急性期一般1病棟で、5対1・6対1看護配置を行う場合の加算を新設せよ―日看協
2019.5.21.(火)
重症患者により適切な看護を行うために、多くの高度急性期病棟では5対1・6対1などの看護配置の加配を行っている。急性期一般病棟入院料1を届け出ている病棟において、看護配置を5対1・6対1に手厚くすることを「加算」で評価すべきである―。
日本看護協会は5月14日に、厚生労働省保険局の樽見英樹局長に宛てて、こういった内容を盛り込んだ2020年度診療報酬改定に関する要望書を提出しました(日看協のサイトはこちら)。
急性期一般病棟1の65%では、5対1や6対1などの手厚い看護配置をすでに実施
今般の日看協の要望は、大きく次の3項目です。
(1)地域包括ケアシステムの実現に向け、医療機能の分化・連携を進めるための「高度急性期入院医療における看護職員配置の充実」や、「入院医療から在宅医療へのシフト」、「切れ目のない看護が実現できる体制整備のための評価拡充」
(2)地域によって人口構成や医療資源確保状況等が大きく異なる中で、どの地域においても安心して在宅で療養生活を送るための、訪問看護提供体制の充実や効率的な人材活用、運用面での課題解決等に関する評価・支援
(3)働き方改革の実現に向けて、看護職が働き続けられる環境の整備および効果的・効率的な医療・看護の提供に向けた取り組みの推進
まず(1)のうち「高度急性期入院医療における看護職員配置の充実」では、基準を上回って看護職員を多く配置し高度急性期入院医療を提供している病棟(5対1や6対1など)に対する「加算」の新設を要望しています。
2018年度の診療報酬改定では、従前の7対1・10対1一般病棟入院基本料を、看護配置(基本部分)と重症患者受け入れ割合(実績評価部分)などを組み合わせた7種類の【急性期一般病棟入院基本料】(急性期一般病棟入院料1-7)に組み替えるなどのドラスティックな報酬体系見直しが行われました(関連記事はこちら)。
より重症度の高い患者に対しては、より看護配置を手厚くするなどした【特定集中治療室管理料】(ICU、2対1看護配置)や【ハイケアユニット入院医療管理料】(HCU、4対1看護配置)などのユニットが設けられています。この点、日看協では「高度急性期入院医療を提供する病院においてはICUやHCUだけでなく、一般病棟でも短期間で集中的な治療や看護を必要とする患者が多く入院している」と指摘。
さらに、急性期一般病棟入院料1(旧7対1)や7対1特定機能病院入院基本料を算定している病院では、▼10%が5対1超▼20%が5対1から6対1▼35%が6対1から7対1―という具合に、また重症度、医療・看護必要度を満たす患者割合が40%以上の病棟では、▼15%が5対1超▼22%が5対1から6対1▼40%が6対1から7対1―という具合に、基準を上回る看護配置を行っている状況を紹介。
こうした加配をすれば当然、人件費が嵩むため、「5対1や6対1などの看護配置をする病棟への加算」を求めているのです。もっとも、これがために他病棟の看護配置が手薄になれば本末転倒です。そこで、あわせて「他の病棟の看護体制に支障が出ないよう、加算を算定しない病棟でも7対1以上の看護配置が担保されるような配慮が必要」とも指摘しています。つまり、例えば「7対1の複数病棟の一部を5対1とし、残りを10対1とする」ことなどは認めず、「7対1を維持したうえで、一部病棟への加配をした場合」のみを加算の対象とするイメージです。
このほか「より手厚い看護」の実現に向けて、▼看護職員夜間配置加算(10対1)の新設(すでに医療現場では夜間の手厚い看護職員配置を実施)▼夜間休日救急搬送医学管理料における救急搬送看護体制加算において、看護師を複数名配置している場合の評価―も求めています。
一方、(1)のうちの「入院医療から在宅医療へのシフト」に関しては、まず地域医療支援病院には「訪問看護人材の育成」機能も持たせる必要があるとし、加算(地域医療支援病院入院診療加算)の算定要件に、▼訪問看護ステーションの併設等による訪問看護の提供▼地域の訪問看護事業所への出向等による看護人材支援―を追加してはどうか、と提案しています。
ほか、▼外来で看護職が「在宅療養上の必要な指導」を行うことを評価する【在宅療養指導料】の対象に「生活習慣病患者等」を加える▼【入退院支援加算3】(小児の入退院支援)の施設基準において、「小児在宅移行に係る研修を受講している看護師の配置」を追加する―よう求めています。
さらに(1)のうち「切れ目のない看護」の実現に向けて、▼訪問看護にあたって、医療機関が専門研修を受けた看護師をがん患者宅等に同行訪問させ、緩和ケアなどの必要な指導を行うことを評価する【在宅患者訪問看護・指導料3」の対象疾患を拡大し、認知症・糖尿病・摂食嚥下障害へのケアについても、専門性の高い看護師の同一日訪問を評価する(訪問看護ステーション側から専門性の高い看護職の同行を求める声が高い)▼医療資源の少ない地域における訪問看護ステーションが他地域のステーションや医療機関と連携した場合にも【24時間対応体制加算】の算定を可能とする―ことを要望しています。
