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医療機関の働き方改革状況、「5段階評価」でなく、時短への取り組みなど「定性的に評価」する方向へ―医師働き方改革推進検討会(1)

2021.9.16.(木)

勤務医が960時間を超える時間外労働をするためには、勤務先医療機関が都道府県からB水準やC水準などの指定を受けていなければならない。指定を受けるためには「医療機関勤務環境評価センター」(評価センター、従前は「評価機能」と呼ばれていた)での評価を受ける必要がある―。

この評価結果について、これまで「S・A・B・C・D」の5段階評価とする方向で検討が進んできたが、医療機関の労働時間短縮に向けた努力を公正・公平な形で評価するために▼労働関係法令・医療法規定事項の遵守▼労働時間短縮等に向けた取り組み状況▼労働時間の実績―を組み合わせた「定性的な評価」とする―。

都道府県では、B水準等の指定結果とともに、評価内容等を公表する―。

9月15日に開催された「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった内容が概ね固められました。検討会では「C2水準の在り方」について意見が割れており、こちらは別稿で報じます。

9月15日に開催された「第15回 医師の働き方改革の推進に関する検討会」

労務管理・時短に向けた取り組み・時短実績それぞれを定量評価し、組み合わせる

2024年4月から、【医師の働き方改革】がスタートします。

すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制(原則:年間960時間以下(A水準)、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関(B水準)や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(C水準)など:年間1860時間以下)を適用するとともに、一般労働者と比べて「多くの医師が長時間労働に携わらなければならない」状況に鑑みた、追加的健康確保措置(▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)―など)を講じる義務が医療機関の管理者に課されるものです。

医師働き方改革の全体像(中医協総会1 210721)



「医師の働き方改革」の枠組みは、「改正医療法」((良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための 医療法等の一部を改正する法律)に規定され(関連記事はこちら)、現在、施行に向けた準備が検討会で進められています(関連記事はこちら(評価センターの評価など)こちら(C2水準など)こちら(追加的健康確保措置の詳細など)こちら(地域医療への影響に関する調査結果など)こちら(医師勤務時間短縮計画など))。



「すべての勤務医の時間外労働を960時間以内に確実に収められる」医療機関以外は、都道府県から B・連携B・C水準の指定を目指すことになります(指定を受けない限り、ただの1人でも「年間960時間を超える時間外労働」に携わることはできない)。

B水準等の指定は、大きく次のような流れで進められます。
(1)医療機関で「医師労働時間短縮計画」(時短計画、タスク・シフト/シェアや、医師の業務内容見直し、勤務環境改選などを盛り込む)の作成や、「追加的健康確保措置」(連続勤務時間制限、勤務間インターバル確保、面接指導など)の体制確立を進める

(2)新設される「医療機関勤務環境評価センター」(評価センター、従前は「評価機能」と呼ばれていた)で、各医療機関の体制・取り組み状況を評価する

(3)都道府県において、評価センターの評価結果を参考に「B・連携B・C水準に指定するべきか否か」を決定する



このうち(2)の「評価センターによる評価」について、8月23日の前回会合では「S・A・B・C・Dの5段階で全体評価を行う」考えが示されました。

▼労務管理▼労働時間短縮に向けた取り組み▼労務管理体制の構築と労働時間短縮の実績―の3分野について、詳細に「〇」(できている)か、「×」(できていない)かを判断し、その積み上げによって「S」(非常に優れている)、「D」(計画等の見直しが必要である)などと判断するイメージです。明解ですが、例えば「労働時間短縮の実績」が表に現れにくくなり(時短を始めた当初は「短縮の度合い」は大きく実績が現れやすいが、時短が進行すると効果を出すことが難しくなってくる)、かえって評価が引くなる(B評価など)などの問題点が指摘されていました。

