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「8月分」では、2016年から17年にかけて在院日数短縮と利用率向上を「両立」―病院報告、2017年8月分

2017.12.12.(火)

 ここ5年における「8月分」の平均在院日数・病床利用率を見ると、「平均在院日数」は概ね減少が続き、あわせて病床利用率も低下を続けていたが、2016年8月と17年8月とを比較すると、「在院日数を短縮」させながら「利用率の向上」を実現できている—。

 このような状況が、厚生労働省が12月5日に公表した2017年8月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。

病院の再編・統合、働き方改革にも効果あり

 厚労省は毎月、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を「病院報告」として公表しています(2017年7月分の状況はこちら、17年6月分の状況はこちら、17年5月分の状況はこちら)。

 今年(2017年)8月における(1)の1日平均患者数は、病院全体で入院125万590人(前月比2890人・0.2%増)、外来136万2763人(同3万6634人・2.8%増)となり、入院・外来ともに前月から増加しています。病床種類別(医療法)に入院患者数の動向を見ると、▼一般病床:67万3426人(同2250人・0.3%増)▼療養病床:28万7342人(同293人・0.1%増)―などとなりました。

2017年8月、病院の1日平均患者数は入院・外来ともに前月から増加した

2017年8月、病院の1日平均患者数は入院・外来ともに前月から増加した

  
 (2)の平均在院日数については、病院全体では27.4日で前月から0.7日短縮しました。病院の病床種別に見ると、▼一般病床15.6日(前月比0.5日短縮)▼療養病床149.3日(同4.1日短縮)▼介護療養病床316.1日(同12.2日短縮)▼精神病床264.3日(同0.4日短縮)▼結核病床66.8日(同3.9日短縮)―となり、全病床種別で短縮しました。
一般病床の平均在院日数は、今年(2017年)7月から8月にかけて0.5日短縮した

一般病床の平均在院日数は、今年(2017年)7月から8月にかけて0.5日短縮した

 
 また(3)の月末病床利用率に目を移すと、病院全体では80.0%で、前月に比べて0.5ポイント上昇しました。病院の病床種別に見ると、▼一般病床75.2%(前月から0.8ポイント上昇)▼療養病床87.9%(同0.3ポイント上昇)▼介護療養病床91.1%(同増減なし)▼精神病床86.2%(同増減なし)▼結核病床35.0%(同0.4ポイント上昇)―という状況です。ほぼすべての病床で利用率が向上しており、後述するように、難しい「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の上昇」との両立を実現できています。
一般病床の病床利用率は、今年(2017年)7月から8月にかけて0.8ポイント向上した

一般病床の病床利用率は、今年(2017年)7月から8月にかけて0.8ポイント向上した

  
 次に一般病床における「8月末分」の平均在院日数を5年前から見てみると、▼2012年:16.9日→(0.2日短縮)→▼2013年:16.7日→(0.2日短縮)→▼2014年:16.5日→(0.3日短縮)→▼2015年:16.2日→(0.5日短縮)→▼2016年:15.7日→(0.1日短縮)→▼2017年:15.6日―と推移しています(厚労省のサイトはこちら、下にスクロールすると毎月の状況が示されています)。2016から17年にかけて順調に短縮している状況が伺えます。

 一方、病床利用率は、▼2012年:74.3%→(2.8ポイント低下)→▼2013年:71.5%→(1.6ポイント低下)→▼2014:69.9%→(2.9ポイント上昇)→▼2015年:72.8%→(1.8ポイント上昇)→▼2016年:74.6%→(0.6ポイント上昇)→▼2017年:75.2%―という状況です(厚労省のサイトはこちら、下にスクロールすると毎月の状況が示されています)。こちらは上昇・低下を繰り返しており、明確な傾向は読み取れませんが、在院日数の短縮が相当程度進んできた2016年から17年にかけて上昇している点が注目に値します。

 メディ・ウォッチで度々お伝えしているとおり、「平均在院日数の短縮」は、▼7対1や10対1病院における重症患者割合の向上▼DPCのII群要件の1つである「診療密度」向上―などに大きく寄与するなど、経営面では極めて重要なテーマの1つとなります。また経営面から離れて、院内感染・ADL低下のリスク低減といった「医療の質向上」にもつながります。在院日数短縮の努力はすべての医療機関で進めていくべきテーマであり、2018年度の次期診療報酬改定でも、例えば「入退院支援の充実」などが重要項目の1つに掲げられているとおりです。

 ただし単純な在院日数短縮は「病床利用率の低下」(空床の発生)を招くため、経営面ではデメリットもあります。しかし「利用率維持のために、在院日数の短縮は控えめにしよう」というコントロールは、医療の質向上・患者満足度向上から離れてしまいます。例えば、在院日数短縮のために「後方連携」を進めながら、同時に近隣のクリニックや中小病院との「前方連携」を強化し、「重症の紹介患者」獲得を目指すことが重要です。この点、「2016年8月と2017年8月」を比較すると、困難な「両立」が実現できています。

なお、人口減少社会に入った我が国では、地域の患者数そのものが減少しています(近い将来、大都市でも人口が減少していく)。その中では、▽地域医療構想(将来の医療提供体制像)▽病床機能報告の結果(地域における他院の動き)▽自院の実際の姿▽地域の医療ニーズ(人口動態や疾病構造など)―などを総合的に捉え、将来的には「ダウンサイジング」(病床の削減)や「近隣病院との再編・統合」などを考えることも必要となってきます(関連記事はこちらこちらこちら)。別の機会に述べますが、再編・統合は「働き方改革」にもつながる点に留意が必要です。

 
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