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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

新たな地域医療構想では、「回復期」機能にpost acute機能だけでなくsub acute機能も含むことを明確化—新地域医療構想検討会(2)

2024.10.1.(火)

今後、高齢救急患者への急性期治療・リハビリ・栄養補給・在宅復帰などの医療機能がさらに重要となることを踏まえ、新たな地域医療構想・病床機能報告では、「回復期」機能にpost acute機能だけでなく、sub acute機能も含むことを明確化し、定義・名称を見直してはどうか。これにより「見かけ上、急性期病床が過剰で、回復期が不足している」という問題も解消できると期待できる—。

また、新たな地域医療構想・病床機能報告では、療養病床などの「慢性期入院医療」と「在宅医療」や「介護施設等」とを一体的に考えてはどうか—。

また、新たな病床機能報告では「医療機関の機能」も報告することになるが、(1)高齢者救急の受け皿となり、地域への復帰を目指す機能(2)在宅医療を提供し、地域の生活を支える機能(3)救急医療等の急性期の医療を広く提供する機能(4)その他の機能(例えば回復期リハビリ病院機能や専門病院機能など)—の4機能としてはどうか—。

9月6日に開催された「新たな地域医療構想等に関する検討会」(以下、新検討会)では、こうした方向を概ね固めました。さらに議論を深め、年内の意見とりまとめを目指します(同日の医師偏在是正策論議に関する記事はこちら)。

9月30日に開催された「第6回 新たな地域医療構想等に関する検討会」

「回復期」機能には、post acute機能だけでなく、sub acute機能も含むことを明確化

2040年頃を念頭においた「新たな地域医療構想」策定論議が検討会で進んでいます(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、認知症高齢者の比率が高まる)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)▼人口構造の変化は、地域によって大きく異なる—ことなどを踏まえ、「2040年頃を見据えた新たな地域医療構想」を策定し、これに基づいて医療提供体制を地域ごとに改革していくことが求められているためです。

9月6日の検討会では「回復期入院医療」「慢性期入院医療」「構想区域」「病床機能報告」をターゲットに据えた議論を行いました。

まず「回復期入院医療」について見てみましょう。

現行の地域医療構想では、病床の機能を高度急性期・急性期・回復期・慢性期—に4区分し、病床の必要量を推計しています。このうち回復期機能は「急性期治療が終了し医療資源投入量が一定程度落ち着いた資源投入量」(入院料など除き、1日当たり225点以上600点未満」となる患者を想定して病床の必要量を推計しています。

また現在の病床機能報告では、回復期機能について▼急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能▼特に、急性期を経過した脳血管疾患や⼤腿骨頚部骨折等の患者に対し、ADL向上や在宅復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に提供する機能(回復期リハビリテーション機能)—と定義し、診療報酬上の入院料としては主に「回復期リハビリテーション病棟入院料」や「地域包括ケア病棟入院料」「地域包括医療病棟入院料」などとの一定の紐づけを行っています(関連記事はこちらこちら)。

病床機能報告における回復期機能の定義等(新地域医療構想検討会(2)1 240930)

病床機能報告の4機能と、診療報酬上の特定入院料の紐づけ

▼7対1は高度急性期または急性期▼10対1は急性期または回復期▼13対1・15対1は回復期または慢性期、一部は急性期—といった基本的な紐づけが行われた。もちろん異なる報告をすることも可能である



ところで、医療現場からは、こうした点について「地域包括ケア病棟には、急性後患者へのリハビリ等機能(post acute機能)もあるが、軽症急性期患者への対応機能(sub acute機能)もある。地域包括医療病棟は、高齢救急患者を受け入れ治療・リハビリ・栄養補給・在宅復帰機能を持つ。すると、地域包括ケア病棟や地域包括医療病棟は回復期機能とは相入れないのではないか。急性期機能として報告すべきではないか」との疑問があります(実際に回復期リハビリ病棟はほぼすべて「回復期」機能であるが、地域包括ケア病棟の2割は「急性期」機能として病床機能報告が行われている)。

回復期リハ病棟ではほぼすべてが回復期と報告しているが、地域包括ケア病棟では2割が急性期と報告している(新地域医療構想検討会(2)2 240930)



また、高齢化が進展する中では、「高齢の救急搬送患者(軽症、中等症が多い)を受け入れ、急性期治療を行うとともに、リハビリ・栄養補給等を積極的に行い、早期に在宅復帰を促す」病床・病棟の拡充が強く求められています(関連記事はこちら



こうした状況に鑑みて厚生労働省大臣官房の高宮裕介参事官(救急・周産期・災害医療等、医療提供体制改革担当)は、地域医療構想・病床機能報告における「回復期機能」について、これまでの「post acute機能」(急性期後患者へのリハビリ等提供機能)に加えて、「sub acute機能」(軽症急性期患者を受け入れ、急性期治療からリハビリ・栄養補給・在宅復帰までを総合的に行う機能)をも併せ持つ、つまり「回復期機能病床は、回復期機能と一部の急性期機能を併せ持つ」ことなどを明確化し、名称・定義の見直しを行う考えを提示しました。

