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看護職の夜勤、月に何回・何時間までが妥当なのか調査研究を進めよ―日看協

2019.5.31.(金)

看護職員の夜勤・交代制勤務について、科学的根拠に基づいた改善方策をとる必要がある。また、時間外労働の短縮に努める「200床未満」の病院を助成の対象とすべきである―。

 日本看護協会は5月28日に、厚生労働省労働基準局の坂口卓局長に宛てて、こういった内容を盛り込んだ「2020年度予算・政策に関する要望書」を提出しました(日看協のサイトはこちら)。

時間外労働の短縮に努める医療機関への助成、対象を拡大せよ

 今般の日看協の要望は、(1)夜勤・交代制勤務者の負担軽減にむけた取り組み推進(2)事業所等で働く保健師の法的位置づけの確保と研修体制の整備―の2点です。ここでは前者「看護職の夜勤・交代制勤務」に焦点を合わせましょう。

 
 看護職には、患者の安全を確保するために「夜勤」や「交代制勤務」が求められますが、これは心身への大きな負荷となります。

翻って看護師の年齢構成を見ると、厚労省の調査によれば、▼平均年齢42.9歳▼40歳代以上女性の割合が高い―ことが分かります。
日看協の2020年度予算要望(労働基準局)1 190528
 
一般に、年齢上昇とともに「夜勤」の負担が重くなることから、看護職の夜勤負担について、これを軽減する仕組み・ルールが必要となってきます。しかし、看護師の夜勤時間を制限するルールは、現在、▼人事院による1965年のいわゆる「ニッパチ」判定(1人夜勤の禁止、夜勤は月平均8日以内など)▼「看護師等の人材確保の促進に関する法律」第3条に基づく基本指針(月8日以内の夜勤体制構築に向けて積極的に努力する必要がある)―しかないのが実情です(診療報酬の入院基本料を届け出るにあたり、「月夜勤時間の平均が72時間以下であること」との基準があり、これが重要な歯止めとなっている)。

また夜勤については、▼月に何回までが望ましいのか▼1か月当たりの総夜勤時間数はどの程度までが望ましいのか▼夜勤後の休息時間はどの程度必要なのか▼年齢の上昇にともなって、夜勤の回数や時間はどう軽減していくべきかなのか―という科学的根拠もありません。

こうした状況の下での夜勤・交代制勤務の継続は、看護職の心身の健康を蝕み、医療安全にも悪影響を及ぼしかねません。そこで日看協は、「夜勤・交代制勤務に伴う負担の軽減のための、効果的な改善方策に向けた調査研究」を行い、それに基づく対策をとるよう求めています。まず「エビデンスを構築せよ」との要望です。

 
ところで、看護職をはじめとするメディカルスタッフには、今年(2019年)4月から新たな時間外労働上限規制(▼原則として月45時間・年360時間以下▼臨時的な特別の事情がある場合には年720時間以内・月100時間未満▼原則「月45時間」超過は年6月まで)が導入されています(勤務医については2024年4月から別の規制が導入される)。

また、看護職の夜勤・交代制勤務は上述のように「医療安全の確保」を目的としたものです。このため、医療安全を確保しながら、「1看護師当たりの夜勤負担」を軽減しようと思えば、例えば「人材の確保」などが必要となってきます。これは事業主、つまり医療機関の院長にとっては「コスト(人件費)の増加」を意味します。

このため厚労省は、時間外労働の短縮に向けた事業者に対する「補助」(時間外労働等改善助成金【時間外労働上限設定コース】)を行っています。具体的には、▼労務管理担当者への研修▼労働者への研修、周知・啓発▼人材確保に向けた取り組み―などを行う事業所に対し、取り組み内容等に応じて数十万円から数百万円(最高200万円)が助成されます(厚労省のサイトはこちら)。

医療機関もこの助成の対象ですが、そもそも「労務管理等を適切に行えてこなかった中小の事業所」を対象とした助成であり、医療機関については「常時雇用する労働者数が100人以下」のところに限定されてしまいます。これは病床規模に換算すれば、概ね「100床未満」となり、病院の4割弱しか対象になりません。

この点、医療機関(病院)は労働集約型であり、一般の企業に比べ「規模に比して従業者数が多い」と言えます。そこで日看協は、対象となる医療機関を「常時雇用する労働者数が300人以下」に拡大するよう提案しています。この提案が実現すれば、概ね「200床未満の病院」までが助成対象となり、全病院の8割強がカバーされる計算になります。
日看協の2020年度予算要望(労働基準局)2 190528

 
  
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