厚労省では、この問題点の背景には、▼労務管理▼労働時間短縮に向けた取り組み▼労務管理体制の構築と労働時間短縮の実績―の3分野を、言わば「同じ土俵」に立たせていることがあると見て、次のように「3分野の項目を、定性的に全体評価を行う」方向へと舵を大きく切り替えました。例えばある病院では、「労働時間短縮の実績」は十分でないが、「時短に向けた取り組み」を十分に行っていると評価され、別の病院では「労働時間短縮の実績」こそ出ているものの、「時短に向けた取り組み」にはまだまだ改善の余地があると評価される、といったイメージです。これらを5段階で「どちらが優れている」と断ずることはできず、「定性的に評価する」こととしたものです。、

【労務管理】
▽適切に労務管理体制が構築されているか▽36協定が締結されているか▽時短計画が作成されているか▽健診が実施されているか▽時間外労働が長時間におよぶ医師への面接指導体制が確立されているか―などが「すべて満たされている」かどうかを確認する
→1つでも満たされていない場合には評価が行われない(当然、B水準等の指定も行われない)

【医師の労働時間短縮に向けた取り組み)】
▽適切な勤務計画(シフト表)が作成されているか▽勤務時間の把握・管理が行われているか▽月の時間外労働が155時間を超えた場合の措置(面接指導→必要に応じた就業制限など)が行われているか▽医師の労働時間短縮に向けた研修が行われているか▽他職種へのタスク・シフトなどが進んでいるか▽医師の業務内容見直しが行われているか▽医師の働き方改革について、患者や地域住民への周知は行われているか―などについて、評価時点において「十分」か・「改善の必要がある」か、今後の取り組みが「十分」か・「見直しの必要がある」かを確認する

【労務管理体制の構築と労働時間短縮の取り組みの実施後の評価】
▽B・連携B・C水準対象医師の平均労働時間数は短縮しているか▽960時間を超える時間外労働を行う医師の人数・割合は減っているか▽職員満足度・患者満足度などの情報収集をしているか―などについて、「改善している」か「改善していない」か

評価センターによる全体評価イメージ、労務管理・時短への取り組み・時短効果を定性評価する(医師働き方改革推進検討会(1)1 210915)

都道府県では「指定の状況」と「全体評価結果・都道府県による支援」を公表

評価センターからは、こうした全体評価とともに、その内訳(▼労務管理▼労働時間短縮に向けた取り組み▼労務管理体制の構築と労働時間短縮の実績―の3分野に関し、「〇」(できている)か、「×」(できていない)かの詳細)が都道府県に示されます。

都道府県は、その評価結果をもとに「〇〇病院は時短にしっかり取り組んでおり、このままB水準指定を行って問題ない」「●●病院は時短への取り組みが十分でなく、勤務環境改善に向けた支援を行ったうえでB水準の指定を行う必要がある」などの検討を行い、「指定の可否」を決定。その結果を「公示」(公表)することが求められます(評価センターによる評価から1年以内)。

都道府県によるB水準指定等の公示イメージ(医師働き方改革推進検討会(1)2 210915)



あわせて、評価センターからの「全体評価」とともに、その評価を踏まえて都道府県がどのような支援を行ったのか(あるいは非常に高評価であり、都道府県の支援は不要であったのか)を公表することも求められます。

下表の例では、X病院の救急医療分野については、評価センターが「労働時間短縮の取り組み、実績とも十分である」とし、都道府県の支援なく「B水準に指定された」ことが分かります。

一方、Z病院の救急医療分野については、評価センターが「書面の評価では『時短などの取り組みが不十分』と判断して、訪問評価を行い、そこでもなお『見直しの必要』がある」と判断。都道府県の勤務環境改善支援センターが支援を継続していくことで「B水準の指定を許可した」ことが伺えます。

都道府県による全体評価結果・支援内容の公表イメージ(その1・B水準)(医師働き方改革推進検討会(1)3 210915)

都道府県による全体評価結果・支援内容の公表イメージ(その2・C水準)(医師働き方改革推進検討会(1)4 210915)