あわせて、「地域において『治し、支える』医療を実現できるよう、入院での早期リハビリ・集中的リハビリだけでなく、他施設とも連携しながら外来・在宅等でリハビリを提供することも含め、患者の身体機能等に応じて適切な場でリハビリを提供する」機能を持つことも明確化される見込みです。

この考え方について、新検討会では概ねの了承が得られたと言えますが、次のような「回復期リハビリ病棟と地域包括ケア病棟との違いにも留意すべき」(猪口雄二構成員:全日本病院協会会長、山口育子構成員:ささえあい医療人権センターCOML理事長)や「回復期機能に一部急性期機能が含まれることになるとし、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の病床の必要量推計などが曖昧にならないように留意すべき」(土居丈朗構成員:慶応義塾大学経済学部教授)などの意見も出ています。

▽回復期リハビリ病棟は、リハビリを集中的に行うことを目的とし、専任常勤医師や専従リハビリ専門職などを地域包括ケア病棟よりも多くの配置し、リハビリ提供単位数も地域包括ケア病棟より多い傾向にある

回復期リハ病棟と地域包括ケア病棟ではリハビリ提供機能に一定の差がある(新地域医療構想検討会(2)3 240930)



▽回復期リハビリ病棟には大腿骨近位部の骨折、脳卒中、胸腰椎の骨折、膝関節症等の患者が多く、地域包括ケア病棟ではコレラ患者のほか、高齢者救急に関連する肺炎等や、白内障等の予定手術患者も一定程度入院している

回復期リハ病棟入院患者の疾患(新地域医療構想検討会(2)4 240930)

地域包括ケア病棟入院患者の疾患(新地域医療構想検討会(2)5 240930)



▽回復期リハビリ病棟は「人口の多い地域ほど、人口あたり病床数が多くなる」傾向があるが、地域包括ケア病棟は「人口の少ない地域ほど、人口あたり病床数が多くなる」傾向がある

回復期リハ病棟と地域包括ケア病棟には地域性には一定の違いがある(新地域医療構想検討会(2)6 240930)



こうした「回復期機能の定義・名称見直し」を行った場合、現行地域医療構想で常に問題となる「見かけ上、急性期病床が過剰で、回復期が不足している」という点の解消にもつながると強く期待されます。

慢性期入院医療・在宅医療・介護保険施設等は「一体」として考える必要がある

また「慢性期機能」については、「在宅医療」(訪問看護を含む)や「介護施設等」と一体として需要・供給を考えていく方向も概ね固められました。▼現在の地域医療構想・病床機能報告では「慢性期入院医療ニーズの一部(例えば療養病棟に入院する医療区分1患者の7割など)を在宅医療や介護施設で対応する」目標を打ち出し、この目標は概ね達成されていること▼療養病床の整備数は地域格差があるが、介護施設とセットで考えると地域差が縮小していること(療養病床と介護施設等とか相当程度相互補完している)—などを踏まえ、新地域医療構想では、従来の考え方を「さらに深化・進化させる」ものと言えるでしょう。

現行の地域医療構想の変化(新地域医療構想検討会13 240826)

療養病床には地域格差があるが、介護施設を組み合わせると格差は縮小する(新地域医療構想検討会(2)7 240930)



高宮参事官は「慢性期入院医療機能、在宅医療、介護施設などを一体的に考えていく」方針を次のように整理しています。

▽新たに病床機能報告の1要素となる「医療機関機能」の1つとして、「地域で在宅医療を実施し、他医療機関、訪問看護ステーション、歯科医療機関、薬局、介護施設等と連携して24時間対応や在宅患者の入院対応ができるなど、地域での在宅医療提供を確保するための医療機関機能」を位置付ける

▽慢性期入院医療体制は、療養病床だけでなく、在宅医療や介護施設等とあわせて構築していく。
→その際、増加する高齢者救急への対応に向けて、老人保健施設も含む介護施設や在宅等での適切な管理、ACPの取組推進、医療機関と介護施設等の緊急時の対応も含めた連携体制の構築・情報共有等を通じて、肺炎や尿路感染症、心不全や脱水などについて適切な管理によって状態悪化を防ぐとともに、必要時には円滑な入院につなげるための対応力を強化する

▽在宅医療提供体制については、都道府県において適切な在宅医療圏域(2次医療圏よりも狭い単位も可能とする、後述)を設定し、地域の協議・調整を通じてより実効性のある体制整備を進める
→その際、D to P with N などのICT活用による効率化、在宅医療を行っている医療機関の対応力強化、これまで在宅医療を行っていない医療機関の参入促進、多数の訪問患者に在宅医療を提供する医療機関との連携、訪問看護事業所の機能強化等による供給力の増強を行う

→人口規模の小さい地域では、移動時間や担い手不足等の課題も踏まえ、高齢者の集住等のまちづくりの取組とあわせて、D to P with Nの活用徹底も含め、在宅医療提供体制を構築していく



