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医療機関で放射線治療等での線量を記録し、患者に適切に情報提供を―社保審・医療部会(1)

2018.6.7.(木)

 放射線を用いた検査や治療による医療被曝を最適化するため、CT撮影など「被曝線量が相対的に高い検査」については、▼医療機関において被曝線量を記録する▼患者が他医療機関受診時に活用できるよう、被曝線量記録を患者に提供する―こととしてはどうか。あわせて、患者がCT撮影等を「必要であるにも受けない」と誤った判断をしてしまわないよう、適切な説明を行うこととしてはどうか―。

6月6日に開催された社会保障審議会・医療部会で、厚生労働省医政局地域医療計画課の佐々木健課長から、こういった検討が進んでいることが報告されました(関連記事はこちらこちら)。

6月6日に開催された、「第62回 社会保障審議会 医療部会」

6月6日に開催された、「第62回 社会保障審議会 医療部会」

 

放射線診療の適正な管理に向け、まず「線量記録ルール」を設けてはどうか

X線撮影やCT撮影、がん放射線療法など、放射線を用いた検査・治療を行うに当たっては、「この患者には、この検査・治療が必要である」との判断(正当化)と、「この患者の検査に当たっては、この程度の線量が好ましい」との判断(最適化)をあわせて行うことが必要です。この「正当化」と「最適化」がきちんと判断されている限り、検査・治療などに伴って患者が受ける放射線被曝(医療被曝)においては、線量限度(どの程度まで、放射線を受けてよいか)は設定されません。必要な検査・治療は提供しなければならず、「患者の病態等を踏まえ、これ以上に放射線治療は好ましくない」と判断された場合には、「正当化」「最適化」が満たされなくなるのです。
医療部会3 180606
 
ただし、放射線等に関する知識の乏しい一般国民・患者が「CT検査等を何度も受けているが、問題ないのか」という不安も生じかねません。

そこで厚労省は今般、放射線を用いた検査・治療において、これまで以上に「正当化」「最適化」を適切に判断する体制を担保し、患者に適切な情報提供を行う必要があると考え、昨年(2017年)4月に「医療放射線の適正管理に関する検討会」を設置。6月6日の医療部会に、これまでの検討状況の経過報告が行われたものです。

まず「正当化」(放射線を用いた検査・治療の必要性の判断)については、「医療機関の放射線診療に応じた医療被曝」に関する職員(主に医師・歯科医師)研修を行ってはどうか、との方向で検討が進められています。▼放射線診療における「有益性>有害性」の判断▼放射線診療の有用性・有害性に関する患者への説明と同意—の2点についてしっかりとした研修を行うことが、これまで以上に重要となってきます。

また「最適化」(当該患者の状態等に鑑み、どの程度の線量が適切かの判断)については、「被曝線量が相対的に高い検査」に関して、▼医療機関において被曝線量を記録する▼患者が他医療機関受診時に活用できるよう、被曝線量記録を患者に提供する―方向が検討されています。また、患者が放射線を用いた検査・治療等を「必要であるにも受けない」という誤った判断をしてしまわないよう、適切な説明を行うことや、CT等の放射線診療機器・放射性医薬品を用いた検査について、やむを得ない場合を除いて「DRL(診断参考レベル、Diagnostic Reference Leve)に基づいて線量・放射性医薬品の投与量の管理を行う」方向も示されています。
医療部会4 180606
 
「被曝線量が相対的に高い検査」としては、▼CT検査のうち「被曝線量の高い検査」を実施する場合▼血管造影検査・透視検査を「長時間または反復的」に実施する場合▼CT検査などを反復的に行い、高い線量レベルに達しうる場合―が例示されています。

また、DRL(診断参考レベル、Diagnostic Reference Leve)は、放射線を用いた検査・治療における線量を最適化するための指標で、検査の種類ごとに「予め標準化された方法で線量測定を実施し、多くの場合は線量分布の75パーセンタイル値」として設定されています。

 佐々木地域医療計画課長は、「現在、線量記録に関するルールが設けられていない。正当化・最適化をこれまで以上に推進するためにルールを設ける方向で検討が進んでいる」と説明しています。この方向に異論は出ていませんが、山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)から「患者・国民は複数の医療機関や健診機関で放射線を用いた検査・治療を受ける。それらを通じた合計の線量を把握できる仕組みの検討も必要ではいなか」といった旨の、菊池令子委員(日本看護協会副会長)から「医療従事者等の職業被曝についても適正な管理を検討する必要があるのではないか」といった旨の、猪口雄二委員(全日本病院協会会長)から「医療被曝の有害性に関するデータ取集を行うべき」といった旨の、さらに林修一郎参考人(奈良県医療政策部長、荒井正吾委員(奈良県知事)の代理出席)から「放射線治療機器の適正配備などに向けた考え方を整理していくべき」といった旨の、将来に向けた注文・要望が出されています。

