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介護職員の処遇改善状況や処遇改善加算の取得状況など調査、コロナ感染症による給与減など生じているか?―介護事業経営調査委員会

2021.6.29.(火)

本年度(2021年度)にも「介護従事者処遇状況等調査」を行い、介護従事者の給与や、介護職員処遇改善加算・特定処遇改善加算の届け出状況、給与引き上げ状況、職場環境改善状況などを調べる―。

6月28日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会の「介護事業経営調査委員会」で、こういった議論が行われました。

調査方針に異論は出ていませんが、「居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)を調査対象から除外するか」「新型コロナウイルス感染症の影響を把握するか」という点で委員から意見が出ています。厚生労働省および田中滋委員長(埼玉県立大学理事長)で修正すべきかを協議し、その後、親組織である介護給付費分科会に報告されます。

介護従事者の処遇改善状況、処遇改善に係る加算の取得状況などを調査

我が国人口のボリュームゾーンとなっている、いわゆる団塊の世代が2022年度から75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が75歳以上に到達します。また2025年度から2040年度にかけて高齢者の増加ペースそのものは鈍化するものの、現役世代人口が急速に減少していくことが分かっています。こうした「少子高齢化」の進行により、今後、介護保険制度の基板が非常に脆くなっていきます。

介護保険制度では、保険財政ももちろんですが、とりわけ「介護提供体制の確保」、すなわち「介護人材の確保・定着」が最重要テーマの1つとなっています。このため厚労省は▼介護職員処遇改善加算(2012年度改定で、介護職員処遇改善交付金を受けて創設され、その後、順次拡充)▼特定処遇改善加算(2019年度改定で創設、主に勤続年数の長い介護福祉士の処遇改善を目指す)―という2つの加算を設け、「賃金・給与の引き上げ」「賃金・給与以外の処遇改善」「職場環境の改善」を狙っています。

今般の2021年度介護報酬改定では、特定処遇改善について▼職場環境要件の実態を踏まえた見直し▼2対1:0.5ルールを柔軟化する―、介護職員処遇改善加算について加算(IV)(V)を2021年度に廃止する、という見直しを行い、「さらなる処遇改善」が期待されます。



こうした処遇改善については、「実施すればよい」というわけにはいきません。効果を検証し、課題があれば改善を継続していくことが重要です。

このため、▼介護報酬改定の年度に処遇状況調査を行う(いわば定期調査)▼必要に応じて処遇状況調査を行う(いわば臨時調査)—こととなっています。本年度(2021年度)には介護報酬改定が行われたため、前者の定期調査が実施されます。

調査の大枠は次のとおりで、▼2018年度の前回定期調査2020年度の臨時調査(特定処遇改善加算が2019年度の消費税改定で創設されたことを受けたもの)—に倣っています。

(1)調査対象(20分の1から4分の1の抽出)
介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院、訪問介護事業所、通所介護事業所(地域密着型含む)、通所リハビリ事業所、特定施設入居者生活介護事業所、小規模多機能型居宅介護事業所、認知症対応型共同生活介護事業所、および当該施設・事業 所に在籍する介護従事者等(2020年度調査に倣う)

(2)調査項目
▽施設・事業所に対して
→給与等の状況、介護職員処遇改善加算の届け出状況、介護職員等特定処遇改善加算の届け出状況、給与等の引き上げ以外の処遇改善状況など
▽従業者(介護職員)に対して
→性別、年齢、勤続年数、勤務形態、介護職員等特定処遇改善加算の状況、労働時間、資格の取得状況、兼務の状況、基本給の額、手当の額、一時金の額など

(3)調査・公表時期
今年(2021年)10月に「今年(2021年)4-9月の状況」を調査し、来年(2022年)3月に公表(委員会や介護給付費分科会に報告)

2021年度調査の大枠(介護事業経営調査委員会1 210628)

施設の抽出率(介護事業経営調査委員会2 210628)

従業者の抽出率(介護事業経営調査委員会3 210628)

調査対象について「ケアマネ事業所」をどう考えるべきか

このうち(1)の調査対象については、2020年度の臨時調査で「特定処遇改善加算」が設けられ(2019年度の消費増税に伴う介護報酬改定で創設)、「勤続10年以上の介護福祉士」が多い通所リハビリ事業所などが追加されており、それに倣ったものとなっています。

この点、2020年度の臨時調査では、ケアマネ事業所について「特定処遇改善加算の対象となっていない」との理由で調査対象から除外され、今般の定期調査でも「ケアマネの給与そのものは介護保険施設の調査結果などで把握できる」として、その考え方が維持されています。

しかし、千葉正展委員(福祉医療機構経営サポートセンターシニアリサーチャー)は「ケアマネ事業所所属のケアマネと、介護保険施設所属のケアマネとでは、状況が異なるのではないか。臨時調査でのケアマネ事業所除外は理解できるが、定期調査でも除外することはいかがなものか」旨の問題提起を行いました。田中委員長や堀田聰子委員(慶応義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)も同様の見解を示し、「ケアマネ事業所」を調査対象から除外するか否かについて、改めて厚労省と田中委員長とで検討することになりました。

「コロナ感染症によるスタッフ処遇への影響」をどう把握するか

また(2)の調査項目については、従前を概ね踏襲していますが、▼2021年度の介護報酬改定で「職場環境要件が大きく見直された」ことを踏まえた内容の見直し▼介護医療院の増加に伴う「介護医療院に転換する前の施設形態」について調べる―などの一部見直しが行われています。

こうした見直し項目について特段の反対意見は出ていませんが、すべての委員から「新型コロナウイルス感染症の影響を調べるべきではないか」との注文が多数つきました。

例えば、▼入所者・利用者やスタッフの間で新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生し、長期間の利用者減などが生じなかったか▼新型コロナウイルス感染症の影響による「収益減」などが生じ、スタッフの給与減などが生じていないか―といった点について調査すべきではないか、との提案です。厚労省老健局老人保健課の平子哲夫課長は、こうした意見を踏まえて田中委員長と相談のうえ、「回答者の負担」も考慮して、これら調査項目を追加する方向で検討する考えを明らかにしました。



調査対象・調査項目に関する見直しを行ったうえで、近く開催される親組織「介護給付費分科会」に報告。そこでの了承を待って、調査実施の準備が進められます。

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