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新専門医制度、医師偏在や総合診療専門医などの課題は解決されるのか―全自病・邉見会長

2017.3.16.(木)

 新たな専門医制度について、領域ごとの「運用細則」が近く策定されるが、地域・診療科別の医師偏在の解消などができるのだろうか。また病院における総合診療医などの養成がなされるのだろうか―。

 全国自治体病院団体協議会が15日に開催した定例記者会見で、執行部からはこのような懸念が示されました。

全自病の邉見公雄会長(赤穂市民病院名誉院長・兵庫県)

全自病の邉見公雄会長(赤穂市民病院名誉院長・兵庫県)

全自病が専門医機構の社員となり、病院の実態にあった制度構築をしたい

 新専門医制度については、当初、2017年度からの養成スタート予定でしたが、「地域・診療科における偏在が助長される可能性が高い」との医療現場の指摘を受け、一斉スタートを1年間延期。その間に、様々な課題を解決することとなっています。

 昨年(2016年)末には、新専門医制度の根本法にあたる整備指針(専門医新整備指針)を決定。現在は領域ごとの「運用細則」の策定に向けた議論が進められており、早ければ17日の理事会で了承される見込みです(関連記事はこちらこちらこちら)。

 この新専門医制度に関連して邉見公雄会長(赤穂市民病院名誉院長・兵庫県)は、「今年の初期臨床研修のマッチング状況を見ると、すでに研修医は2年先を見通し、大学病院や地域の基幹病院に集中している」と指摘。医師偏在が進むのではないかとの懸念を示しています。

 また末永裕之参与(小牧市民病院事業管理者・愛知県)は、「1年間立ち止まったが、何が見直されたのか疑問を感じる。学会主導の懸念も払拭されていない。総合診療医についても、どういった医師をつくるのかは未だに明確になっておらず、我々が求めている『病院総合医』ができるのだろうかという疑問もある。あと1年で養成がスタートするが、こういたさまざまな問題を解決できるのだろうか」と疑問を投げかけています。

全自病の末永裕之参与(小牧市民病院事業管理者・愛知県)

全自病の末永裕之参与(小牧市民病院事業管理者・愛知県)

 こうした状況を踏まえて邉見会長は「2017年度には全自病が日本専門医機構の社員となり、機構の各委員会に全自病幹部が出席し、病院の実態に合った専門医制度構築を行いたい」との意欲も述べています。

ビジョン検討会の働き方調査結果、実態を表すものになりえないのでは

 ところで、厚生労働省の社会保障審議会・医療部会や、その下部組織にあたる医療従事者の需給に関する検討会などが、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の結論待ちで、動いていない点について邉見会長は、「塩漬け」「風化」「化石化」などと揶揄し、こうした事態を招いている塩崎恭久厚生労働大臣の姿勢を強く批判しました。

 またビジョン検討会では大規模な働き方調査を実施しており、その結果も近く公表される見込みですが、「調査項目も画一的で、医療現場の実態を表すものとはなりえない。結果が一人歩きして、制度が決まるので不幸になってしまう」との危機感を訴えています(関連記事はこちらこちら)。

 

 なお、昨今の医師による不祥事に関連して中島豊爾副会長(岡山県精神科医療センター理事長兼名誉院長、岡山県)と邉見会長は、医学部において「人間としての基本的な教育を改めて行う必要がある」と強調しています。

全自病の中島豊爾副会長(岡山県精神科医療センター理事長兼名誉院長、岡山県)

全自病の中島豊爾副会長(岡山県精神科医療センター理事長兼名誉院長、岡山県)

 
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