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関西医大では病院長が強力なリーダーシップ発揮し、病院全体で「特定行為研修修了看護師の育成・活躍」を推進—看護師特定行為・研修部会

2025.2.27.(木)

関西医科大学(大阪府枚方市)では病院長が強力なリーダーシップを発揮し、病院全体で「特定行為研修修了看護師の育成・活躍」を推進。現在、すでに職看護師の10名に1人が特定行為研修修了者であり、18病棟中14病棟で「特定行為研修を修了した看護師が専従師長・副師長」として配置され、また手術室でもOJTを経て自立した業務実践を行っている—。

同院では、さらなる医療・看護の質向上を目指して「キャリア5年以上の看護師は、全員特定行為研修を修了する」目標を掲げている—。

2月26日に開催された医道審議会・保健師助産師看護師分科会の「看護師特定行為・研修部会」(以下、部会)で、こういった議論が行われました。なお、特定行為研修の指定研修施設の申請を電子化する方針も確認しています。

2月26日に開催された「第33回 医道審議会 保健師助産師看護師分科会 看護師特定行為・研修部会」

特定行為研修修了者、2024年9月でついに「1万人」の大台に乗ったが・・・

一定の研修(特定行為に係る研修、以下、特定行為研修)を受けた看護師は、医師・歯科医師の包括的指示の下で、手順書(プロトコル)に基づいて38行為(21分野)の診療の補助(特定行為)を実施することが可能になります(関連記事はこちらこちら)。

2022年度から、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり始め、2025年度には全員が後期高齢者となることから、今後、医療・介護ニーズが急増していきます。とりわけ在宅療養や介護施設など「医師の関与が手薄になりがちな場面」において、一定の医行為を行える特定行為研修修了看護師が活躍することが期待されています。

さらに、特定行為研修修了者には、▼新型コロナウイルス感染症をはじめとする新興感染症対応の重要な担い手▼医師働き方改革を進める中で、医師からの重要なタスク・シフティング先—といった「急性期病院等での活躍」も期待されています。

こうした期待に応えるよう、特定行為研修を実施する指定研修機関(病院等)の指定、特定行為研修修了者の育成が進められており、昨年(2024年)9月時点で指定研修機関は426施設、特定行為研修修了者は1万1141名に拡大しています。ほか、▼特定行為の中では「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」「呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連」「動脈血液ガス分析関連」などが多い▼領域別パッケージ研修の指定研修機関は249施設、修了者数は2030人▼特定行為研修修了者は「病院勤務者」「都市部」で多い—ことなども明らかにされています。

特定行為研修修了者の養成状況等1(特定行為・研修部会1 250226)

特定行為研修修了者の養成状況等2(特定行為・研修部会2 250226)

特定行為研修修了者の養成状況等3(特定行為・研修部会3 250226)

特定行為研修修了者の養成状況等4(特定行為・研修部会4 250226)



ついに「1万人の大台に乗った」格好ですが、当初の「2025年度に特定行為研修修了看護師を10万人程度養成する」との目標には届きそうにありません。この背景には、▼地域医療機関での制度理解が十分でないため、身に着けた特定行為の知識・スキルを看護師が発揮できない▼研修負担(時間、費用)が大きい—などの課題が浮上しており、さらなる特定行為研修修了者の養成・活躍に向けた対策が部会で継続検討されています。

2月26日の会合では、厚生労働省から特定行為研修修了者の養成・活躍に向けて、例えば次のような施策を2024年度補正予算の中で実施することが紹介されました。

▽特定行為研修の組織定着化支援事業
→指定研修機関に対し「eラーニングのコンテンツ使用料」「特定行為研修修了者に対するメンター配置の費用」を補助するほか、シンポジウム・ワークショップを開催する

2024年度補正予算における特定行為研修修了者の養成推進策等1(特定行為・研修部会5 250226)



▽地域における特定行為実施体制推進事業
→指定研修機関に対し「地域版特定行為研修推進委員会の設置」「受講等を支援するコーディネーター設置のための体制構築」の費用を補助するほか、介護保険施設や慢性期病院等の看護師の受講推進に向けた支援費用を補助する

