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介護職員処遇改善加算のハードルを詳細に調査・分析し、より上位の加算取得を支援—介護事業経営調査委員会

2018.6.21.(木)

 介護職員処遇改善加算の取得状況、さらに「なぜ上位の加算取得を目指さないのか」といった点について、今年(2018年)10月を目途に介護保険施設・介護サービス事業所を対象とした調査「2018年度介護従事者処遇状況等調査」を実施する―。

6月21日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会の「介護事業経営調査委員会」で、こういった方針が固まりました。近く、親組織である介護給付費分科会に報告され、そこでの了承を経て、調査が行われます。

6月21日に開催された、「第26回 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護事業経営調査委員会」

6月21日に開催された、「第26回 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護事業経営調査委員会」

 

2017年度の給与等データが存在しないため、介護医療院は2018年度調査からは除外

介護職員については「労働実態に比べて賃金が低すぎる。このため新規人材が参入せず、職場定着もしない」という指摘があり、厚生労働省は▼介護職員処遇改善交付金の創設(2009年、後に加算に組み換え)▼介護職員処遇改善加算の創設(2012年度に創設し、後に拡充)―などの対応を講じています。

こうした対応が介護現場でどのような効果を生んでいるのか、あるいは更なる改善点はないのか、といった点を明らかにするために、厚労省は毎年度「介護従事者処遇状況等調査」を実施。その結果を踏まえて、「さらなる処遇改善が必要か、要件は適切か」などを検討しています(関連記事はこちらこちらこちら)。

前年度(2017年度)の調査では、臨時の介護報酬改定で創設された「新たな介護職員処遇改善加算I」(月額3万7000円相当の賃金増を行い、資格や経験年数等に応じた昇給基準などのキャリアパス要件IIIなどを満たす)の取得状況を中心に調査内容を従前から変更しました(関連記事はこちら)。この点、今年度(2018年度)の調査では、従前の調査結果との比較を行いやすいよう、▼2017年度の給与水準(2018年度介護報酬改定前)▼2018年度の給与水準(2018年度介護報酬改定後)▼介護職員処遇改善加算の取得状況▼施設・事業所で行っている処遇改善の内容―などを、これまでの調査手法に則って調べることになります(関連記事はこちらこちら)。

また、これまでの調査で「介護職員処遇改善加算の取得は相当進んでいる」ことが分かっており、今後は「より上位の加算取得を促す」(例えば、加算IIやIIIの取得事業所等に加算I取得を目指してもらう)方向に施策が変化してきています。このため、今年度(2018年度)調査では、上位加算の要件となるキャリアパス要件I・II・IIIのそれぞれを満たすことが困難な理由について、自由記載も含めて詳しく調べることになります。

とくに2018年度改定では「介護職員処遇改善加算IV・Vは一定の経過措置を設けて廃止する」ことが決まっており、厚労省は「上位加算取得に向けた支援」を行っていますが、「現在の支援策で十分か、改善・拡充の余地はないか」などを検討する際、今般の調査結果も極めて重要な資料となるでしょう(関連記事はこちらこちら)。

○介護職員処遇改善加算の概要
【加算I】キャリアパス要件I・II・IIIおよび職場環境要件のいずれも満たす
【加算II】キャリアパス要件I・IIおよび職場環境要件のいずれも満たす
【加算III】キャリアパス要件IまたはII、および職場環境要件を満たす
【加算IV】キャリアパス要件I・II・職場環境要件のいずれかを満たす
【加算V】いずれの要件も満たさない)

○介護職員処遇改善加算の各要件
▼キャリアパス要件I:介護職員の任用要件や賃金体系を定め、すべての介護職員に周知するなど

▼キャリアパス要件II:介護職員の資質向上計画を定め、また研修実施などを行うとともに、これらをすべての介護職員に周知するなど

▼キャリアパス要件III:事業所内で(1)経験年数(2)資格(3)事業所内での評価―のいずれか(組み合わせも可能)に応じた昇給(基本給、手当、賞与などを問わない)の仕組みを設け、これを就業規則等の明確な根拠規定の書面での整備・全ての介護職員への周知する)

▼職場環境要件:2015年4月以降の賃金改善実績を職員へ周知する

介護職員処遇改善加算の概要

介護職員処遇改善加算の概要

 
調査対象は、▼介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)▼介護老人保健施設▼介護療養型医療施設▼訪問介護▼(地域密着型)通所介護▼認知症対応型協同生活介護▼居宅介護支援―の施設・事業所から抽出され(例えば特養では4分の1の施設を抽出)、選定されます。

なお、2018年度改定で新設された【介護医療院】については、▼2017年度のデータがない(前身が介護療養等であって場合でも、報酬水準等が変わる)ため、2018年度データとの比較ができない▼対象施設リストが現時点で存在しない―ことから、今年度(2018年度)調査からは除外されます。例えば、A病院について、「リスト作成・調査票発送時点では介護療養であったが、介護医療院に転換していた」という場合には、調査票が届いた場合でも、「介護医療院に転換した」ものとして調査対象から除外されます。もっとも、2019年度以降の調査では、介護医療院も「対象施設に追加すべき」との検討が行われることでしょう(その場合でも、2年度分のデータが揃っていることが必要)。

職場環境の良い介護事業所等では、給与増せずとも人材確保できるのか

こうした調査内容について、介護事業経営調査委員会では「より分かりやすく、答えやすいような工夫をしてほしい」旨の注文が付いたほか、特段の異論は出されず了承されましたが、「将来に向けた改善」「調査結果の分析」についていくつか要望・提案がなされています。

たとえば堀田聰子委員(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)は、「介護職員処遇改善加算の取得状況と、『給与増以外』の処遇改善内容とのクロス分析」をすべき、と改めて提案。例えば「人間関係が良好で、働きやすい職場であれば、必ずしも上位加算を取得し給与増をしなくとも、人材が確保・定着しやすい」といったような状況の有無を明らかにすることにつながります(関連記事はこちら)。

また藤井賢一郎委員(上智大学准教授)は、「職種を限定せず、全体的に給与水準の低い地域では、介護従事者のみを対象とした給与増を行おうとすると、他の職種からの人材移動が生じてしまうことを懸念してストップがかかるケースもあると聞いている。介護従事者のみを対象とした処遇改善加算は、やはり歪みを生む可能性がある。ほかの調査や分析になるかもしれないが、介護職員処遇改善加算の在り方そのものを検討しなおす必要がある」との考えを示しています。

 
今後、近く開催される親組織(介護給付費分科会)に報告され、そこでの了承を経て調査が行われます(2018年10月調査予定)。
 
 
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