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2017年、大規模病院で病床利用率低下、適正病床数の検討も進めては―日病、公私病連の調査結果から

2018.3.6.(火)

 2017年6月における病院の平均在院日数は14.84日で、前年同月より0.09日短縮。病床利用率は73.18%で、同じく0.11ポイント向上しており、病院全体では「平均在院日数の短縮と病床利用率向上」を両立できている。ただし大規模病院では利用率が低下傾向にあり、紹介患者の確保を強化するとともに、「適正な病床規模」の検討も進める必要がある。また、100床あたりの総収支差(総収益-総費用)は依然赤字基調であり、全体の約7割が赤字となっている―。

 こういった状況が、日本病院会と全国公私病院連盟が3月1日に公表した2017年の「病院運営実態分析調査の概要」から明らかになりました(日病のサイトはこちら)(前年の記事はこちら)。

大規模病院は急性期、中小規模病院は後方病床に「機能分化」が進んでいる可能性

 この調査は、両病院団体に加盟している病院について、毎年6月分(項目によっては6月末日)を対象に行われており、2017年調査では918病院から回答を得ています。設立母体別の内訳は、▽自治体:469(調剤客体の51.1%)▽その他公的:216(同23.5%)▽私的:196(同21.4%)▽国立・大学付属等:37(同4.0%)―となっています。

 まず平均在院日数を見ると、病院全体では14.84日で、前年(14.93日)から0.09日短縮しました。

 一般病院の平均在院日数を病床規模別に見てみると、次のような状況です。
▼全体:14.21日(前年から0.01日短縮)
▼700床以上:12.60日(同0.01日延伸)
▼600-699床:11.79日(同0.28日短縮)
▼500-599床:11.78日(同0.37日短縮)
▼400-499床:12.88日(同0.10日延伸)
▼300-399床:13.97日(同0.03日短縮)
▼200-299床:17.46日(同0.34日短縮)
▼100-199床:23.43日(同1.27日延伸)
▼99床以下:23.44日(同0.15日延伸)

700床以上の超大規模病院でわずかに、また200床未満の中小規模病院で若干、平均在院日数が延伸していますが、全体としては「短縮傾向」が伺えます。

病床規模別に一般病院の平均在院日数をみると、全体として短縮傾向にあるようだ

病床規模別に一般病院の平均在院日数をみると、全体として短縮傾向にあるようだ

 
 一般に、大規模な病院では急性期入院医療を提供し、中小規模病院では急性期後の患者に対する後方病床の機能を担っていると言えます。今般の結果からは、「大規模病院はさらに急性期に特化し、中小規模病院では後方機能を充実させている」と見ることができるかもしれません。今後、「入院基本料別の分析」などが期待されます(関連記事はこちらとこちら)。

大規模病院では病床利用率が低下、適正な病床数の検討を進める余地も

 次に病床利用率を見ると73.18%で、前年同月(73.07%)に比べて0.11ポイント向上しました。

 一般病院の病床利用率を、病床規模別に見ると次のような状況です。
▼全体:73.22%(同0.23ポイント向上)
▼700床以上:76.81%(同0.38ポイント低下)
▼600-699床:75.33%(同1.49ポイント低下)
▼500-599床:75.98%(同1.01ポイント向上)
▼400-499床:72.13%(同1.23ポイント低下)
▼300-399床:72.54%(同1.72ポイント向上)
▼200-299床:71.32%(同0.08ポイント向上)
▼100-199床:71.89%(同0.83ポイント向上)
▼99床以下:67.38%(同0.85ポイント向上)

病床規模別に一般病院の病床利用率を見ると、大規模病院で前月に比べて低下してしまっている

病床規模別に一般病院の病床利用率を見ると、大規模病院で前月に比べて低下してしまっている

 
 メディ・ウォッチでもたびたびお伝えしていますが、病院の収益性を高めるためには平均在院日数を短縮するとともに病床利用率を向上させることが不可欠です(関連記事はこちら)。単月の結果から断定することは困難ですが、今般の結果からは、「600床以上の大規模病院では両立できず、400床未満の比較的規模の小さな病院で両立できている」と考えることができそうです。

今後も同様の傾向が続くようであれば、一般に大規模病院で提供する「高度急性期」のニーズが減少し、中小規模病院で提供する「急性期後(post acute)・軽度急性期(sub acute)」ニーズが増加している可能性が伺え、600床以上の病院では「地域連携の強化による、重症患者の紹介確保」をさらに進める必要があり、あわせて「地域の医療ニーズを踏まえた適正な病床規模」の検討も行っていく必要があるでしょう。