この点に関しては、▼医療・介護連携を進め、在宅患者や施設入所者が軽症の段階で適切な対応を行うことにより、救急搬送・急性期入院医療の負担を軽減することが重要である(猪口構成員)▼24時間訪問看護体制の強化、看護小規模多機能型居宅介護(訪問看護+泊り・通い機能を持つ介護サービス)の充実、医療・介護連携の強化(病院看護師による介護施設での医療対応力研修強化など)により、急性期医療の負担軽減を図るべき(吉川久美子構成員:日本看護協会常任理事)▼在宅医療提供体制が充実しているのは「患者が多く採算の取れる地域」「医療機関が多く在宅医療提供をしなければ経営が成り立たない地域」に限られる点を重視すべき(高橋泰構成員:国際医療福祉大学大学院教授)▼慢性期医療・在宅医療→介護サービスへのシフトにより介護費が増加する点にも留意すべき(森山明構成員:富山県魚津市民生部参事兼魚津市健康センター所長)▼小規模な町村では在宅医療提供体制構築が困難である。群市区医師会単位で考えることが有用である(今村知明構成員:奈良県立医科大学教授)▼在宅医療提供では高コストケースもある。安易に在宅移行を進めるのではなく、慢性期疾患患者の「最適な場所」での療養を考える必要がある(河本滋史構成員:健康保険組合連合会専務理事)▼「施設入所者への在宅医療」と「自宅居住者への在宅医療」とは全くの別物であり、分けて精緻に考えていく必要がある(香取照幸構成員:未来研究所臥龍代表理事/兵庫県立大学大学院特任教授)▼2024年度診療報酬改定介護報酬改定では、両報酬で「医療機関と介護施設・居住系サービスとの連携」を評価した。在宅医療についても同様の評価を検討すべきである(江澤和彦構成員:日本医師会常任理事)—など様々な視点に立った意見が出されました。

いずれも頷ける部分の大きな意見であり、これらも踏まえて「慢性期入院医療や在宅医療などの在り方」をさらに詰めていきます。

新たに報告する「医療機関の機能」は4区分に設定することを概ね固める

このほか、9月30日の新検討会では、次のような考え方も概ね固められましたと言えます。今後、より具体的にこれらの内容を詰めていきます。ただし、「人口減が進む中で、より広域な地域医療構想区域を設ける」点について、「患者の医療アクセスにも配慮が必要である」(岡俊明構成員:日本病院会副会長)、「巨大なへき地とならないように留意すべき」(今村構成員)との声も出ている点を勘案することも重要です。

▽新たに病床機能報告の1要素となる「医療機関機能」については、これまでに示された(1)高齢者救急の受け皿となり、地域への復帰を目指す機能(2)在宅医療を提供し、地域の生活を支える機能(上述)(3)救急医療等の急性期の医療を広く提供する機能—のほか、(4)として「その他の機能」(例えば「回復期リハビリテーションを主に提供する機能」(いわゆる回リハ病院)や「一部の診療科に特化した医療機関」(専門病院)など)とする(都合、4つの機能となる)
→地域医療構想調整区域(主に2次医療圏、後述)において、(1)から(3)の機能を持つ病院がそれぞれ必要となるが、(4)の機能は「絶対に必要」とは考えにくい(例えば、いわゆる回リハ病院は2次医療圏に必ずなければならないわけではなく、より広域から患者を入院させる形でもよいと考えられる)

新たに報告する「医療機関機能」について(新地域医療構想検討会(2)8 240930)



▽新たな地域医療構想における「構想区域」の範囲については、2040年頃を見据えると、人口規模が20万人未満の構想区域などでは医療需要の変化や医療従事者の確保、医療機関の維持等の観点から医療提供体制上の課題があり、必要に応じて「構想区域を拡大」する必要がある

地域医療構想区域について(新地域医療構想検討会(2)9 240930)



▽在宅医療については、2次医療圏よりも狭い区域での議論が必要であり、在宅医療の圏域ごとに医療機関、訪問看護ステーション、歯科医療機関、薬局、介護施設等が連携しながら在宅医療提供体制を確保するとともに、市町村の在宅医療・介護連携推進事業の取り組みとの連携をより一層深めることができる枠組みを設ける

在宅医療圏域について(新地域医療構想検討会(2)10 240930)



なお、「精神医療」の在り方を議論するプロジェクトチーム(新たな地域医療構想において精神医療を位置付ける場合の課題等に関する検討プロジェクトチーム)を設け、11-12月に検討結果が新検討会に報告することも了承されています(関連記事はこちら)。

今後、さらに精力的に議論が進められ、年内(2024年内)の最終とりまとめを目指します。今後に向けては「地域医療構想と医師偏在対策とを組み合わせた検討も行うべき」(香取構成員)、「地域医療構想と医療計画との重複を踏まえた効率的な議論をすべきである」(玉川啓構成員:福島県保健福祉部次長(保健衛生担当))との指摘が出ています。





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