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外来分析 看護必要度シミュレーションリリース

認知症高齢者の行動・心理症状(BPSD)を未然にチームで防ぐ取り組みを行う介護施設などを新加算で評価へ—社保審・介護給付費分科会(1)

2023.11.28.(火)

通所介護などの【認知症加算】、訪問サービスの【認知症専門ケア加算】について、「認知症高齢者の日常生活自立度III以上」の利用者割合要件が設けられているが、実態に合わせた見直し(要件緩和)を行う—。

認知症高齢者の行動・心理症状(BPSD)を未然にチームで防ぐ取り組みを行う介護施設などを新加算で評価してはどうか—。

11月27日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、こういった議論が行われました(関連の第1ラウンド論議の記事はこちら)。

同日には「感染症対策の強化」「BCP(事業継続計画)作成推進」「LIFEの利活用推進」「虐待防止」「送迎サービスのルール明確化」なども議題に上がっており、これらは別稿で報じます。

通所介護などの【認知症加算】、日常生活自立度III以上の利用者割合を軽減

2024年度の介護報酬改定に向けた議論が、個別具体的な第2ラウンドに入っています。

11月27日の会合では、(1)認知症への対応力強化(2)感染症への対応力強化(3)業務継続に向けた取り組みの強化等(4)LIFE・口腔・栄養(5)高齢者虐待の防止、送迎—といった点が議題に上がりました。本稿では(1)の認知症対応に焦点を合わせ、他の項目は別稿で報じることとします。

認知症患者は、2018年に500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」という状況を迎えましたが、2025年には約700万人(同じく5人に1人)、2040年には約800-950万人(同じく約4-5人に1人)に達すると見込まれています。このため、2019年には認知症施策推進大綱が、本年(2023年)には認知症基本法が制定され、認知症患者の意向を十分に踏まえた総合的な対策(認知症との共生、認知症予防など)を進めることとされています。

介護報酬の面でも取り組みが進められ、例えば2021年度の前回介護報酬改定では▼【認知症専門ケア加算】について対象サービスの拡大、要件の1つである「専門研修受講者」に専門性の高い看護師を加えることで、算定の裾野を広げる▼介護サービス事業者に、「介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない者について認知症介護基礎研修を受講させる義務を課す」こととする(3年間の経過措置あり)—などの対応が図られました。

厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課の和田幸典課長は、2024年度の介護報酬改定でも認知症対応力をさらに強化するため、次の3つの見直しを行ってはどうかと介護給付費分科会に提案しました。

(a)通所介護、地域密着型通所介護の【認知症加算】について算定要件を見直してはどうか(基準緩和、研修要件追加)

(b)訪問系サービスの【認知症専門ケア加算】について算定要件を見直してはどうか(基準緩和)

(c)BPSD(行動・心理症状)を未然に防ぐ取り組みを評価する新加算を設けるとともに、新たな「認知症の評価尺度」のLIFEにおける活用などを検討してはどうか



(a)の【認知症加算】は、通所介護などにおける認知症対応力の強化を狙うもので、▼看護職員・介護職員の2名以上の加配▼「認知症高齢者の日常生活自立度ランクIII以上」の利用者割合が20%以上▼認知症介護に係る専門的な研修等を修了した職員の配置—が要件となっています。

しかし、通所介護など利用者の「認知症高齢者の日常生活自立度」を見ると、III以上は通所介護では18.3%、地域密着型通所介護では17.1%にとどまり、「20%以上」という基準値のクリアは多くの事業所で困難なことが分かります。

通所介護利用者の認知症高齢者の日常生活自立度の状況(社保審・介護給付費分科会(1)2 231127)



このため加算の算定率は「低く、かつ徐々に低下してきている」状況です(2022年度には通所介護で2.6%、地域密着型通所介護では1.1%にとどまる)。

通所介護などの認知症加算の算定状況は非常に低い(社保審・介護給付費分科会(1)3 231127)



そこで和田認知症施策・地域介護推進課長は、「認知症高齢者の日常生活自立度ランクIII以上の利用者割合」の基準値(現在20%)を「実態に見合うように見直す」ことを提案しました。上記のデータを見れば「引き下げ」になると思われます。

あわせて、事業所内で研修会やセミナーを実施しているデイサービス事業所が6割程度ある実態も踏まえ、より認知症対応力を強化する意味で「スタッフへの認知症ケアに関する事例検討会等を定期的に開催する」ことを要件に追加することも提案されました。

認知症対応力強化に向けた事業所の取り組み(社保審・介護給付費分科会(1)4 231127)

訪問サービスの【認知症専門ケア加算】、日常生活自立度「II」以上をカウント対象に

また(b)の【認知症専門ケア加算】は、▼認知症の専門研修を修了したスタッフ配置▼認知症の利用者への対応▼認知症ケアに関する会議や研修などの取り組み実施—といった形で認知症対応力を強化する事業所を評価する加算です。

上述のように2021年度の前回改定で訪問系サービスにも導入されましたが、「認知症高齢者日常生活自立度のIII以上の利用者割合が、全利用者の2分の1以上」という要件がハードルとなり、訪問介護における算定は極めて低調(2022年4月時点でわずか7事業所)です。