また、病院の中には「評価センターの評価結果が低く、かつ都道府県の支援をしてもなお、問題がある」などの理由で「B水準等の指定が見送られる」ケースも出てきます。その場合、上述した「公示」に病院名が記載されず、評価内容の身が公表されることとなり、「この病院は指定がなされなかったのであるな」と確認することができます。

なお、病院の中には「960時間を超える勤務医が出てくるかもしれないので、念のために評価を受けたが、結果として全員が960時間以内に収まり、B水準指定等を受けなかった」ケースも出てきます。その場合、指定の公示には含まれませんが、全体評価は「優れた取り組みを行っている」ものとなるため、「この病院は問題があって指定されなかったのではなく、A水準に収まったのであるな」と判断することができます。



こうした全体評価・評価結果の公表方針(従前からの見直し)について、検討会では、「5段階評価では誤解を招き、それが一人歩きしてしまいかねない。見直し案は妥当である」(岡留健一郎構成員:日本病院会副会長)、「ネガティブな部分を抑え、分かりやすい評価で妥当であると思う」(鈴木幸雄構成員:横浜市立大学医学部産婦人科客員研究員)、「間違ったメッセージとならないような工夫がなされている」(城守国斗構成員:日本医師会常任理事)などの好意的な意見が相次ぎました。

もっとも、「都道府県の支援内容について、少し踏み込んだ書き方をする余地もあるのではないか(「支援を行った」だけでは分かりにくく、恣意的な支援を招きはしないか)」(馬場武彦構成員(社会医療法人ペガサス理事長)、「指定に関する公示(公表)内容について、もう少し詳しい情報があると、勤務医にとっては病院選択がしやすくなる」(鈴木委員)と言った注文もついています。今後、さらにブラッシュアップされることが期待されます。

評価結果が存在しない病院では、「すでに勤務環境改善が十分に進んでいる」可能性も

ところで、全体評価が公表されることで、▼医療機関サイドには「自院の取り組みを改善する」モチベーションとなる▼勤務医サイドには「当該病院が働きやすいか」を判断する目安になる―などのメリットがあります。

前者と後者は関連しており、「働き方に関して高い評価結果が公表される」→「勤務医は『働きやすい病院』を選択することが多く、当該病院に優秀な勤務医が多く集まる」→「医療従事者が多くなることで、シフト等が組みやすくなる」→「1人1人の医療従事者の負担が減り、さらに勤務環境が良くなる」→「働き方に関して、さらに評価が高まる」という正のスパイラルが回ると期待されます。

また、優秀な医療従事者が集結することで「医療の質」が高まり、患者からの支持も高まることが期待され、結果「経営の好転」にもつながっていきます。

ただし、「すべての医療機関が評価センターの評価を受ける」わけではありません。「従前から労働時間短縮・勤務環境改善に努めており、十分、A水準でやっていける」と考えた病院は評価センターの評価を受けないこととなるかもしれません。いわゆる「ホワイト病院」「働きやすい病院」と考えられますが、評価を受けていないために、当然のことですが「評価結果の公表」はなされません。

こうした点を考えると、「評価結果の良い病院」のみが「優れた病院」と考えるのは早計に過ぎるでしょう(評価結果の高い病院が、優れた病院であることには疑いがない)。評価結果が存在しなくとも「優れた病院」であるケースもあり、厚労省では「評価結果は、『働きやすい転職先』を選択する際の1要素に過ぎない」ことを指摘しています。評価結果も参考に、また評価結果が存在しない病院には「すでに勤務環境改善が十分に進んでいる」可能性があることなども踏まえて、「働きやすい病院」を探すことが重要です。

なお、鈴木委員は「医師個人は無力であり、病院に『貴院の働き方に関する情報を出してほしい』と求めることは困難である」とし、労務環境に関する実情を調べやすくする工夫・配慮なども必要であると訴えています。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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