Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Post Type Selectors
0819ミニセミナー病院ダッシュボードχ ZERO

「HER2陽性の胃・食道接合部腺がん」の2次治療、T-DXd(販売名:エンハーツ)使用で生存期間が有意に延長—国がん

2025.6.3.(火)

「HER2陽性の胃・食道接合部腺がん」の2次治療として、「トラスツズマブ・デルクステカン」(T-DXd、販売名「エンハーツ点滴静注用100mg」)と「ラムシルマブ(サイラムザ点滴静注液)+パクリタキセル(タキソール注射液、他後発品あり)」とを比較すると、T-DXdのほうが全生存期間、無増悪生存期間、奏功割合、奏功期間などで優れており、また安全性についても同等、あるいは優れていることが明らかになった—。

国立がん研究センターが6月2日に、こうした研究成果を明らかにしました(国がんのサイトはこちら)。

「T-DXd」投与が、今後、「HER2陽性の胃・食道接合部腺がん」の2次治療となる可能性があり、さらなる研究に期待が集まります。

T-DXd、ラムシルマブ+パクリタキセルよりも有効性・安全性で勝る

「胃がん」は依然として予後不良な疾患であり、2023年の「人口動態統計月報年計(概数)」によれば、男性では肺がん・大腸がんに次いで、女性では大腸がん・肺がん・膵臓がん・乳がんに次いで死亡率が高くなっています(関連記事はこちら)。

胃がんのうち「HER2陽性の胃がん」は胃がん全体の5-17%程度であり、1次治療では「化学療法に抗HER2抗体であるトラスツズマブを加えた療法」が標準となっています。

ところで、トラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd、販売名「エンハーツ点滴静注用100mg」)は、トポイソメラーゼI阻害薬を搭載した「抗HER2抗体薬物複合体」で、各種の臨床試験で「HER2陽性胃がんの後治療」としての有効性が示されてきています。とくに、我が国と韓国で実施された「DESTINY-Gastric01試験」では、「HER2陽性切除不能進行・再発胃がん」患者187名を対象に「T-DXd」の使用が、「化学療法」に比べて▼奏効割合(主要評価項目)▼全生存期間(副次的評価項目)—が有意に改善することが示されました。

また、欧米で行われた「DESTINY-Gastric02試験」では、「トラスツヅマブを含む化学療法後に進行し、再生検によりHER2陽性が確認された胃がん」を対象に、2次治療におけるT-DXdの有効性が示唆されています。

今回、国がんでは、「トラスツズマブ治療歴があり、再検査でHER2陽性が確認された切除不能または転移性の胃がん」患者さんを対象に、「T―DXd」と「ラムシルマブ(サイラムザ点滴静注液)+パクリタキセル(タキソール注射液、他後発品あり)とを直接比較する「DESTINY-Gastric04試験」を実施しました。具体的には次のような臨床試験です。

【期間】
▽2021年5月から2024年10月

【症例数等】
▽先進諸国152施設の494症例(臨床試験の適格基準を満たした症例)を、▼T-DXd群(246症例)▼ラムシルマブ+パクリタキセル群(248症例)に無作為割り付け

【評価項目】
▽主要評価項目:全生存期間
▽副次評価項目:無増悪生存期間、奏効割合、奏効期間、安全性など



この臨床試験からは、次のような結果が得られました。

【主要評価項目:全生存期間】
・T-DXd群の中央値:14.7か月(95%信頼区間は12.1-16.6か月)
・ラムシルマブ+パクリタキセル群の中央値:11.4か月(95%信頼区間は9.9-15.5か月)
▽T-DXd群では、ラムシルマブ+パクリタキセル群と比較して有意に延長していた
▽「死亡リスクが30%減少」(死亡リスクのハザード比0.70)したことも確認された

全生存期間について、T-DXdのほうが「ラムシルマブ+パクリタキセル」よりも優れた結果が出ている



【副次評価項目:有効性】
strong>●無増悪生存期間
・T-DXd群の中央値:6.7か月(95%信頼区間は5.6-7.1か月)
・ラムシルマブ+パクリタキセル群の中央値:5.6か月(95%信頼区間は4.9-5.8か月)

