2021年度介護報酬改定、「ショートステイの長期利用是正」「医療機関による医療ショート実施推進」など検討―社保審・介護給付費分科会(2)
2020.7.21.(火)
短期入所生活介護(ショートステイ)について、一部だが「長期利用」が目立つ。介護報酬上の「長期利用における減算」規定の見直しも含めて、是正策を検討していく―。
短期入所療養介護(医療ショート)について、医療機関での実施が極めて低調であり、推進方策を検討していく―。
7月20日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、こういった議論も行われています。
31日超えるショートステイの長期利用が8.6%あり、長期利用者が5割を超える施設も
お伝えしているとおり、介護給付費分科会では、2021年度に予定される次期介護報酬改定に向けて個別サービスに関する議論に入っています。7月20日には、(1)通所介護、認知症対応型通所介護(2)療養通所介護(3)通所リハビリテーション(4)短期入所生活介護(5)短期入所療養介護(6)福祉用具・住宅改修介護―という6つのサービスについて課題等の整理を行い、本稿では、(4)以降の短期入所系サービス等に焦点を合わせます((1)-(3)の通所系サービスについては別稿でお伝え済)。
短期入所サービス(ショートステイ)は、在宅生活を送る要介護高齢者等の状態が悪化した場合に「一時的・短期間、介護保険施設に入所」するものです。ほかに家族介護者のレスパイト(身体的・精神的負担の軽減)機能も併せ持っており、いわゆる在宅限界を高めるために欠かせないサービスと言えます。
特別養護老人ホーム(本体や併設施設)や単独の短期入所施設で実施される「短期入所生活介護」(ショートステイ)と、介護老人保健施設や医療機関(病院・診療所)、介護医療院で実施される「短期入所療養介護」(医療ショート)とがあり、後者は医療ニーズの高い要介護者等への対応を得意としています。
現状や課題を眺めてみると、前者の短期入所生活介護(ショートステイ)では、▼2018年度の前回介護報酬改定後に経営が悪化している▼ショートであるにもかかわらず、一部に「長期利用」が目立つ▼外部のリハビリテーション専門スタッフと連携する【生活機能向上連携加算】について、通所介護と同じく「外部からの助言」のみの評価がなされていない—といった点が厚労省老健局振興課の尾崎守正課長から報告されました。
とりわけ「ショートステイであるのに、長期利用の実態がある」ところが、2021年度の次期改定に向けた大きな論点となりそうです。
ショートステイの連続利用日数を見ると、▼日帰り:0.9%▼2-3日:41.5%▼4-7日:31.6%▼8-14日:10.4%▼15-30日:7.0%▼31日以上:8.6%—となっており、大多数は「名称通り短期の入所」となっていますが、一部には「31日以上の長期入所」があることがわかります。また、施設の中には「31日以上の連続利用者が50%を超える」ところも一部あります。
長期入所のほとんどは「特別養護老人ホーム入所までの待機場所」となっていますが、「好ましい」とは言えません。
この点、ショートステイの報酬を見ると、入所から30日目までは、利用者の状態把握や介護の手間が重くなる(利用者が慣れるまで、頻回の介助等が必要となる)ことなどを考慮し、「初期加算」相当分を考慮した単位数が設定され、31日を超える長期利用では、この「初期加算」相当分が減算されます。しかし、どれほど長期になっても「減算が大きくなる」(単位数を漸減していく)ことはないのです。尾崎振興課長は「長期入所の是正に向けて、これらの仕組みをどう考えていくか」という論点を提示しています。江澤和彦委員(日本医師会常任理事)も「ショートステイの本来の理念に立ち返るべき」との考え強調しました。
長期入所をばっさりと切っていくには、▼31日を超える入所について減算幅を大きくする▼より長期の入所について減算幅を段階的に大きくしていく(逓減制の導入)―などのペナルティが効果的と思われます。ただし、その際には入所者・家族への影響も十分に考慮する必要があります。また、経年的に「ショートステイの長期利用が増えている」状況が見られるのであれば、特別養護老人ホームや居住系施設等の整備が不足している可能性も考えられ、そうした面での手当ても必要となってきます(単に「短期で退所してほしい。退所後は関知しない」では済まされない)。伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)は「長期利用の経年比較も行うべき」と要請しています。
関連して小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会理事)は、「質の高いショートステイサービスを確保するために、在宅生活の情報を把握したり、在宅時に利用していた介護サービス事業所や医療機関との連携が必須であろう。また入所中にかかりつけ医に相談する場面も、今後、増加していくと考えられ、これらが円滑に進むような仕組みを検討すべき」と提案しています。
医療ショート、介護老健施設では8割超が実施するが、有床診では1%強にとどまる
一方、短期入所療養介護(医療ショート)では、医療的ケアの充実した介護老健施設や介護医療院、医療機関で実施されることもあり▼脳血管疾患による要介護者▼認知症のある要介護者—の利用が多くなっています。
高齢化の進展とともに医療ショートのニーズは高まっていると考えられますが、▼事業所数は横ばい▼利用者数は減少傾向—という状況です。
こうした点も踏まえて厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は、医療ショートの課題として(1)医療機関での医療ショート実施が芳しくない(2)緊急ショートでは「7日以内」の利用しか認められていない—点を掲げました。
(1)は介護老人保健施設では8割超、介護医療院では3割近くが医療ショートを実施しているにもかかわらず、療養病床を有する病院では3%程度、有床診療所では1%強しか医療ショート実施がなされていないという問題です。
地域によっては医療・介護資源が限られ、有床診療所が医療・介護提供体制の要となっているところもあり、こうした地域では「医療機関による医療ショート実施」が重要な論点となってきます。今後、その理由・背景等を詳しく分析したうえで「医療機関における医療ショートの実施推進」策を練っていくことになります。
また(2)は、短期入所生活介護(ショートステイ)や小規模多機能型居宅介護、看護小規模型居宅介護においては「利用者の家族が傷病に合うなどやむを得ない場合には、14日までの緊急ショートが可能」とされていますが、医療ショートでは「7日以内」に限定されている問題です。
こうした状況・制度が「医療ショートは使い勝手が良くない→利用を控える」という状況に結びついいている可能性もあり、今後、改善方策が検討されていきます。
ところで、新型コロナウイルス等への感染防止を十分に行っている通所系サービス・短期入所サービスでは、高い介護報酬を算定できる臨時特例が認められています(通所系サービスでは、利用者の同意をもとに、一部を2段階上の高い報酬として算定することができる、関連記事はこちらとこちら)。
この点、「利用者負担につながる」「事業所から打診された場合、利用者側は断れない」などの批判が出ています(関連記事はこちら)。委員からは「利用者負担(一部負担)には臨時特例を反映させないこととしてはどうか」などの提案も出ていますが、尾崎振興課長は「現場の状況を見ながら、対応策を検討していきたい」とコメントするにとどめています。
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