Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 ミニウェビナー DPC委員会のありかたとは?

日本人でのゲノム解析から創製された新薬「タスルグラチニブ」、難治性の「胆道がん」治療薬として薬事承認を得る—国がん他

2024.10.24.(木)

日本人でのゲノム解析から創製された新薬「タスルグラチニブ」(エーザイ社)について、難治性の「胆道がん」治療薬として薬事承認を得た。今後も、ゲノム診断に基づく個別化医療・予後改善が一段と進むことが期待される—。

国立がん研究センター、日本医療研究開発機構(AMED)が10月23日に、こうした研究結果を公表しました(国がんのサイトはこちら)。

日本人症例のゲノム解析起点による治療薬承認で、胆道がんの個別化医療進展に期待

「胆道がん」は5年生存率が20%以下である予後不良な難治性がんです。年間の罹患者が2万2000人と希少がんであるため臨床研究の実施も難しく、新たな治療法の開発が強く望まれています。

これまでに、国立がん研究センターでは、日本人の胆道がんを対象とした大規模ゲノムシークエンス解析を行い5種類のFGFR2融合遺伝子を同定。併せて、2015年にはFGFR2融合遺伝子が胆道がんにおける重要ながんドライバー遺伝子(遺伝子に異常が起こることで、がんの発生や進展に寄与する遺伝子)であることを報告しました。

また、FGFR 融合遺伝子の診断法を確立し、423名の進行もしくは再発症例の日本人胆道がん患者うち7.4%(20症例/272症例)では、FGFR2遺伝子において染色体の断裂や再結合といった「染色体レベルでの大きな構造異常」が生じていることを検出しています。

そうした中で、エーザイ社が開発している経口投与可能なFGFRキナーゼ阻害剤「タスルグラチニブ」が、FGFR遺伝子異常を有するがん患者へ奏功するのではないかと期待され、上述の5種類のFGFR2 融合遺伝子に対する阻害効果が確認されました。その結果を踏まえて、本年(2024年)9月に「がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん」への効能・効果について、薬事承認を受けています(近く保険適用される予定)。

国がんでは、▼「タスルグラチニブ」の薬事承認によって、FGFR2融合遺伝子を有する胆道がんに対する有効な治療薬がさらに増え、ゲノム診断に基づく個別化医療・予後改善が一段と進む▼とくに「タスルグラチニブ」は、従来のFGFR阻害剤とは異なる遺伝子診断法としてFISH法を用いており、遺伝子パネル検査では見落とされてしまうような染色体構造異常を持った症例にも適応できる可能性がある—と期待を寄せています。

今後も、優れた「がん治療法」の開発が進むことに期待が集まります。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

【関連記事】

高精細リン酸化シグナル解析で「胃がんの治療標的同定」「治療経過に伴う胃がんの悪性化実態把握」が可能に—国がん他
高齢の大腸がん患者、3剤併用療法(FU+OX+BEV)でなく「2剤併用療法(FU+BEV)」を推奨—国がん他
早期肺腺がんの術後再発を予測するバイオマーカーを同定、切除した微量の検体をもとに迅速に検出可能—国がん他
食道がん・胃がん患者へ「免疫チェックポイント阻害剤投与」と「腸内細菌叢移植」とを併用する臨床試験を実施—国がん他
唾液腺がんへの新たな「抗アンドロゲン療法」の有効性を検証、奏効例と治療抵抗性例との鑑別に期待—国がん他
リキッドバイオプシーでも、さまざまな種類のがんで「T-DXd」効果が期待できる患者を抽出できる可能性—国がん・愛知がん
酵素「PSAT1」が「がんの悪性化に関わるEV」の分泌を抑制、新たながん治療戦略に期待—国がん・東京医大
薬物療法後にRAS遺伝子変異が野生型に変化した大腸がん、新たな治療選択肢の可能性を発見―国がん・がん研
個々の患者のバイオマーカーに適合する標的治療(がん個別化治療)により、患者の生存期間延長などの効果が得られる―国がん
切除可能な食道がん、現在の「術前CF療法」よりも、生存期間延長が期待できる「術前DCF療法」が新たな標準治療へ―国がん・JCOG
テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)が「がん細胞に有害なゲノム異常を排除」してがん細胞が増殖、この機能を阻害すると「がん細胞が死滅」―国がん
「トラスツズマブ デルクステカン」(エンハーツ点滴静注用)の奏功が期待できる胃がん患者を特定できる可能性―国がん
腎臓がんの多くを占める「淡明細胞型腎細胞がん」で日本人症例に特有の遺伝子変異を発見、治療法・予防法開発につながると期待―国がん
「予後不良なタイプの白血病」発症メカニズムの一端が明らかに、今後の分子標的薬開発につながると期待―国がん
肺がんにおいて、PD-L1タンパク質の「腫瘍内不均一性」が高い場合、術後の再発やがんによる死亡が多い―国がん
受動喫煙は「能動喫煙と異なる変異」を誘発、「受動喫煙の回避の重要性」を再認識―国がん
シングルポートのダビンチSPの活用で、「より侵襲が少なく整容性を向上させたロボット手術」実施を推進―国がん
「感染」「能動喫煙」によるがんの医療費・経済的損失が大きく、HPVワクチン接種勧奨、ピロリ除菌、たばこ対策強化など進めよ―国がん

ステージIで早期発見・治療すれば、乳・前立腺がんで9割、胃・大腸がんで8割、膵臓がんでも4人1人が10年以上生存―国がん
2021年、がん新規登録数はコロナ禍前水準に戻りつつある!ただし胃がんは回復せず背景分析が待たれる―国がん
胆道がんの手術後標準治療は「S―1補助化学療法」とすべき、有害事象少なく、3年生存率も高い―国がん・JCOG
血液検体を用いた遺伝子検査(リキッドバイオプシー)、大腸がんの「再発リスク」「抗がん剤治療の要否」評価に有用―国がん・九大
千葉県の国がん東病院が、山形県鶴岡市の荘内病院における腹腔鏡下S状結腸切除術をオンラインでリアルタイム支援―国がん
抗がん剤治療における薬剤耐性の克服には「原因となる融合遺伝子を検出し、効果的な薬剤使用を保険適用する」ことが必要—国がん
2cm以上でも転移リスクの少ない早期大腸がんでは、「内視鏡的粘膜下層剥離術」(ESD)を治療の第1選択に—国がん
開発中の「血液がん用の遺伝子パネル検査」、診断や予後の予測でとくに有用性が高い—国がん
BRCA1/2遺伝子変異、乳・卵巣・膵・前立腺がん以外に、胆道・食道・胃がん発症リスク上昇に関連―国がん等
乳がんの生存率、ステージゼロは5年・10年とも100%だがステージIVは38.7%・19.4%に低下、早期発見が重要―国がん
全がんで見ると、10生存率は59.4%、5年生存率は67.3%、3年生存率は73.6%―国がん
2020年のコロナ受診控えで「がん発見」が大幅減、胃がんでは男性11.3%、女性12.5%も減少―国がん
「オンライン手術支援」の医学的有用性確認、外科医偏在問題の解消に新たな糸口―国がん