▽T-DXd群では、ラムシルマブ+パクリタキセル群と比較して有意に良好であった
▽増悪もしくは死亡までのリスクは「25%軽減」された

無増悪生存期間について、T-DXdのほうが「ラムシルマブ+パクリタキセル」よりも優れた結果が出ている



●奏効割合
・T-DXd群:44.3%(95%信頼区間:37.8-50.9%)
・ラムシルマブ+パクリタキセル群:29.1%(95%信頼区間:23.4-35.3%)

▽T-DXd群では、ラムシルマブ+パクリタキセル群と比較して有意に回線していた

●奏効期間
・T-DXd群の中央値:7.4か月
・ラムシルマブ+パクリタキセル群の中央値:5.3か月

●6か月時点の奏効維持割合
・T-DXd群:58.4%
・ラムシルマブ+パクリタキセル群の中央値:35.7%

●12か月時点の奏効維持割合
・T-DXd群:29.7%
・ラムシルマブ+パクリタキセル群の中央値:15.0%

▽T-DXd群では、ラムシルマブ+パクリタキセル群と比較して良好であった

奏功持続期間について、T-DXdのほうが「ラムシルマブ+パクリタキセル」よりも優れた結果が出ている

●ほか
▽アジアでは、「ラムシルマブ+パクリタキセル群の後治療」として41.7%の患者にT-DXdが使用されていたが、死亡のハザード比は0.82で、「T-DXd使用群」で良好な傾向が得られた

【副次評価項目:安全性】
●治療関連有害事象
・T-DXd群:治療関連有害事象(全グレード)は93.0%、グレード3以上(好中球減少28.7%、貧血13.9%など)は50.0%
・ラムシルマブ+パクリタキセル群:治療関連有害事象(全グレード)は91.4%、グレード3以上(好中球減少35.6%、貧血13.7%、白血球減少12.4%など)は50.0%

▽両群に大きな差は認められなかった

●治療中止につながった治療関連有害事象
・T-DXd群:11.5%
・ラムシルマブ+パクリタキセル群:13.3%

●間質性肺炎の発症
・T-DXd群:13.9%(グレード3が1例のみで、他はグレード1・2であり、致死的な症例は報告されていない)
・ラムシルマブ+パクリタキセル群:1.3%(グレード3以上が3例報告され、うち1例はグレード5(死亡)であった)

●患者からの報告による健康状態/生活の質
▽全般的なスコアの経時的変化については、両群でほぼ同様の傾向がみられ「T-DXdはラムシルマブ+パクリタキセルと比較して全般的な健康状態や生活の質を損ねない」ことが示唆された



国がんでは、これら研究結果から▼T-DXdは「HER2陽性の胃・食道接合部腺がん」の「2次治療における新たな標準治療」となる可能性がある▼さらに多くの患者にT-DXdが全世界で使用可能となることが期待される—と結論付け、今後、▼1次治療への応用▼バイオマーカーを活用した個別化医療の推進▼治療抵抗性克服を目指した新規治療戦略の開発—につなげる考えです。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

