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GemMed塾 看護モニタリング

糖尿病に罹患し食事の多様性が低いと「フレイルリスク」高、糖尿病高齢者の食事は「多様性」も考慮を―都健康長寿医療センター研究所

2024.1.9.(火)

糖尿病に罹患し、かつ食事の多様性が低いと「フレイルの発生リスク」が高くなる—。

このため、糖尿病高齢者の食事管理については、単なる食事制限にとどまらず、年齢の上昇とともに「食事の多様性」を考慮していくことが重要である—。

東京都健康長寿医療センター研究所が1月5日に公表した研究成果から、こうした点が明らかになりました(研究所のサイトはこちら)。

「糖尿病高齢者は、そうでない高齢者と比べて栄養不良状態になりやすい」点にも配慮

昨年度(2022年度)から、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。このため介護ニーズは今後急速に増大していきます。

一方、支え手となる現役世代人口は、2025年度から2040年度にかけて急速に減少していきます。

少なくなる一方の支え手(サービス提供者、費用負担者)で、増大する一方の高齢者(サービス利用者、受益者)を支えなければならず、「どのように効率的に要介護者を支えていくか」(サービス提供の生産性向上、介護費の負担の公平化など)とともに、「要介護者の発生をいかに防止していくか、要介護状態になったとしても、いかに重度化を防止するか」が重要になっています。

介護予防・重度化防止の一環として「フレイル対策」が重視されています。

フレイルとは「加齢に伴い抵抗力が弱まり、体力が低下した状態」や「自立喪失(介護が必要な状態や死亡)のリスクが高まっている状態」などと定義され、自立→フレイル→要介護状態と進んでいきます。

しかし、適切な支援・介入により「フレイル→自立」と回復することも可能です。このため「フレイルの予防・改善を目的とした介入プログラム」が極めて重要となります。65歳以上日本人の8.7%がフレイルに該当するとの研究結果があり、高齢化がさらに進む我が国では「フレイル予防」が非常に重要な政策課題となります。

そうした中で都健康長寿医療研究センターでは「食事、糖尿病、フレイル」の関係に着目しました。

まず、3者の関係者については、次のような点がこれまでの研究で明らかになっています。

【糖尿病とフレイル】
▽糖尿病罹患者は、そうでない者に比べてフレイルが多い(低栄養、高血糖、低血糖などがフレイルと関連しているため)
▽糖尿病治療の1つとして食事管理が行われるが、厳しいエネルギーコントロールなどの過度な食事管理がフレイルを引き起こす可能性がある

▽高齢期における糖尿病の食事・栄養ケアでは「フレイル予防」を加味することも重要となるが、高齢糖尿病患者における「フレイル予防のための食生活」に関する十分なエビデンスは構築されていない

【食事とフレイル】
▽フレイルの者では「DVS」(食品摂取の多様性スコア:Dietary Variety Score、肉類、魚介類、卵類、大豆・大豆製品、牛乳、緑黄色野菜、海藻、いも類、果物類、油脂類の10食品について「毎日食べる:1点、それ以外:0点」とし10点満点で評価する)が低い

▽「タンパク質、ビタミンA、葉酸、ビタミンD、総エネルギーの摂取量が少ない」ことが、高齢者のフレイルと関連しているとの研究結果がある(食事の多様性が低いと、エネルギー、タンパク質、およびビタミンの摂取量が少なくなり、フレイルの発生に関連すると考えられる)



都健康長寿医療センター研究所では、こうした点を踏まえて、65歳以上の地域在住高齢者1357名を対象に、▼糖尿病の既往歴の有無▼食品摂取の多様性(DVSの高い群と低い群)▼フレイル—の関係を調査。そこから、次のような状況が明らかになりました。

▽フレイルの割合
・糖尿病なし、DVS高:3.6%
・糖尿病なし、DVS低:6.7%
・糖尿病あり、DVS高:6.7%
・糖尿病あり、DVS低:12.2%

糖尿病・食事・フレイルの関係1(都健康長寿医療センター研究所1 240105)



▽性別、年齢、体格指数、既往歴、飲酒習慣の影響などを統計学的に調整した上でのフレイル発生リスク
・「糖尿病なし、DVS高」群に比べ、「糖尿病あり、DVS低」群で5.03倍

糖尿病・食事・フレイルの関係2(都健康長寿医療センター研究所2 240105)



ここから、「糖尿病で、かつ食事の多様性が低い」と「フレイルの発生リスクが高くなる」ことが分かります。

都健康長寿医療センター研究所では、「糖尿病高齢者は、糖尿病でない高齢者と比べて栄養不良状態になる可能性が高い」ことも指摘し、糖尿病高齢者の食事管理については、「厳格な食事制限」という考え方から、年齢の上昇とともに「フレイル予防」、つまり「食事多様性性スコアを使用した栄養介入」にも着目していく必要があると強調しています。



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