この「認知症高齢者割合2分の1以上」要件は、施設での【認知症専門ケア加算】加算取得要件と横並びで設定されたものですが、「中重度者が多く入所する施設」と「入所に至らない在宅要介護者」とでは状況に違いがあります。厚労省の調べでは訪問介護利用者における「認知症高齢者の日常生活自立度」は、▼III以上は22.0%にとどまる▼II以上であれば2分の1以上となる(55.4%)—ことが分かっています。

訪問介護における認知症高齢者の日常生活自立度の状況(下段)と、認知症専門ケア加算の取得状況(上段)(社保審・介護給付費分科会(1)5 231127)



こうした状況を踏まえて和田認知症施策・地域介護推進課長は、「認知症高齢者の日常生活自立度『III』以上の利用者割合が、全利用者の2分の1以上」という要件を見直(緩和)してはどうかと提案しています。例えば、「「認知症高齢者日常生活自立度『II』以上の利用者割合が、全利用者の2分の1以上」と見直すことなどが考えられます。



通所介護と訪問系サービスとでは状況が異なる点を踏まえ、それぞれの要件緩和を行うもので大きな異論・反論は出ていません。今後、厚労省で基準値を詰めていくことになりますが、その際には「在宅療養をおくる中重度の認知症患者へ対応するといった本来の趣旨を忘れてはならない」(正立斉委員:全国老人クラブ連合会理事・事務局長)といった指摘も踏まえる必要があります。

チームで「BPSDを未然に防ぐ」取り組みを行う介護施設やグループホームに新加算

認知症高齢者への処遇にあたっては「行動・心理症状(BPSD)への対応」に難渋する場面が少なくありません。このため、「BPSD症状があり緊急に短期入所生活介護等を利用する必要がある」と医師が判断した利用者に対し、ケアマネジャーと短期入所生活介護スタッフが連携して認知症高齢者を受け入れることを、2009年度の介護報酬改定で【認知症行動・心理症状緊急対応加算】として評価。2021年度の前回改定では、本加算を小規模多機能型居宅介護などにも拡大しています。

そうした中、昨今の研究では「BPSDを、問題行動にとどまらず、不眠や抑うつ状態なども含めた広いものと捉え、チームで『BPSD』の出方を評価し、計画的にチームで対応することで、BPSD発現を効果的に(統計上有意に)抑えられる」ことが分かってきました。

「行動・心理症状」(BPSD)を未然に防ぐ取り組みの研究が進み、効果も明らかになってきている(社保審・介護給付費分科会(1)6 231127)



和田認知症施策・地域介護推進課長は、この研究結果に注目し「BPSDが生じてからの対応を評価する【認知症行動・心理症状緊急対応加算】にとどまらず、BPSDの発生を未然に防ぐような取り組みを行っている施設・事業所を新たな加算で評価するべきではないか。BPSDは高齢者自身に本来的な欲求に起因するもので、ゼロにはできないが、科学的に取り組むことで相当程度抑えることができる。そうした取り組みを新加算で広げたい」との考えを提示しています。

詳細は今後詰められますが、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、認知症対応型共同生活介護において、▼BPSDの予防に資する認知症介護に係る専門的な研修の修了者を配置し、施設・事業所内で「BPSD予防に資する認知症ケア」の指導を実施する▼認知症高齢者の日常生活自立度II以上の利用者に、BPSDの評価指標(NPI-NHやBPSDQ25など)を用いて客観的に評価をし、チームでBPSD予防に資するケアを提供する▼チームケアの実施状況を評価・見直し、事例検討を行う—といった取り組みを行うことを評価するイメージです。

「行動・心理症状」(BPSD)を未然に防ぐ取り組みを新加算で評価へ(社保審・介護給付費分科会(1)7 231127)



この点についても異論、反論は出ていませんが、「BPSD予防の研修を拡大し(例えばオンラインでの研修実施など)、研修修了が多く輩出されるように工夫すべき」(東憲太郎委員:全国老人保健施設協会会長)、「世界的にも『BPSD』という言葉の使用は控える傾向にあり、加算の名称などでは配慮すべき」(田中志子委員:日本慢性期医療協会常任理事、堀田聰子委員:慶応義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)、「目的が『BPSDを未然に防ぐ』という点を忘れてはならない。形式的要件が目的化しないように留意すべき」(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)といった注文が出ています。こうした意見・注文も踏まえて、今後、加算の詳細が詰められます。



関連して和田認知症施策・地域介護推進課長は、研究中の「新たな認知症の評価尺度」について、「さらなるエビデンス収集(在宅での活用研究など)を図り、現場における多様な活用やLIFEにおける活用を検討する」考えも示しています。2024年度の次期改定でのLIFE項目導入を目指すとともに、その後もさらに検証・研究を重ねていく考えを厚労省担当者は示しています。簡易に認知症の状況を把握できる指標が確立すれば、スタッフも認知症を抱える利用者への適切な対応を予め考えることができ(負担軽減につながる)、利用者・家族にとっては安心・安全につながります。研究結果の現場実装に大きな期待が集まります。

新たな「簡易な認知症評価尺度」の研究が続けられ、2024年度介護報酬改定での現場実装が目指されている1(社保審・介護給付費分科会(1)8 231127)

新たな「簡易な認知症評価尺度」の研究が続けられ、2024年度介護報酬改定での現場実装が目指されている2(社保審・介護給付費分科会(1)9 231127)



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