【関連記事】

「節性T濾胞ヘルパーT細胞リンパ腫」(nTFHL)の遺伝子異常の全体像を明らかにして、タイプ別の予後予測スコアを構築—国がん他
日本人大腸がん患者の5割に特徴的な「腸内細菌による発がん要因」を発見—国がん・東大
国がんの保有するがん患者の試料(血液や組織等)、企業等の独自研究に活用可能な「分譲提供」をスタート—国がん
固形がんに対するCAR-T細胞療法の安全性・有効性を評価する医師主導治験を開始—国がん他
がんゲノム医療、C-CAT登録データが2024年度中に10万件に達した!より高精度に最適な抗がん剤選択可能な環境等整う—国がん
肺がん検診、「胸部X線検査」を喫煙の有無にかかわらず推奨し、重喫煙者には「低線量CT検査」を新たに推奨—国がん
「ピロリ菌除菌後の健康人における初発胃がんリスク」を予測可能に、超ハイリスク集団も同定—国がん他
転移のない小児・AYAの高悪性度骨肉腫、術前のMAP療法の効果が乏しい場合でも、術後のMAP療法継続が推奨される—国がん他
転移性尿路上皮がん治療、従来の化学療法に比べ「パドセブ点滴静注用とキイトルーダ点滴静注の併用療法」で高い効果—国がん
大腸がんの罹患数・死亡数低下に向け、まず住民検診、職域検診、人間ドック等に分かれている「がん検診データ」を集約し実態把握を—国がん
「がん検診への新規検査項目」プロセスを明確化、職域がん検診の精度向上などにむけ法整備を検討すべき—がん検診あり方検討会
子宮頸がん検診、長期の追跡管理が可能な市町村では2024年4月から「5年の1度のHPV検査単独法」への切り替え可能—がん検診あり方検討会
子宮頸がん検診、「2年毎の細胞診単独法」のほか、体制整った市町村では「5年毎のHPV検査単独法」も可能に—がん検診あり方検討会
がん検診が「適切に実施されているか」を担保するための基準(プロセス指標)を科学的視点に立って改訂—がん検診あり方検討会(4)
市町村による子宮頸がん・乳がん検診の受診率向上に向け、SNS活用・学校や民間事業者との連携等進めよ—がん検診あり方検討会(3)
職域で行われるがん検診、「子宮頸がん・乳がんがオプション」設定で受診のハードルに!早急な改善を!—がん検診あり方検討会(2)
コロナ禍でも「がん検診」実施状況は回復してきているが、「がん登録」「がん手術」等で実施状況の回復に遅れ―がん検診あり方検討会(1)
コロナ禍のがん検診は「住民検診」で落ち込み大、精検含め受診状況の迅速な把握を―がん検診あり方検討会(1)
コロナ感染症で「がん検診の受診控え」→「大腸がん・胃がん手術症例の減少」が顕著―がん対策推進協議会(1)

