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「7月分」のみ比較では、2016年から17年にかけて在院日数短縮と利用率向上を「両立」―病院報告、2017年7月分

2017.11.8.(水)

 ここ5年における「7月分」の平均在院日数・病床利用率を見ると、「平均在院日数」は概ね減少が続き、あわせて病床利用率も低下を続けていたが、2016年7月と17年7月とを比較すると、「在院日数は維持」しながら「利用率を向上」させている—。

 このような状況が、厚生労働省が11月7日に公表した2017年7月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。

人口減少社会を踏まえ、ダウンサイジングや再編統合も視野に入れるべき

 厚労省は毎月、「病院報告」として(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を公表しています(2017年6月分の状況はこちら、17年5月分の状況はこちら、17年4月分の状況はこちら)。

 今年(2017年)7月における(1)の1日平均患者数は、病院全体で入院124万7700人(前月比739人・0.1%増)、外来132万6219人(同7万9169人・5.6%減)となり、入院は横ばい、外来は減少という状況です。病床の種類別(医療法)に入院患者数の動向を見ると、▼一般病床:67万1176人(同520人・0.1%増)▼療養病床:28万7049人(同595人・0.2%減)―などとなっています。

2017年7月、病院の1日平均患者数は入院では横ばい、外来では減少となった

2017年7月、病院の1日平均患者数は入院では横ばい、外来では減少となった

 
 また(2)の平均在院日数を見ると、病院全体では28.1日で前月から0.6日延びてしまいました。病院の病床種別に見ると、▼一般病床16.1日(前月比0.4日延伸)▼療養病床153.4日(同7.9日延伸)▼介護療養病床328.3日(同20.1日延伸)▼精神病床264.7日(同8.3日延伸)▼結核病床70.7日(同8.5日延伸)―となり、全病床種別で延伸してしまっています。
一般病床の平均在院日数は、今年(2017年)6月から7月にかけて0.4日と延伸してしまった

一般病床の平均在院日数は、今年(2017年)6月から7月にかけて0.4日と延伸してしまった

 
 さらに(3)の月末病床利用率に目を移すと、病院全体では79.5%で、前月に比べて0.7ポイント向上しました。病院の病床種別に見ると、▼一般病床74.4%(前月から1.1ポイント向上)▼療養病床87.6%(同0.2ポイント低下)▼介護療養病床91.1%(同0.3ポイント向上)▼精神病床86.2%(同0.2ポイント向上)▼結核病床34.6%(同0.7ポイント向上)―という状況です。療養病床を除き、多くの病床で利用率が向上していますが、前述の「平均在院日数」の延伸と併せて考えると、手放しで喜べる状況とは言えません。
一般病床の病床利用率は、今年(2017年)6月から7月にかけて1.1ポイント向上した

一般病床の病床利用率は、今年(2017年)6月から7月にかけて1.1ポイント向上した

 
 次に一般病床における「7月末分」の平均在院日数を5年前から見てみると、▼2012年:17.2日→(0.6日短縮)→▼2013年:16.6日→(0.3日短縮)→▼2014年:16.3日→(0.4日短縮)→▼2015年:15.9日→(0.2日短縮)→▼2016年:16.1日→(変化なし)→▼2017年:16.1日―と推移しています(厚労省のサイトはこちら、下にスクロールすると毎月の状況が示されています)。2016から17年にかけて変化なし(短縮していない)という状況ですが、概ね「短縮が進んでいる」と見ることもできそうです。

 一方、病床利用率は、▼2012年:75.8%→(0.1ポイント低下)→▼2013年:75.7%→(1.1ポイント低下)→▼2014:74.6%→(0.8ポイント低下)→▼2015年:73.8%→(2.6ポイント低下)→▼2016年:71.2%→(3.2ポイント向上)→▼2017年:74.4%―という状況です(厚労省のサイトはこちら、下にスクロールすると毎月の状況が示されています)。こちらは「5月分」「6月分」と異なり、2016年まで低下が続き、17年に盛り返した格好です。

 メディ・ウォッチでは度々お伝えしていますが、「平均在院日数の短縮」は、▼7対1や10対1病院における重症患者割合の向上▼DPCのII群要件の1つである「診療密度」向上―などに大きく寄与するなど、経営面では極めて重要なテーマの1つとなります。それに加え、院内感染やADL低下のリスク低減といった「医療の質向上」にも極めて密接に関係します。在院日数短縮の努力はすべての医療機関で進めていくことは、現時点でも変わらず重要と言えます。

 ただし単純な在院日数短縮は「病床利用率の低下」(空床の発生)を招き、経営面ではマイナスの要素も含んでいることは事実です。2012年から16年にかけての「平均在院日数の短縮、利用率の低下」状況を見れば一目瞭然です。

このため「利用率を維持しなければならないので、在院日数の短縮はこの程度にしておこう」という在院日数短縮コントロールをしがちですが、これは「医療の質向上」「患者満足度の向上」に向けた正しい姿とは言えません。在院日数の短縮は進めながら、併せて「新規入院患者の獲得」などの対策、近隣のクリニックや中小病院との連携強化による「重症新患の紹介」増や、救急搬送患者の積極的受け入れなどが肝要です。この点、「2016年7月と2017年7月」というミクロの比較では、在院日数を維持したまま、利用率を大きく向上させており、困難な「両立」ができているように見えます。より長期的な視点で調査分析していく中でも、この「両立」に期待が集まります。

 なお、我が国はすでに人口減少社会に入っており、東京や大阪、福岡といった大都市を除き、地域の患者数そのものが減少しています(近い将来、大都市でも人口が減少していく)。その中では、▽地域医療構想(将来の医療提供体制像)▽病床機能報告の結果(地域における他院の動き)▽自院の実際の姿▽地域の医療ニーズ(人口動態や疾病構造など)―などを総合的に捉え、将来的には「ダウンサイジング」(病床の削減)や「近隣病院との再編・統合」などを考えることも必要となってきます(関連記事はこちらこちらこちら)。

 
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