2016年から17年にかけて在院日数短縮と利用率上昇を両立―病院報告、2017年10月分
2018.2.8.(木)
2012年から6年間の10月分の平均在院日数・病床利用率を見ると、平均在院日数がおおむね減少する中で、月末病床利用率は上昇しており、2017年10月にも同様の傾向が見られる―。
このような状況が、厚生労働省が2月7日に公表した2017年10月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。
2017年9月と比べ、一般病床の利用率が上昇
厚労省は毎月、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を「病院報告」として公表しています(2017年9月分の状況はこちら、8月分の状況はこちら、7月分の状況はこちら)。
昨年(2017年)10月における(1)の1日平均患者数は、病院全体で入院123万8767人(前月比4562人・0.4%減)、外来134万5882人(同1613人・0.1%減)となり、入院・外来ともに前月からわずかに減少しています。病床種別(医療法)に入院患者数の動向を見ると、▼一般病床:66万7145人(同860人・0.1%減)▼療養病床:28万4416人(同1761人・0.6%減)―などと全種別で前月を下回っています。
(2)の平均在院日数については、病院全体では28.0日で前月と比べて0.1日短縮しました。病床種別に見ると、▼一般病床16.0日(前月と比べて変化なし)▼療養病床148.4日(同2.5日短縮)▼療養病床のうち介護療養病床313.0日(同13.9日短縮)▼精神病床269.2日(同3.7日延伸)▼結核病床68.9日(同0.4日短縮)―となり、精神病床では前月より延伸してしまいましたが、おおむね短くなっています。
(3)の月末病床利用率に目を移すと、病院全体では79.5%で、前月に比べて2.5ポイント上昇しました。病床種別に見ると、▼一般病床75.0%(前月比4.5ポイント上昇)▼療養病床86.8%(同0.3ポイント低下)▼療養病床のうち介護療養病床90.3%(同0.7ポイント低下)▼精神病床85.4%(同0.3ポイント低下)▼結核病床33.4%(同0.8ポイント低下)―という状況で、一般病床の月末病床利用率だけが大きく上昇しています。
2016年に延伸した在院日数が再び短縮
一般病床における10月分の平均在院日数の推移を5年前から見てみると、▼2012年:16.9日→(0.1日短縮)→▼2013年:16.8日→(0.5日短縮)→▼2014年:16.3日→(0.2日短縮)→▼2015年:16.1日→(0.1日延伸)→▼2016年:16.2日→(0.2日短縮)→▼2017年:16.0日―となっています(厚労省のサイトはこちら、ページ下部に毎月の状況がまとめられています)。2016年にいったん延びてしまった後、再び短縮しています。
一方、月末病床利用率は、▼2012年:75.2%→(0.9ポイント低下)→▼2013年:74.3%→(0.8ポイント低下)→▼2014:73.5%→(3.1ポイント低下)→▼2015年:70.4%→(3.6ポイント上昇)→▼2016年:74.0%→(1.0ポイント上昇)→▼2017年:75.0%―という状況です。こちらは、2015年にいったん大きく下がった後、上昇が続いています。
メディ・ウォッチで度々お伝えしているとおり、平均在院日数の短縮は、▼急性期病院における重症患者割合の向上▼DPC対象病院の「II群要件」の1つである「診療密度」向上―などに大きく寄与するなど、経営面では極めて重要なテーマの1つです。院内感染やADL低下のリスクを低減でき、医療の質向上にも貢献します。このため、急性期に限らず、すべての医療機関が在院日数短縮を目指すべきと言えます。
ただし、在院日数を短くした分、新入院患者数を増加させなければ、空床が発生(病床利用率の低下)して経営状況の悪化を招く恐れもあり、▼かかりつけ医と連携し、入院が必要な重症患者を紹介してもらう▼救急搬送患者を積極的に受け入れる―のような新入院患者の獲得策とセットで在院日数を縮めることが重要です。
ところで、我が国は人口減少社会に入っており、地域の患者数そのものが減少していきます。早急に、病床機能報告の結果(地域における他院の動き)▼自院の実際の姿▼地域の医療ニーズ(人口動態や疾病構造など)―などを総合的に捉えて、「ダウンサイジング」(病床の削減)や「近隣病院との再編・統合」なども視野に入れることが重要でしょう。
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