希少がん「皮膚血管肉腫」に対する「キイトルーダ点滴静注・レンビマカプセル併用療法」の医師主導治験を開始—国がん
超希少がん「胞巣状軟部肉腫」に対する免疫チェックポイント阻害薬「アテゾリズマブ」(テセントリク)の有効性・安全性を確認—国がん
切除できない局所進行食道がん、「放射線治療+抗がん剤治療+免疫チェックポイント阻害剤投与」で治療成績向上—国がん
多くのがんで「診断後1年以上生存した場合の5年生存率」は診断時よりも改善、初のサバイバー5年生存率を集計―国がん
がん細胞の「異常なミトコンドリア」が周辺の免疫細胞に移行し、免疫細胞の働きを阻害して生き残りをはかっている—国がん他
非喫煙者に多く発生する「EGFR変異陽性の肺がん」は、「遺伝子の個人差の積み重ね」が危険因子となる—国がん他
大腸がん検診ガイドライン2024年度版、引き続き【便潜血検査免疫法】を対策型検診(住民健診)として実施することを推奨—国がん
HER2陽性の「胆道がん」に対する「トラスツズマブ デルクステカン」(エンハーツ点滴静注用)の有効性を確認—国がん
「便表面の便潜血を画像化」する技術を開発、将来「トイレ内で便潜血を判定→早期の大腸がん発見」できると期待—国がん他
乳がんサブタイプ別(まずはトリプルネガティブ)に、複数の新規治療を同時に評価し新薬開発を迅速化する試験開始—国がん他
日本人でのゲノム解析から創製された新薬「タスルグラチニブ」、難治性の「胆道がん」治療薬として薬事承認を得る—国がん他
高精細リン酸化シグナル解析で「胃がんの治療標的同定」「治療経過に伴う胃がんの悪性化実態把握」が可能に—国がん他
高齢の大腸がん患者、3剤併用療法(FU+OX+BEV)でなく「2剤併用療法(FU+BEV)」を推奨—国がん他
早期肺腺がんの術後再発を予測するバイオマーカーを同定、切除した微量の検体をもとに迅速に検出可能—国がん他
食道がん・胃がん患者へ「免疫チェックポイント阻害剤投与」と「腸内細菌叢移植」とを併用する臨床試験を実施—国がん他
唾液腺がんへの新たな「抗アンドロゲン療法」の有効性を検証、奏効例と治療抵抗性例との鑑別に期待—国がん他
リキッドバイオプシーでも、さまざまな種類のがんで「T-DXd」効果が期待できる患者を抽出できる可能性—国がん・愛知がん
酵素「PSAT1」が「がんの悪性化に関わるEV」の分泌を抑制、新たながん治療戦略に期待—国がん・東京医大
薬物療法後にRAS遺伝子変異が野生型に変化した大腸がん、新たな治療選択肢の可能性を発見―国がん・がん研
個々の患者のバイオマーカーに適合する標的治療(がん個別化治療)により、患者の生存期間延長などの効果が得られる―国がん
切除可能な食道がん、現在の「術前CF療法」よりも、生存期間延長が期待できる「術前DCF療法」が新たな標準治療へ―国がん・JCOG
テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)が「がん細胞に有害なゲノム異常を排除」してがん細胞が増殖、この機能を阻害すると「がん細胞が死滅」―国がん
「トラスツズマブ デルクステカン」(エンハーツ点滴静注用)の奏効が期待できる胃がん患者を特定できる可能性―国がん
腎臓がんの多くを占める「淡明細胞型腎細胞がん」で日本人症例に特有の遺伝子変異を発見、治療法・予防法開発につながると期待―国がん
「予後不良なタイプの白血病」発症メカニズムの一端が明らかに、今後の分子標的薬開発につながると期待―国がん
肺がんにおいて、PD-L1タンパク質の「腫瘍内不均一性」が高い場合、術後の再発やがんによる死亡が多い―国がん
受動喫煙は「能動喫煙と異なる変異」を誘発、「受動喫煙の回避の重要性」を再認識―国がん
シングルポートのダビンチSPの活用で、「より侵襲が少なく整容性を向上させたロボット手術」実施を推進―国がん
「感染」「能動喫煙」によるがんの医療費・経済的損失が大きく、HPVワクチン接種勧奨、ピロリ除菌、たばこ対策強化など進めよ―国がん

ステージIで早期発見・治療すれば、乳・前立腺がんで9割、胃・大腸がんで8割、膵臓がんでも4人1人が10年以上生存―国がん
2021年、がん新規登録数はコロナ禍前水準に戻りつつある!ただし胃がんは回復せず背景分析が待たれる―国がん
胆道がんの手術後標準治療は「S―1補助化学療法」とすべき、有害事象少なく、3年生存率も高い―国がん・JCOG
血液検体を用いた遺伝子検査(リキッドバイオプシー)、大腸がんの「再発リスク」「抗がん剤治療の要否」評価に有用―国がん・九大
千葉県の国がん東病院が、山形県鶴岡市の荘内病院における腹腔鏡下S状結腸切除術をオンラインでリアルタイム支援―国がん
抗がん剤治療における薬剤耐性の克服には「原因となる融合遺伝子を検出し、効果的な薬剤使用を保険適用する」ことが必要—国がん
2cm以上でも転移リスクの少ない早期大腸がんでは、「内視鏡的粘膜下層剥離術」(ESD)を治療の第1選択に—国がん
開発中の「血液がん用の遺伝子パネル検査」、診断や予後の予測でとくに有用性が高い—国がん
BRCA1/2遺伝子変異、乳・卵巣・膵・前立腺がん以外に、胆道・食道・胃がん発症リスク上昇に関連―国がん等
乳がんの生存率、ステージゼロは5年・10年とも100%だがステージIVは38.7%・19.4%に低下、早期発見が重要―国がん
全がんで見ると、10生存率は59.4%、5年生存率は67.3%、3年生存率は73.6%―国がん
2020年のコロナ受診控えで「がん発見」が大幅減、胃がんでは男性11.3%、女性12.5%も減少―国がん
「オンライン手術支援」の医学的有用性確認、外科医偏在問題の解消に新たな糸口―国がん