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2019年8月末までに1472件の医療事故が生じ77%で院内調査完了、医療機関の調査スピードアップ―日本医療安全調査機構

2019.9.11.(水)

 今年(2019年)8月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は20件。2015年10月の医療事故調査制度発足から累計1472件の医療事故が報告され、このうち77.0%の1133件で院内調査が完了している。一般国民へ制度が相当浸透してきているが、「正しい理解」が依然として重要課題である―。

 日本で唯一のセンターである「日本医療安全調査機構」は9月9日に「医療事故調査制度の現況報告(8月)」を公表し、こうした状況を明らかにしました(機構のサイトはこちら)。

2019年8月の医療事故報告件数、内科で4件、外科で3件

 2015年10月以降、すべての医療機関等(病院、診療所、助産所)に対し、院長などの管理者が予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産」のすべてをセンターに報告する義務が課せられました【医療事故調査制度】。事故の原因・背景を調査・分析して「再発防止策」を構築し、医療現場に広く共有し、医療安全を確保することを目指す制度です(関連記事はこちら)。

センターでは重大事故について詳細を分析した結果を、これまでに以下の9つの提言としてまとめています)。
(1)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―
(2)急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析
(3)注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析
(4)気管切開術後早期の気管切開チューブ逸脱・迷入に係る死亡事例の分析
(5)腹腔鏡下胆嚢摘出術に係る死亡事例の分析
(6)栄養剤投与目的に行われた胃管挿入に係る死亡事例の分析
(7)一般・療養病棟における非侵襲的陽圧換気(NPPV)及び気管切開下陽圧換気(TPPV)に係る死亡事例の分析
(8)救急医療における画像診断に係る死亡事例の分析
(9)入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析

 
 医療事故調査制度の概要は、大きく次のとおりです(関連記事はこちら)。

▼医療事故の発生を確認した管理者(院長など)は、速やかにセンターへ事故発生を報告する

▼事故が発生した医療機関で、自ら事故原因を調査【院内調査】し、調査結果をセンターに報告する

▼当該医療機関は、調査結果に基づいて事故の内容や原因を遺族に説明する(調査結果報告書の提示までは義務付けられていない)

▼センターで事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを練る

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける

 
  
 我が国唯一のセンターである日本医療安全調査機構は、毎月、医療事故報告の状況を公表しています(前月の状況はこちら、前々月の状況はこちら)。今年(2019年)8月には、新たに20件の医療事故が報告され、制度発足からの累計報告件数は1472件となりました。

 今年(2019年)8月に新たに報告された事故20件の内訳は、病院から19件、診療所から1件でした。制度発足からの累計では、病院から1388件(事故全体の94.3%)、診療所から84件(同5.7%)となっています。

 今年(2019年)8月に新たに報告された事故を診療科別に見ると、▼内科:4件▼外科:3件▼消化器科:2件▼脳神経外科:2件―などで多くなっています。制度発足からの累計を見ると、▼外科:246件(同16.7%)▼内科:183件(同12.4%)▼整形外科:121件(同8.2%)▼消化器科:119件(同8.1%)▼循環器内科:117件(同7.9%)―などで多くなっています。

 

センターへの相談件数は累計7583件、一般国民の正しい理解にはまだまだ道険し

 センターへの報告が義務付けられている医療事故は、医療機関内で生じたすべての死亡・死産事例ではありません。

上述したとおり、死亡・死産事例のうち「院長などの管理者が、▼予期せず▼医療に起因し、または起因すると疑われる—もの」に限定されます。例えば、火災で極めて重度の熱傷を負った被害者が救急搬送され、適切な治療の甲斐なく死亡してしまったケースなどでは、一般に「死亡が予期」され、センターへの報告は必要ないでしょう。ただし、そうした患者でも、明らかな処置上のミスなどがあり通常の経過とは異なるプロセスで死亡した場合には、「予期しなかった」ものとしてセンターへの報告が必要となってきます。

 もちろん、どこまでが「予期された」ものなのかの判断は難しいところがあり、医療現場では「患者が死亡したが報告すべき医療事故に該当するのだろうか?」という疑問、また「初めての医療事故で、センターへどのように報告すればよいのか分からない」といったケースも生じることがあるでしょう。

一方、遺族の中には「家族が医療機関で死亡したが、医療事故として報告されていないようだ。事故を隠蔽しようとしているのではないか?」との疑念をもつ方もいらっしゃるでしょう。

 こうした疑問・疑念の放置は制度の信頼性を失墜させてしまうため、センターでは相談対応を行っています。今年(2019年)8月には、新たに143件の相談がセンターに寄せられ、制度発足からの累計では7583件となりました。

 今年(2019年)8月に新たに寄せられた相談の内訳は、▼医療機関から:61件▼遺族などから:69件▼その他・不明:13件―でした。

 医療機関からの相談内容を見ると、最も多いのは「報告の手続き」に関するもので35件(医療機関からの相談全体の50.7%)。次いで「院内調査に関するもの」19件(同27.5%)、「報告すべき医療事故か否かの判断」8件(同11.6%)などとなっています。医療現場における制度の趣旨・内容の浸透程度を伺うことができます。

 一方、遺族などからの相談内容を見てみると、「医療事故に該当するか否かの判断」が59件(遺族などからの相談全体の76.6%)と圧倒的多数を占めています。ただし、「制度開始前の事例」「生存事例」など、そもそも報告対象とならないものに関する相談も含まれており、一般国民の「正しい理解」が依然として重要な課題となっています。

 

センターへの調査依頼は新たに遺族から5件、医療機関から1件

 上述したとおり、医療事故調査制度の目的は「再発防止」にあります。再発防止のためには、事故が生じた医療機関等自らが調査を行い、自院の体制や手続き・ルールなどに問題がなかったかを検証する過程で「院内の課題」を発見し、そこから防止策構築に繋げることが重要とされており、「まず事故が発生した医療機関が、自ら原因究明に向けた調査【院内調査】を行う」ことが求められます。

 今年(2019年)8月に新たに院内調査が完了した事例は31件で、制度発足からの累計では1133件となりました。これまでに報告された全1472件の医療事故のうち77.0%(前月から1.1ポイント増加)で院内調査が完了しており、院内調査のスピードがますます上がっていることを確認できます。

 
 
 なお、遺族側には「院内調査結果に納得がいかない」「院内調査が遅すぎる。何かを隠しているのではないか」との思いが生じることもあるかもしれません。一方で、診療所や助産所などの小規模施設では、「自前で院内調査を実施することが難しい」ケースもあると思われます(医師会や病院団体などの支援団体によるサポート体制あり)。

 そこでセンターでは、「遺族や医療機関等からの調査依頼を受け付ける」体制も整備しています。そこでは「センターが最初から調査する」のではなく、「院内調査が時期・内容ともに適切に実施されたのか」という観点での調査が中心です。

 今年(2019年)8月に、センターになされた調査依頼は遺族等からの5件、医療機関からの1件で、合計6件でした。制度発足からの累計調査依頼件数は102件(遺族から83件・81.4%、医療機関から19件・18.6%)となり、センター調査の進捗状況を見ると23件で調査が終了しています(前月から1件増加)。

 
 

 

  

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