2017年、大規模病院で外来患者数が減少、外来の機能分化が進んでいる可能性

 次に患者数の推移を見てみましょう。2017年6月における1病院当たりの入院患者は前年同月(7378人)に比べて153人増の7531人、外来患者も138人増の1万2266人となっています。

 一般病院の入院患者数を病床規模別に見てみると、次のようになっており、病床利用率と似た傾向が伺えます。
▼700床以上:2万151人(同2人増)
▼600-699床:1万5679人(同432人減)
▼500-599床:1万3244人(同126人増)
▼400-499床:1万336人(同148人減)
▼300-399床:7803人(同178人減)
▼200-299床:5612人(同74人増)
▼100-199床:3506人(同76人増)
▼99床以下:1437人(同46人増)

2017年6月の入院患者数、中小規模病院で増加が目立ち「急性期後患者の積極的受け入れ」が進んでいる可能性がある

2017年6月の入院患者数、中小規模病院で増加が目立ち「急性期後患者の積極的受け入れ」が進んでいる可能性がある

 
 また外来患者数は、次のようになりました。
▼700床以上:3万4762人(同2180人減)
▼600-699床:2万5417人(同1792人減)
▼500-599床:2万2942人(同540人増)
▼400-499床:1万7188人(同319人減)
▼300-399床:1万2574人(同519人減)
▼200-299床:9059人(同293人増)
▼100-199床:5926人(同158人増)
▼99床以下:2652人(同149人減)

2017年6月の外来患者数、大規模病院で減少しており、「紹介状なし患者からの特別負担徴収義務」などが効果を与えている状況が伺える

2017年6月の外来患者数、大規模病院で減少しており、「紹介状なし患者からの特別負担徴収義務」などが効果を与えている状況が伺える

 
厚生労働省は「大病院は専門・紹介外来に特化し、一般外来は中小病院やクリニックが担当する」という外来機能分化を進めています。また病院経営という面で見ても、スタッフの負担や収益性などを考慮すれば「大病院で軽症の外来患者を多く受け入れる」ことは決して好ましいことではありません。

今般の結果からは「600床以上の超大規模病院において、外来患者が減少している」状況が伺えます。2016年度診療報酬改定では「特定機能病院・一般病床500床以上の地域医療支援病院において、紹介状なしに外来を受診する患者から特別負担(初診時5000円以上、再診時2500円以上)徴収を義務付ける」ことが導入され(2018年度改定で400床以上の地域医療支援病院にも拡大)ましたが、その効果も一定程度現れていると見ることができそうです。

機能分化をさらに進め、大病院での高度治療が必ずしも必要ではなくなった患者は、地域の中小病院・クリニックへの逆紹介を進めていく必要があります(関連記事はこちら)。

病院経営は赤字基調、人件費等の増加で7割の病院が赤字

 さらに、回答病院のうち629病院(平均302床)について、2017年6月における100床当たりの収支に目を移すと、総収益は1億9896万1000円で、前年同月(1億9413万9000円)に比べて482万2000円・2.5%増加しています。一方、総費用は2億1095万円で、前年同月(2億650万1000円)に比べて444万9000円・2.2%の増加。依然として赤字基調(赤字額は1198万9000円で、前年より37万3000円の微減)です。

 収益の内訳を見ると、大きなものは▼入院収入:1億2919万1000円(同335万3000円・2.7%増)▼外来収入:5877万6000円(同168万7000円・3.0%増)―などとなっています。

 一方、費用の内訳は、▼給与費:1億725万1000円(同309万5000円・3.0%増)▼材料費(医薬品・医療材料):5265万8000円(同63万9000円・1.2%増)▼委託費:1599万円(同49万3000円・3.2%増)▼減価償却費・1361万3000円(同3万3000円・0.2%減)―などとなっています。

2017年6月、病院の支出は前年同月よりも増加しており、給与費や材料費などで増加が大きい

2017年6月、病院の支出は前年同月よりも増加しており、給与費や材料費などで増加が大きい

2017年6月、病院の収益は前年同月よりも増加したが赤字基調は変わっていない

2017年6月、病院の収益は前年同月よりも増加したが赤字基調は変わっていない

 
2017年6月の医業収益を100とした場合、医業費用は106.2で「医業だけに絞っても赤字」となります。また、給与費が55.1、材料費(医薬品・医療材料)が27.0と言う状況です。
2017年6月の医業収益を100とした際、収益・支出の各項目がどの程度になるかを見ると、医業費用は106.2。医業だけでも赤字であるとことがわかる