質の高い看護業務を評価するとともに、看護職の勤務環境改善を実現せよ
また(2)では、▼「誤嚥予防」「口から食べることの支援」のため、高齢・小児・難病などの入院患者に対し、摂食嚥下の専門チーム(医師、摂食・嚥下障害看護認定看護師、言語聴覚士等)が病棟看護職等と連携して適切な検査・ケアやリハビリテーションを行うことを評価する▼感染管理認定看護師等による在宅領域における感染対策を強化する▼妊娠糖尿病を有する妊婦について、産科(医師および助産師等)と内科等が連携した医療提供を評価する(【ハイリスク妊産婦連携指導料】における妊娠糖尿病モデルの創設)▼「認知症看護に係る適切な研修」(600時間以上)を修了した看護師を専任配置する病棟を、【認知症ケア加算2】よりも一段高く評価する―ことを要望。
さらに(3)では、▼入院基本料における「月平均夜勤時間72時間以下」要件を堅持し、すべての特定定入院料への「月平均夜勤時間72時間以下」要件を追加する▼【回復期リハビリテーション病棟入院料】においても、【看護職員夜間配置加算】を新設する▼【総合入院体制加算】の要件に、看護職の「勤務間インターバル確保」実施を盛り込む▼訪問看護ステーションにおいて、事務職員配置・ICT活用により事務の効率化体制を整えた場合の評価(訪問看護事務作業補助体制加算)を行う―よう求めています。
より手厚く質の高い看護を実現するとともに、看護職の勤務環境改善を求める要望と言えるでしょう。
【関連記事】
医療ニーズの高い要介護者のケアマネジメント、訪問看護師等がケアマネ支援を―日看協
訪問看護の裾野広げる「機能強化型3訪問看護ステーション」、中小民間病院で設置意向が強い—日看協
高度急性期から慢性期のいずれの機能でも、看護人材の育成・確保が大きな課題—日看協
72時間超の夜勤する看護師が多い病院では、離職率も高い—日看協
7割超の病院で看護部長が病院の経営方針策定に参画、500床以上では9割弱―日看協
【2018年度診療報酬改定答申・速報6】がん治療と仕事の両立目指し、治療医と産業医の連携を診療報酬で評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報5】在総管と施設総管、通院困難患者への医学管理を上乗せ評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報4】医療従事者の負担軽減に向け、医師事務作業補助体制加算を50点引き上げ
【2018年度診療報酬改定答申・速報3】かかりつけ機能持つ医療機関、初診時に80点を加算
【2018年度診療報酬改定答申・速報2】入院サポートセンター等による支援、200点の【入院時支援加算】で評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報1】7対1と10対1の中間の入院料、1561点と1491点に設定
ロボット支援手術を、胃がんや肺がん、食道がんなど12術式にも拡大―中医協総会 第384回(1)
2018年度改定、入院料の再編・統合、かかりつけ機能の評価拡充などが柱に―中医協総会 第382回(3)
かかりつけ機能持つ診療所など、初診料の評価アップへ―中医協総会 第382回(2)
7対1・10対1を再編し7つの急性期入院料を新設、重症患者割合が争点―中医協総会 第382回(1)
【2018年度診療報酬改定総点検3】複数医療機関による訪問診療をどこまで認めるべきか
【2018年度診療報酬改定総点検2】ICTの利活用を推進、オンライン診察等の要件はどうなる
【2018年度診療報酬改定総点検1】入院料を再編・統合、診療実績による段階的評価を導入
2018年度改定、年明けからの個別協議に向け各側がスタンスを表明―中医協総会
麻酔科医の術前術後管理の重要性を勘案し、麻酔管理料の評価充実へ―中医協総会 第379回
「専従」要件の弾力運用、非常勤リハビリスタッフの「常勤換算」を認める―中医協総会 第378回
かかりつけ薬剤師の推進目指すが、「かかりつけ」を名乗ることへの批判も―中医協総会 第377回(5)
介護施設を訪問して入所者を看取った場合の医療機関の評価を拡充―中医協総会 第377回(4)
腹膜透析や腎移植、デジタル画像での病理診断などを診療報酬で推進―中医協総会 第377回(3)
療養病棟入院料も再編、20対1看護、医療区分2・3割合50%がベースに―中医協総会 第377回(2)
「入院前」からの外来で行う退院支援、診療報酬で評価―中医協総会 第377回(1)
