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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

機能転換進める民間病院に対し、大胆な財政支援を行え―経済財政諮問会議

2019.11.6.(水)

地域医療構想の実現に向けて、病床機能転換などを積極に進める民間病院に対し、今後3年間程度を集中改革期間に位置付け大胆な財政支援を行うべきである―。

10月28日に開催された経済財政諮問会議で、民間議員からこういった意見が出されました(関連記事はこちら)。

病床機能の再編は「官民問わず」行うべき

経済財政諮問会議は、我が国の財政を健全化し、同時に、経済を再生するために、毎年度「経済財政運営と改革の基本方針」(いわゆる骨太の方針)を策定します。そこでは、高齢化の進展や医療技術の高度化などにより膨張を続ける社会保障費を、我々国民が負担しきれる範囲に抑えるための方策も積極的に議論されています。

2022年度から、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。このため、今後、急速に医療・介護ニーズが増加していきます。その後2040年にかけて、高齢者の増加ペース自体は鈍化するものの、支え手である現役世代人口が急速に減少していくことが分かっており、社会保障制度の基盤が極めて脆くなっていきます。経済・財政の再生には、「社会保障費の膨張を抑える」(国民が負担可能な水準に抑える)とともに、「安定した社会保障制度を運用する」(確実なセーフティネットを整備する)ことが必要なためです。

10月28日の会合では、民間議員(竹森俊平議員:慶應義塾大学経済学部教授、中西宏明議員:日立製作所取締役会長兼執行役、新浪剛史議員:サントリーホールディングス代表取締役社長、柳川範之議員:東京大学大学院経済学研究科教授)から社会保障制度改革に関して、(1)地域医療構想の実現(2)イノベーティブな医薬品産業への転換、診療報酬改定(3)40~50 歳代の生活習慣病等の予防への重点的取組(4)保険者インセンティブの強化(5)介護現場の生産性向上(6)データヘルス改革(7)今後の進め方―の7項目の提言が示されました。抽象的なものから、極めて個別具体的な提言まで、さまざまな内容が混在しています。

まず(1)の地域医療構想については、「進捗が十分でない」とし、▼急性期から回復期への病床転換▼官民合わせて過剰となる約13万床の病床削減▼介護医療院を含む介護施設、在宅医療への転換―を重点的に推進することが必要とし、次のような提言を行いました。

▽病床再編について、まず地域医療の中核を担う公立・公的病院を手始めに、官民ともに着実に進めるべき

▽厚労省は、病床過剰地域にある民間病床の再編に資する分析を今年度(2019年度)内に示すとともに、病床機能転換、病床の整理・合理化を積極的に図る民間病院等に対し、今後3年程度に限り(集中再編期間)大胆に財政支援をすべき

▽急性期(旧7対1)病床や療養病床からの転換に向けた診療報酬措置の効果を検証し、転換を加速する対応策を講ずべき

▽地域医療介護総合確保基金について、都道府県別の成果指標の設定・見える化、成果に応じた配分の仕組みを今年度(2019年度)内に構築すべき

▽医療療養から介護医療院への移行に伴う市町村の介護保険料負担の実態・見通しを把握し、各市町村の実情に応じた支援が可能となるような仕組みを構築すべき

公立・公的病院等については、がんや心疾患、脳血管疾患などの急性期医療に関する診療実績をもとに、「診療実績が特に少ない」「機能の類似する病院が近隣にある」424病院について、機能分化・ダウンサイジングを含む再編統合の必要性を再検証することが要請されます(424病院の選定ロジックに関する記事はこちら)。

こうした機能の在り方の検証は、424病院以外の公立・公的病院等、さらに民間病院についても必要なテーマです。このため厚生労働省は、近く「民間病院の診療実績データ」なども都道府県・地域医療構想調整会議に提示する考えです(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

今般の「機能転換等を進める民間病院への大胆な財政支援」が、従前からの地域医療介護総合確保基金とどういった関係にあるのかなどは明らかでありませんが、民間議員は「設立母体を問わず、自院の機能を見つめ直し、必要な機能分化等を進めるべき」との考えを強く持っていることが伺えます。



なお、上述の「官民合わせて過剰となる約13万床の病床削減」とは、「地域医療構想における必要病床数(病床の必要量)」と「2017年度の病床機能報告における機能別の病床数」とを比較したものと考えられます。

