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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

2020年度診療報酬改定、「医師の働き方改革」だけでなく「制度の持続可能性」も重点課題とせよ―社保審・医療保険部会

2019.11.22.(金)

2020年度の次期診療報酬改定において、「医師の働き方改革」が重要テーマであることは間違いないが、他にも「医療保険制度の持続可能性確保」なども重要であり、両者を【重点課題】に据えることはできないか―。

11月21日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、こういった議論が行われました(前回会合に関する記事はこちら、前々回会合(基本方針論議の初回)に関する記事はこちら)。

11月21日に開催された、「第121回 社会保障審議会 医療保険部会」

地域包括ケアシステムの要となる「有床診療所」の評価充実を求める声も

2006年度の診療報酬改定から、▼改定基本方針を社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で決定する▼改定率を内閣が予算編成過程で決める▼基本方針と改定率を受け、中央社会保険医療協議会(中医協)で改定内容を詰める―という役割分担が行われています。かつて中医協を舞台として、診療報酬改定をめぐる汚職事件が生じ、「背景には、中医協の所掌範囲・権限があまりに大きくなり過ぎたことがある」と指摘されたためです。

すでに、医療保険部会と医療部会では基本方針策定に向けて議論を進めており(医療部会における議論に関する記事はこちらこちらこちら)、11月21日の医療保険部会には、厚生労働省保険局医療介護連携政策課の山下護課長から、これまでの議論を踏まえた基本方針の骨子案が提示され、これをベースに議論を行いました。

11月18日の医療部会に提示されたものと同じで、(1)改定に当たっての基本認識(2)改定の基本的視点と具体的方向性(3)将来を見据えた課題―の3部構成となっています。

この骨子案に対し、費用負担者の立場で参画する佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)、藤原弘之委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長)、安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)らは、「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」を2020年度改定の【重点課題】に据えている点について、改めて「働き方改革の重要性は十分に理解できるが、これだけを【重点課題】としていることは理解できない」、「診療報酬改定の枠組みを考えれば、他の項目も劣らず重要であり、『効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上』も重点課題に据えるべきである」旨を強調しました。

これに対し、医療提供者代表として参画する松原謙二委員(日本医師会副会長)は、「過重な労働を強いられている勤務医をはじめとする医療従事者の働き方改革・負担軽減は、喫緊の課題である。働き方改革を実現できなければ、救急医療をはじめとする医療現場が回らなくなってしまう」ことを強調し、「医師等の働き方」を【重点課題】に据える点について改めて理解を求めました。

2024年4月から、すべての勤務医に新たな時間外労働上限(原則として年間960時間以内、救急科の医師や研修医などでは厳格な要件の下で、例外的に1860時間以内に延長できる)が適用され、これに違反した場合には、医療機関に罰則が科せられます。働き方改革のスケジュールを考慮すれば、まさに「待ったなし」の状況で、こうした状況を見据えれば、2020年度改定において「医師の働き方改革を【重点課題】に据えない」という選択は極めて難しいでしょう。

一方で、佐野委員らの指摘する「他の項目、とりわけ医療保険制度の持続可能性確保も重要である」という点にも、十分に頷ける点があり、12月初旬の基本方針取りまとめに向けてどういった調整が行われるのか(例えば、持続可能性確保等も重点課題に据えるなど)注目が集まります。

もっとも「重点課題に据えられなかった項目は、中医協で十分な論議がなされない」などといった事態は生じない点も抑えておく必要があります。


なお、佐野委員は「中医協において『働き方改革→人件費増→診療報酬での対応』という単純な図式の議論にならないようにすべきである。診療報酬の財源は保険料や税であり、国民が納得できる対応をとってほしい」と、安藤委員は「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度について、中医協では適正化する方向で検討が進んでいるようだ。看護職員の負担軽減という視点で基本認識に盛り込んでほしい」と要望しています。



また、原勝則委員(国民健康保険中央会理事長)は「有床診療所の機能」に着目。▼かかりつけ医機能を持ち▼地域包括ケアシステムにおいて要の役割を果たし▼状態が不安定な患者にとって、非常に使い勝手の良い―有床診療所ですが、原委員は「昨今の診療報酬改定でさまざまな手当てがなされているが、経営状況は依然として厳しく、施設数も減少が続いている」現状を憂い、「病院に比べて入院の費用は安価で済み、このまま減少していくのはもったいない。地域の医療機能連携や、在宅医療・介護ネットワーク推進などのために適切な(手厚い)評価を行うべきである」と提案しました。

この点、2020年度診療報酬改定の総指揮を執る厚労省保険局医療課の森光敬子課長は、「有床診療所の厳しい経営状況は認識している。地域包括ケアシステムの中で重要な役割を果たすもので、中医協で適正な評価に向けた検討を進めてもらう」とコメントしています。



医療保険部会・医療部会では、12月初旬の「基本方針」策定を目指し、さらに議論を深めていきます。

 
 
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