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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

2016年から17年にかけて在院日数が短縮し、利用率も低下―病院報告、2017年9月分

2018.1.11.(木)

 ここ5年における「9月分」の平均在院日数・病床利用率を見ると、「平均在院日数」の減少傾向が続く中で、2015年まで月末病床利用率が上昇していたが、2016年以降は低下してしまっている—。

 このような状況が、厚生労働省が1月10日に公表した2017年9月分の病院報告から分かりました(厚労省のサイトはこちら)。

安定経営と在院日数短縮を両立させる難しさが際立つ

 厚労省は毎月、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を「病院報告」として公表しています(2017年8月分の状況はこちら、17年7月分の状況はこちら、17年6月分の状況はこちら)。

 昨年(2017年)9月における(1)の1日平均患者数は、病院全体で入院124万3329人(前月比7261人・0.6%減)、外来134万7495人(同1万5268人・1.1%減)となり、入院・外来ともに前月から減少しています。病床種別(医療法)に入院患者数の動向を見ると、▼一般病床:66万8005人(同5421人・0.8%減)▼療養病床:28万6177人(同1165人・0.4%減)―などと全種別で前月を下回っています。

2017年9月、病院の1日平均患者数は入院・外来ともに前月を下回った

2017年9月、病院の1日平均患者数は入院・外来ともに前月を下回った

 (2)の平均在院日数については、病院全体では28.1日で前月から0.7日延伸してしまいました。病床種別に見ると、▼一般病床16.0日(前月比0.4日延伸)▼療養病床150.9日(同1.6日延伸)▼療養病床のうち介護療養病床326.9日(同10.8日延伸)▼精神病床265.5日(同1.2日延伸)▼結核病床69.3日(同2.5日短縮)―となり、残念ながら全病床種別で前月より延伸してしまっています。

一般病床の平均在院日数は、2017年8月から9月にかけて0.4日延伸した

一般病床の平均在院日数は、2017年8月から9月にかけて0.4日延伸した

 また(3)の月末病床利用率に目を移すと、病院全体では77.0%で、前月に比べて3.0ポイント低下してしまいました。病床種別に見ると、▼一般病床70.5%(前月比4.7ポイント低下)▼療養病床87.1%(同0.8ポイント低下)▼療養病床のうち介護療養病床91.0%(同0.1ポイント低下)▼精神病床85.7%(同0.5ポイント低下)▼結核病床34.2%(同0.8ポイント低下)―という状況です。

 在院日数が延伸しているにもかかわらず、病床利用率を維持できておらず、後述するように「新患獲得」などに苦労している状況が伺えます。

一般病床の月末病床利用率は、2017年8月から9月にかけて4.7ポイントも低下してしまった

一般病床の月末病床利用率は、2017年8月から9月にかけて4.7ポイントも低下してしまった

 次に一般病床における「9月分」の平均在院日数を5年前から見てみると、▼2012年:17.8日→(0.3日短縮)→▼2013年:17.5日→(1.0日短縮)→▼2014年:16.5日→(変化なし)→▼2015年:16.5日→(0.3日短縮)→▼2016年:16.2日→(0.2日短縮)→▼2017年:16.0日―と推移しています(厚労省のサイトはこちら、下にスクロールすると毎月の状況が示されています)。少しずつではありますが、短縮が着実に進んでいる状況が伺えます。

 一方、月末病床利用率は、▼2012年:70.9%→(2.1ポイント上昇)→▼2013年:73.0%→(0.1ポイント上昇)→▼2014:73.1%→(0.9ポイント上昇)→▼2015年:74.0%→(1.1ポイント低下)→▼2016年:72.9%→(2.4ポイント低下)→▼2017年:70.5%―という状況です。こちらは、2015年まで上昇が続いた後に低下してしまっています。

 メディ・ウォッチで度々お伝えしているとおり、「平均在院日数の短縮」は、▼7対1や10対1病院における重症患者割合の向上▼DPCのII群要件の1つである「診療密度」向上―などに大きく寄与するなど、経営面では極めて重要なテーマの1つとなります。また経営面から離れて、院内感染・ADL低下のリスク低減といった「医療の質向上」にもつながります。つまり、在院日数短縮の努力は急性期に限らず、すべての医療機関で進めていくべきテーマであり、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定でも、例えば早期退院に向けた介護サービス事業者との連携が促されている見通しです

 とはいえ、単純に在院日数を短縮するだけでは、「病床利用率の低下」(空床の発生)につながり、経営状況の悪化を招く恐れもあります。そこで、▼かかりつけ医と連携する▼救急搬送患者を受け入れる―といった新入院患者の獲得策とセットで在院日数を縮めることが重要と言えます。この点、2016年8月と2017年8月とを比較すると、平均在院日数が0.1日短縮する一方で月末病床利用率が0.6ポイント上昇し、困難な「両立」を実現していました。しかし、2016年9月と2017年9月とを比較すると月末病床利用率が低下しており、「両立」の難しさが際立ちます。

 なお、人口減少社会に入った我が国では、地域の患者数そのものが減少しています(近い将来、大都市でも人口が減少していく)。その中では、▽病床機能報告の結果(地域における他院の動き)▽自院の実際の姿▽地域の医療ニーズ(人口動態や疾病構造など)―などを総合的に捉えて、「ダウンサイジング」(病床の削減)や「近隣病院との再編・統合」を視野に入れることも必要となるでしょう(関連記事はこちらこちらこちら)。

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