しかし、前者の「地域医療構想における必要病床数」は「医療資源投入量等をベースに算出した機能別のベッド数」であるのに対し、後者は「機能別の病棟病床数」であり、両者を単純に比較することはできません。病床機能報告では、ある病棟の機能について、入院患者の中で最も多い状態(▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期―)に合わせて選択することになります。例えば、極論になりますが、「急性期患者が51%、回復期患者が49%入院している病棟」は「急性期」と報告し、49%の回復期患者用の病床数は数字に表れてこないのです。このため、何年も前から「理論的にも病床数と病床機能報告とは単純比較できず、してはならない」ことが医療関係者の間では「常識」とされており、経済財政諮問会議でもこうした点を踏まえた議論が行われることが期待されます。

経済財政諮問会議は地域医療構想の実現を強く求めている(経済財政諮問会議1 191028)



また(2)では、2020年度の診療報酬改定や医療保険制度改革に向けて、▼製薬産業について「長期収載品に依存するモデル」から「より高い創薬力を持つ産業構造」への転換を大胆に推進する▼薬剤の投与日数や剤数に応じて調剤料が増える算定方式の見直し、おくすり手帳の管理など必ずしも効果が明らかでない薬学管理料の見直しなどを行う(調剤報酬の適正化)▼後発医薬品の使用促進に向けた新たな目標を検討する▼入院時等を除き、市販品類似薬(スイッチOTC医薬品等)を保険給付対象から外す―ことなどを求めています。

今後の社会保障審議会・医療保険部会や中央社会保険医療協議会の論議にどういった影響を及ぼすのか、経済財政諮問会議の動きにも注目があつまります。



また(5)の「介護現場の生産性向上」に関しては、▼2018年度介護報酬で導入された、見守り機器導入促進のための【夜勤職員配置加算】の要件緩和は利用割合が6%程度にすぎない。低利用の原因を明らかにし、より大胆な配置基準の見直しや導入支援の拡充、加算の強化等によって効率化を進める▼厚労省が定めた標準仕様に対応した介護ソフトを導入する介護事業者への支援を拡充する▼社会福祉法人の連携法人制度創設に向けて来年度(2020年度)内に必要な措置を講じ、経営の大規模化・共同化を促す―ことを求めました。

経済財政諮問会議は地域医療構想の実現を強く求めている(経済財政諮問会議2 191028)

 
 
 
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看護必要度IとIIとで重症患者割合に大きな乖離、要因を詳しく分析せよ―中医協・基本小委
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7対1から急性期2・3への移行は3%強にとどまる、看護必要度IIの採用は2割弱―入院医療分科会(1)
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DPC対象病院の要件を見直すべきか、入院日数やDPC病床割合などに着目して検討―入院医療分科会(1)
2018年度改定で新設された【急性期一般入院料1】を選択する理由はどこにあるのか―入院医療分科会
2020年度の次期診療報酬改定に向け、急性期一般入院料や看護必要度などを調査―入院医療分科会



2018年度、1000万円以上の超高額レセプトが増加、1か月の医療費最高額は血友病A患者の9058万円―健保連



75歳以上の自己負担を原則2割に引き上げ、市販品類似薬の保険給付見直しを―健保連
医療保険財政が逼迫する中、「軽症者の保険給付範囲縮小」へ舵を切るべきでは―健保連、全国健康保険協会



厚労省の鈴木医務技監「医療機能の分化と資源集約を進め、働き方改革にも備えよ」―GHC15周年感謝祭(1)



設立母体に関係なく「地域医療提供体制の将来像の青写真」を議論することが必要―日病・相澤会長
424再検証病院の「急性期ベッド削減」に終わらせず、民間病院も踏まえた地域医療の再検証を―日病・相澤会長

「医療の質」を追求していけば、診療報酬のほうが病院を追いかけてくる―GHC15周年感謝祭(2)
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424公立・公的病院等以外の病院も、機能分化やダウンサイズなど積極的に検討せよ―地域医療構想意見交換会
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機能分化やダウンサイジング等の必要性を改めて検証すべき424公立・公的病院等を公表―地域医療構想ワーキング
多くの機能で「診療実績が少ない」「類似病院が近接している」病院、再編統合を検討―地域医療構想ワーキング
公立・公的病院等の機能改革、「地域で求められる機能を果たしているか」との視点で検証を―厚労省・医療政策研修会

2018年度の病床機能報告、高度急性期13.6%・急性期44.5%・回復期13.5%・慢性期28.4%―地域医療構想ワーキング(2)