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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

医師偏在対策、高齢医師では「総合的な診療能力」獲得教育、中堅医師では「ワークライフバランス」確保などが重要—日病・相澤会長

2024.10.29.(火)

医師偏在解消に向けた総合的な対策のパッケージの策定論議が進んでおり、日本病院会でも「提言」をまとめる。そこでは、例えば「年代別の偏在対策」などを考える必要がある。高齢医師では「総合的な診療能力を身につける」ためのリカレント教育が、中堅医師では「ワークライフバランスの確保」などが重要となる。また「規制的」要素はできるだけ少なくし、医師が「医師少数区域等で勤務したい」と考えるようなパッケージをまとめる必要がある—。

日本病院会の相澤孝夫会長が10月29日に定例記者会見を開き、こうした考えを述べました。早急に提言内容を整理し、11月にも厚生労働省に提案する構えです。

また、日病では「2040年頃を見据えた新たな地域医療構想」に関する議論も続けていますが、「地域によって医療提供体制の現状と将来予測は大きく異なる」ことが改めて確認されています。

10月29日の定例記者会見に臨んだ日本病院会の相澤孝夫会長

日病の「医師偏在対策に向けた提言」、世代別の対策・医師の総合診療能力研修などが重要

Gem Medで報じているとおり、「医師の地域偏在、診療科偏在」対策論議が進んでいます。

厚生労働省は、8月30日に「近未来健康活躍社会戦略」の中で「医師偏在対策総合パッケージの骨子案」を提示し、9月5日には「厚生労働省医師偏在対策推進本部」で総合パッケージに向けた論点を整理しました(関連記事はこちら)。

医師偏在対策(近未来健康活躍社会戦略2 240830)



これを受け、「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」では、「医学入学定員の在り方」(医師多数県で減員→医師少数県へ振り替え)や、「総合診療能力を持つ医師の養成」(総合診療専門医の養成、ベテラン医師へのリカレント教育など)を検討しています。

また「新たな地域医療構想等に関する検討会」では、(1)重点医師偏在対策支援区域の設定と医師偏在是正プランの策定(2)医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の対象医療機関の拡大、医師少数区域等での勤務経験期間の延長(規制的手法1)(3)外来医師多数区域における新規開業希望者への地域で必要な医療機能の要請等の仕組みの実効性の確保、保険医療機関の管理者要件設定(規制的手法2)(4)経済的インセンティブの付与(5)中堅・シニア医師等と医師少数区域医療機関との全国的なマッチング機能支援等(6)都道府県と大学病院等の連携パートナーシップ協定—といった具体策の検討が進んでいます。

さらに、「社会保障審議会・医療保険部会」でも、医療保険制度で可能な対応の検討が始まっています。



日本病院会幹部(会長、副会長、常任理事)の間でも、医師偏在対策の重要性が強く認識されており「日病としての医師偏在是正に向けた提言」策定論議が進んでいます(関連記事はこちら)。

これまでに、例えば「年代別の医師偏在対策」を考えるべきとの考えが固められており、さらに、より具体的に次のような対策案を提言する方向が概ねまとまったことが相澤会長から報告されました。

▽高齢の医師が(例えばメスを置いた後に)、故郷にUターンするなどして、医師少数区域等で働ける、働きたいと思えるような仕組みを設けるべき
→そのために、医師少数区域等の病院で求められる「総合的な診療能力」を会得するためのリカレント教育が極めて重要である(ここでいう「総合的な診療能力」は、新専門医制度における「総合診療専門医」とは異なる能力ではないか)
→この「総合的な診療能力を持つ医師」の処遇・待遇面での手当ても極めて重要となる(この点は今後の医療提供体制改革全体で重要になると考えられる)

▽中年層ではワークライフバランスを重視する必要があり、例えば▼パートナーの出産への立ち合いのための休暇▼子どもの入学式等に出席するための休暇▼旅行などのための1週間程度の連続休暇—などを「苦労なく」取得できる環境整備が必要である
→これを実現するためには、休暇中の医師の業務を「代替する医師」の確保をセットで行う必要がある