薬剤9.1%、材料7.0%の価格乖離、診療報酬本体プラス改定も―中医協総会 第376回(3)
退院支援加算2でも、地域連携診療計画加算の算定を可能に―中医協総会 第376回(2)
7対1から療養までの入院料を再編・統合、2018年度は歴史的大改定―中医協総会 第376回(1)
抗菌剤の適正使用推進、地域包括診療料などの算定促進を目指す—第375回 中医協総会(2)
退院支援加算1、「ICT活用した面会」などを弾力的に認める—第375回 中医協総会(1)
安定冠動脈疾患へのPCI、FFR測定などで「機能的虚血」確認を算定要件に—中医協総会374回(1)
地域包括ケア病棟の評価を2分、救命救急1・3でも看護必要度を測定—中医協総会(2)
7対1・10対1基本料を再編・統合し、新たな入院基本料を創設へ―中医協総会(1)
内科などの有床診療所、より柔軟に介護サービス提供可能に―中医協総会(2)
療養病棟入院基本料、2018年度改定で「療養1」に一本化—中医協総会(1)
訪問看護ステーション、さらなる機能強化に向けた報酬見直しを—中医協総会(2)
病院に併設する訪問看護ステーション、手厚く評価をすべきか—中医協総会(1)
診療報酬でも、「同一・隣接建物に住む患者」への訪問で減算などを検討—中医協総会(1)
紹介状なしに外来受診した場合の特別負担、500床未満の病院にも拡大へ—中医協総会(3)
非常勤医師を組み合わせて「常勤」とみなす仕組みを拡大へ—中医協総会(2)
2016年度改定後に一般病院の損益比率は▲4.2%、過去3番目に悪い—中医協総会(1)
保湿剤のヒルドイド、一部に「極めて大量に処方される」ケースも―中医協総会(3)
生活習慣病管理料、エビデンスに基づく診療支援の促進を目指した見直し―中医協総会(2)
ICT機器用いた遠隔診察、対象疾患や要件を絞って慎重に導入を―中医協総会(1)
臓器移植後の長期入院、患者からの「入院料の15%」実費徴収禁止の対象に―中医協総会
要介護者への維持期リハ、介護保険への完全移行「1年延期」へ―中医協総会(2)
回復期リハ病棟のアウトカム評価、次期改定で厳格化すべきか—中医協総会(1)
統合失調症治療薬クロザピン使用促進に向け、精神療養の包括範囲を見直し—中医協総会(2)
向精神薬の処方制限を2018年度改定で強化、薬剤種類数に加え日数も制限へ—中医協総会(1)
医療安全管理部門への「専従医師」配置を診療報酬で評価すべきか―中医協総会(2)
医療体制の体制強化で守れる命がある、妊婦への外来医療など評価充実へ―中医協総会(1)
抗菌薬適正使用に向けた取り組みや医療用麻薬の投与日数をどう考えるか—中医協総会(2)
小児入院医療管理料、がん拠点病院加算と緩和ケア診療加算を出来高評価に—中医協総会
レセプトへの郵便番号記載、症状詳記添付の廃止、Kコードの大幅見直しなど検討—中医協総会
認知症治療病棟でのBPSD対策や入退院支援の在り方などを検討—中医協総会
2018年度から段階的に診療報酬請求事務の効率化や、診療データ活用などを進める—中医協総会
地域包括ケア病棟、「病院の規模」や「7対1の有無」などと関連させた議論に—中医協総会(1)
医療療養2、介護医療院などへの移行に必要な「経過措置」を検討—中医協総会
オンラインでのサービス担当者会議などを可能にし、医療・介護連携の推進を—中医協・介護給付費分科会の意見交換
要介護・維持期リハビリ、介護保険への移行を促すため、診療報酬での評価やめるべきか—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
複数医療機関による訪問診療を認めるべきか、患者の状態に応じた在宅医療の報酬をどう考えるか—中医協(1)
かかりつけ薬剤師指導料、対象患者は高齢者や多剤処方患者に絞るべきか—中医協総会(2)
生活習慣病の重症化予防、かかりつけ医と専門医療機関・保険者と医療機関の連携を評価―中医協総会(1)
訪問看護、2018年度同時改定でも事業規模拡大などが論点に―中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
医療機関での看取り前の、関係者間の情報共有などを報酬で評価できないか―中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
7対1・10対1入院基本料、看護配置だけでなくパフォーマンスも評価する報酬体系に―中医協総会(1)
主治医機能に加え、日常生活から在宅までを診る「かかりつけ医機能」を評価へ―中医協総会(1)
2018年度診療報酬改定に向け、臨床現場でのICTやAIの活用をどう考えるか―中医協総会(1)
2018年度改定に向け入院医療の議論も始まる、機能分化に資する入院医療の評価を検討―中医協総会(1)
2018年度改定に向けた議論早くも始まる、第1弾は在宅医療の総論―中医協総会