 
なお、未承認の放射性薬物をヒトに投与する場合、現在、医療法ではなくRI法(放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律)で管理されています。しかし、本法は「ヒトに対して放射性同位元素(RI、radioisotope)を投与することを前提としている」わけでなく、RI治療を受けている患者が、放射線治療病室などから退出するに当たっての基準(患者から発せられる放射線がどの程度まで減少すれば、退出してよいのか、など)などを定めることが困難である、といった課題があります(関連記事はこちらこちら)。

そこで、検討会では「研究機関等で調製した未承認の放射性薬物のうち、ヒトに適正に使用できると考えられる薬物について、医療放射線の安全管理の観点を明記した上で、承認済医薬品や治験薬と同様、医療機関内での使用を医療法で管理する」方向での見直しが検討されています。
医療部会5 180606
医療部会6 180606
 
 これらの方向はさらに検討会で議論を詰め、まとまり次第、医療部会に改めて報告されることになります。

匿名加工された医療情報の活用に関するルール定め、医療の質向上等につなげる

 また6月6日の医療部会では、厚労省医政局総務課の榎本健太郎課長から「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」(通称、次世代医療基盤法)の施行に関する報告も行われました。

 個人情報保護法の改正により、病歴等を「要配慮個人情報」と位置づけ、患者本人の同意なく第三者に提供することを禁止するなど、個人情報管理の厳格化が求められています。

一方、診療情報等は、新たな医療技術の開発や、効果的な疾病予防・治療などに結びつく、極めて重要な情報であり、匿名加工などの一定のルールの下で「情報を利活用できる」仕組みが必要です。そこで次世代医療基盤法では、▼「匿名加工医療情報作成事業の適正かつ確実な実施に関する基準」に適合する者を認定する(認定事業者)▼医療機関等が、あらかじめ本人に通知し、本人が提供を拒否しない場合、認定事業者に対し医療情報を提供することを可能とする(医療機関等から認定事業者への医療情報の提供は任意)—ことなどを規定しています(2018年5月11日施行)。
医療部会 180606の追加図表
医療部会2 180606
 
この報告を受けた井上隆委員(日本経済団体連合会常務理事)は、「経済財政諮問会議に、2040年度の社会保障給付費の推計等が示され、医療・介護分野は92.5-94.3兆円となる(関連記事はこちら)。国民の負担も増えるが、医療・介護分野をそれだけ『ニーズが増加する産業』と捉えることも可能ではないか。そう考えたとき、医療等のビッグデータ利活用が極めて重要となる。利活用しやすい環境等を整えてほしい」との要望を行っています。

地域医療構想の実現や医療費適正化計画などにより、医療・介護給付費は、2040年度には92.5-94.37兆円となると考えられる

地域医療構想の実現や医療費適正化計画などにより、医療・介護給付費は、2040年度には92.5-94.37兆円となると考えられる

 
なお、経済財政諮問会議には「2040年度の社会保障給付費」に基づくマンパワー推計も示されました。医療・介護・福祉分野のマンパワーは、2040年度には1065万人が必要になりますが、健康寿命の延伸やICT活用などで935万人に抑えられるとの見通しが示されています(関連記事はこちら)。
2040年度には医療・介護分野で1065万人の従事者が必要になる(全就業者の18.8%)と見込まれるが、健康寿命の延伸によるニーズ減、ICT等活用による生産性向上によって、130万人少ない935万人(同16.5%)で済むと考えられる

2040年度には医療・介護分野で1065万人の従事者が必要になる(全就業者の18.8%)と見込まれるが、健康寿命の延伸によるニーズ減、ICT等活用による生産性向上によって、130万人少ない935万人(同16.5%)で済むと考えられる

 
この点に関連して島崎謙二委員(政策研究大学院大学教授)は、「介護人材確保に向け外国人人材の活用を考えているようだが、東南アジアでは合計特殊出生率が急激に下がっており、シンガポール等ではすでに近隣国から人材依存が始まっている。『門戸を開ければ外国人が我が国に来てくれる』と考えるのは安直ではないか。ICT活用による生産性向上などが『正攻法』であり、ここに力点を置くべき」旨の警鐘を鳴らしています。
 
 
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