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医師不足区域での勤務経験を診療所の開業条件に―地域医療を守る病院協議会

2017.12.5.(火)

 医師の地域偏在が解消されるかどうかは、医療機関の管理者要件に懸かっている。具体的には、「『医師少数区域』での一定期間以上の勤務経験」を診療所の開業条件にすべき―。

 5つの病院団体(全国自治体病院協議会・全国厚生農業協同組合連合会・日本慢性期医療協会・全国国民健康保険診療施設協議会・地域包括ケア病棟協会)で構成する「地域医療を守る病院協議会」は11月29日の記者会見で、こうした方向で意見が一致していることを明らかにしました。

 中長期的な医師偏在対策については、厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会」の医師需給分科会で目下議論されています。地域医療を守る病院協議会では、厚労省側に働き掛けることで、今年(2017年)12月末までに検討会が取りまとめる検討結果への反映を目指すとしています。

地域医療を守る病院協議会を構成する病院団体の会長・副会長が11月29日、記者会見に臨んだ

地域医療を守る病院協議会を構成する病院団体の会長・副会長が11月29日、記者会見に臨んだ

まず病院で要件化するとしても、「国立病院機構」を入れるべき

 医師需給分科会では現在、「都道府県による医師確保対策の実施体制の強化」(例えば、都道府県ごとの地域医療対策協議会の構成員などを見直し、医師確保対策の実効性を高める役割を発揮させる)や、「医師養成課程を通じた医師確保」(医師が多い都道府県にある大学医学部の地域枠の卒業者を、医師が少ない都道府県で一定期間従事させる)など、さまざまな観点から方策を検討しています。

 「管理者要件の見直し」もこのうちの1案で、分科会では、▼「医師少数区域」(都道府県の中でも医師不足の地域)での勤務経験を一定期間以上有する医師を、「認定医師」(仮称)として厚労省が認定する▼将来的に、「認定医師」であることを地域医療支援病院などの管理者要件に据える―といった厚労省案をベースに議論が進んでいます。

 これを踏まえて、地域医療を守る病院協議会の邉見公雄議長(全国自治体病院協議会会長、赤穂市民病院名誉院長)は会見で、「管理者要件の見直し」が最も重要だと指摘。その上で、医師需給分科会で検討している案よりも強力な施策が求められると主張しました。

 具体的には、「認定医師」を管理者要件に据える対象医療機関の範囲を大幅に広げて、「診療所の開設者になるための要件にしてほしいというのが、われわれの総意だ」と述べました。「『認定医師』になるインセンティブが、より多くの医師に対して働く」と考えられるためです。

 ただし、診療所の「開業規制」につながり、反発もあると考えられることから、邉見議長は、対象医療機関を絞って要件化した後、どこかのタイミングで診療所にも導入する方法が現実的かもしれないとコメントしています。

 その上で、「認定医師」であることを管理者の要件とする病院の対象範囲について、「国立病院機構が運営する病院も入れるべきだ」という意見が、地域医療を守る病院協議会の中で多数派であることを明かしています。この点、厚労省案では、▼地域医療支援病院▼臨床研修病院▼社会医療法人▼公的医療機関▼地域医療機能推進機構(JCHO)―の5つを候補に挙げ、さらに対象を限定するとしています。国立病院機構が運営する病院の多くは、「地域医療支援病院」や「臨床研修病院」に当てはまると考えられますが、邉見議長は「国の“お膝元”の病院だ。そこが入らないのはおかしい」と主張しています。

厚労省は、「認定医師」であることを今後、地域医療支援病院などの管理者要件に据えてはどうかと提案している

厚労省は、「認定医師」であることを今後、地域医療支援病院などの管理者要件に据えてはどうかと提案している

医師不足の地方で働く経験は「キャリア形成に有用」

 また邉見会長は、医師偏在対策の一環として地方で働く経験が、若手医師の教育面でも有用だと強調。というのも、医師が少ないへき地の多くでは、高齢化が特に進んでいます。今後、全国的に高齢化が進む(今後は都市部での高齢化が急速に進む)ことを見据えて、若いうちに総合的な医療提供を体験しておくことが、自身のキャリア形成にも有用だというのです。

 この点、会見に出席した押淵徹・全国国民健康保険診療施設協議会会長(国民健康保険平戸市民病院院長)は「医師の人生にとって、大きな『財産』を得る経験ができる。若い時期に一度は来て、人間を磨いてほしい」、武久洋三・日本慢性期医療協会会長(医療法人平成博愛会理事長)は「地方でさまざまな患者を診て、経験した上で管理者になる。そういう医師の『育ち方』も大事ではないか」と指摘しています。

 「認定医師」をめぐっては、「どの程度の期間の経験で認定するか」も重要なポイントですが、邉見会長は、医師自身がキャリア形成に資するような経験を積むためには、少なくとも「1年半程度」勤務する必要があるのではないかとの考えを示しています。

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