2017年6月の医業収益を100とした際、収益・支出の各項目がどの程度になるかを見ると、医業費用は106.2。医業だけでも赤字であるとことがわかる

2017年6月の医業収益を100とした際、入院収益が66、外来収益が30といった比率である

2017年6月の医業収益を100とした際、入院収益が66、外来収益が30といった比率である

 
 また黒字病院と赤字病院の比率を見ると、2017年は黒字31.0%、赤字69.0%となりました。赤字病院の比率は、前年に比べて3.9ポイント減少しましたが、7割が赤字と言う厳しい状況は変わっていません。

 なお、注目される「医師の負担」に関連する事項として(関連記事はこちらこちらこちら)、「医師1人・1日当たり患者数」を見ると、入院の平均は4.3人で前年同月から0.2人減少しました。患者数が多いのは、▼精神科14.6人(同1.1人減)▼リハビリ科12.5人(同1.3人減)▼整形外科8.1人(同0.1人増)▼肛門外科7.3人(同0.5人減)—などの診療科となっています。

医師1人当たりの入院患者数を診療科別に見ると、▼精神科14.6人(同1.1人減)▼リハビリ科12.5人(同1.3人減)▼整形外科8.1人(同0.1人増)▼肛門外科7.3人(同0.5人減)—などで多い

医師1人当たりの入院患者数を診療科別に見ると、▼精神科14.6人(同1.1人減)▼リハビリ科12.5人(同1.3人減)▼整形外科8.1人(同0.1人増)▼肛門外科7.3人(同0.5人減)—などで多い

 
また外来の平均は7.5人で前年同月から0.1人減少しました。患者数が多いのは、▼肛門外科17.0人(同2.9人減)▼皮膚科16.3人(同1.0人減)▼眼科15.0人(同0.5人減)▼整形外科11.5人(同0.2人減)▼泌尿器科11.2人(同0.3人減)▼耳鼻いんこう科10.8人(同0.6人減)—などの診療科です。
医師1人当たりの外来患者数を診療科別に見ると、▼肛門外科17.0人(同2.9人減)▼皮膚科16.3人(同1.0人減)▼眼科15.0人(同0.5人減)▼整形外科11.5人(同0.2人減)▼泌尿器科11.2人(同0.3人減)▼耳鼻いんこう科10.8人(同0.6人減)—などで多い

医師1人当たりの外来患者数を診療科別に見ると、▼肛門外科17.0人(同2.9人減)▼皮膚科16.3人(同1.0人減)▼眼科15.0人(同0.5人減)▼整形外科11.5人(同0.2人減)▼泌尿器科11.2人(同0.3人減)▼耳鼻いんこう科10.8人(同0.6人減)—などで多い

 

入院患者の1日当たり単価、心臓血管外科15万1500円、小児外科10万6100円

 最後に、DPC病院について、主な診療科別の入院患者1人1日当たり診療収入(つまり単価)を見てみると、次のような状況です。
▼総数:5万9600円(同900円増)
▼内科:4万8100円(同200円増)
▼呼吸器内科:4万5500円(同2000円増)
▼循環器内科:9万4800円(同5800円増)
▼消化器内科:4万9500円(同800円増)
▼皮膚科:4万3000円(同4300円増)
▼小児科:6万6700円(同2600円増)
▼外科:6万6200円(同1000円増)
▼呼吸器外科:8万9200円(同2600円減)
▼心臓血管外科:15万1500円(同1万1600円増)
▼消化器外科:7万2900円(同1600円減)
▼整形外科:5万8200円(同300円増)
▼小児外科:10万6100円(同8700円減)
▼リハビリ科:4万4100円(同7000円増)

診療科による増減があり、「心臓血管外科では大幅向上」「小児外科では大幅減少」などが目立ちます。

診療科別に入院患者の単価(1人・1日当たり診療収入)を見ると、心臓血管外科15万1500円、小児外科10万6100円などで高い

診療科別に入院患者の単価(1人・1日当たり診療収入)を見ると、心臓血管外科15万1500円、小児外科10万6100円などで高い

 
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