ほかにも、▼医師としても人間としても「医師少数区域や過疎地で勤務して良かった」と感じられる方策が必要である▼規制的手法とインセンティブの組み合わせでは、できるだけ規制的要素を少なくすべきである▼若手医師を多く派遣する「大学医学部、大学病院」と、地域医療提供体制確保の責任主体である「都道府県」との連携・協力を促す仕組み、両者を包含した総合対策が重要となる▼医師や看護師の「美容医療などの自由診療分野」への流出が進んでおり、何らかの抑制を考える必要がある▼医師少数区域等を設定する「医師偏在指標」には現場感覚との乖離もあり、方法論を整理・再検討していくことも必要ではないか—などの考えでまとまってきています。

今後、日病幹部で最終とりまとめを行い、11月にも相澤会長が厚労省等へ日病提言を提出します。

なお、「高齢医師が総合的な診療能力の確保し、地域医療に従事する」考えに関連して相澤会長は、「個人的な考え」と前置きしたうえで、▼厚労省も「ベテラン医師の総合診療能力を高めるためのリカレント教育」推進の考えを示しているが、具体的内容が見えにくい。「医師確保が難しい地域の病院で必要とされる総合診療能力」の獲得に向けたリカレント教育支援を求めていく▼故郷へのUターンなどにも期待しているが、「完全に地方でフルタイム勤務する」ことは難しいことも分かってきた。例えば「週に2,3日を医師少数区域の病院で勤務し、残りを現職の病院で勤務する」といった医師を複数名確保してローテーションして医師少数区域の地域医療を守る、といった柔軟な方策、工夫、さらにこうした仕組みを実現するための協議体を設置する—などの見解も明らかにしています。

医師偏在対策については、年内(2024年)に総合パッケージを厚労省で取りまとめます。

新地域医療構想の「医療機関機能」、地域の医療提供体制のバラツキ踏まえた整理が必要

他方、2040年頃を目指す「新たな地域医療構想」の策定論議が厚労省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」で進められています(関連記事はこちら)。

2025年度には、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達することから、急速に医療ニーズの増加・複雑化が生じます。こうした事態に対応できる効果的・効率的な医療提供体制を地域ごとに構築するため、【地域医療構想】の実現が求められています(関連記事はこちらこちら)。

さらに2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、認知症高齢者の比率が高まる)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療提供体制」の構築がますます重要になってきます。

また、こうした人口構造の変化は、地域によって大きく異なります。ある地域では「高齢者も、若者も減少していく」ものの、別の地域では「高齢者も、若者もますます増加していく」、さらに別の地域では「高齢者が増加する一方で、若者が減少していく」など区々です。

こうした状況を背景に「2040年頃を見据えた新たな地域医療構想」を策定し、これに基づいて医療提供体制を地域ごとに改革していくことが求められているのです。

現在の地域医療構想では「病床・病棟の機能分化」がメインターゲットとなっていますが、「新たな地域医療構想」では、「病床・病棟の機能分化」にとどまらず、▼医療機関の機能分化(関連記事はこちらこちらこちら)▼外来医療在宅医療医療・介護連携医師働き方改革医師偏在対策医療DX —など、いわば「医療提供体制全体の将来像」を描くものと位置付けられており、非常に幅広い領域の検討が行われています。

この「新たな地域医療構想」に向けた協議も日病幹部の間で進められています。

このうち「医療機関の機能」について日病幹部の間では、例えば▼「高齢者救急の受け皿となり、地域への復帰を目指す機能」と「救急医療等の急性期の医療を広く提供する機能」とは、どちらが2次救急で、どちらが3次救急なのか、などが見えにくい▼入院主体の「機能分類」がなされているが、外来や在宅の機能も含めた整理が必要なのではないか—などの見解が示されていますが、相澤会長は「地域によって医療提供体制や人口構成が全く異なり、一律の考え方を当てはめることは難しい」とコメントしています。

地域医療構想区域について(新地域医療構想検討会(2)9 240930)



このため、例えば▼「若人も高齢者も減少していく地域」「若人は減少するが高齢者が増加する地域」「若人も高齢者も増加する地域」などごとに医療機関機能を考える▼医療機関機能は大枠のみを設定し、地域地域で具体的な内容を考える—などの工夫が必要ではないかとの考えも相澤会長は示しています。

このほか、上述した医師偏在対策にも関連する事項として「地域における医療従事者の確保」
(看護師不足による病棟閉鎖、慢性的な薬剤師や看護補助者不足などの解消)が極めて重要であること日病幹部で確認しています。

新たな地域医療構想についても、厚労省の検討会で制度の大枠を年内(2024年内)に固めます。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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