもと「がん医療の質向上」に向けた研究を行っており、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)がデータ分析等を担当しています。

本年(2023年)8月26日には、第16回研究会を開催(会場+web)。研究会では、「診療の質」と「経営の質」を向上するためのデータ分析方法を議論。前立腺がんなどがん種別に内視鏡手術支援ロボットを用いた手術動向分析などをベースに議論が行われます。

参加病院には、がん診療分析ツール(Cancer Dashboard)を無償提供。また当日は「がん拠点病院の働き方改革」に関する講演も行われます。是非、ご参加ください(詳細はこちら)。



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