2024年度補正予算における特定行為研修修了者の養成推進策等2(特定行為・研修部会6 250226)



▽地域標準手順書普及等事業
→特定行為を実施する際に必要となる「手順書」(この手順書に沿って看護師が特定行為を実施する)を医師が活用しやすくなるよう、厚労省による標準的手順書例等を地域の実情に応じて運用できる方法を検討し、地域医療機関に周知する

2024年度補正予算における特定行為研修修了者の養成推進策等3(特定行為・研修部会7 250226)



▽医療の効率化に向けた領域別タスク・シフト推進事業
→領域別パッケージに関係する医学系学会において、特定行為研修修了者の活動実態の調査・分析のためのワーキンググループを開催し、各領域における医師向けの「特定行為研修修了者の活用ガイド」の作成・普及・周知、医師の特定行為に係る指導者講習会の受講推進を行う

2024年度補正予算における特定行為研修修了者の養成推進策等4(特定行為・研修部会8 250226)

病院長がリーダーシップを発揮し、特定行為研修修了看護師の育成・活躍を推進

また、稲井久美子参考人(関西医科大学附属病院看護副部長)からは関西医大病院等における特定行為研修推進方策が紹介されました。

同院では松田公志病院長が強力なリーダーシップを発揮し、「すべての看護師(キャリア5年以上)が特定行為研修を修了して優れた技術・知識を身につけ、高度な看護サービスを提供する」という理念の下で、2020年度から自院で特定行為研修を実施。現在では▼所属看護師(980名)の10人に1人超(10.8%)が特定行為研修修了者である(うち2割が師長・副師長)▼特定行為研修を修了した「専従看護師長・副師長」を18病棟中14病棟(77.8%)に配置し、診療部門(つまり医師)と連携し、臨床との融合を図っている▼院内で統一した手順書を作成し、看護師の部署異動があっても、特定行為を的確に実施できる環境を整えている▼病院長をトップとする特定行為業務管理委員会を設置し、手順書の改善・特定行為研修修了者のフォローアップ研修などを実施している▼看護部にリソース活用推進委員会を設置し、RRS(入院患者の急変に迅速に対応する体制)との連携などを特定行為研修修了者の業務としている▼特定行為研修修了者にさらにOJTを実施し、「手術室での自立した業務実践」を行っている—などの大きな成果を発揮しています。さらに「訪問看護ステーション、外来を担当する看護師の特定行為研修受講」も進み、来年度(2025年度)からは「外部看護師の研修受け入れ」も開始されます。

関西医大における特定行為研修修了者の育成・活躍等1(特定行為・研修部会9 250226)

関西医大における特定行為研修修了者の育成・活躍等2(特定行為・研修部会10 250226)

関西医大における特定行為研修修了者の育成・活躍等3(特定行為・研修部会11 250226)

関西医大における特定行為研修修了者の育成・活躍等4(特定行為・研修部会12 250226)

関西医大における特定行為研修修了者の育成・活躍等5(特定行為・研修部会13 250226)



多くの特定行為研修修了者が身近に活躍することで、後輩看護師が「自分も特定行為研修を受け、活躍したい」との意欲を持ち、さらに特定行為研修修了者が増加するという正のスパイラルが回っていると考えられます。稲井参考人は「松田院長は、まず特定行為研修修了者を300名以上とする(つまり自院所属看護師の3人に1人を特定行為研修修了者とする)目標を掲げている」ことを紹介しており、この動き・スパイラルはさらに加速していくと見込まれます。

さらに、特定行為研修修了者の活躍により、医師の8割が「負担軽減につながっている」(そう思う、ややそう思う)と感じており、医師働き方改革に向けたタスク・シフトの成果も色濃く現れていることが分かります。また特定行為研修修了者側から積極的に医師とコミュニケーションをとって患者に積極的な介入が実施されている状況も稲井参考人から紹介され、「医療・看護の質向上にもつながっている」ことが伺えます。

関西医大における特定行為研修修了者の育成・活躍等6(特定行為・研修部会14 250226)



この関西医大の取り組みを多くの部会委員が賞賛。例えば▼まさにベストプラクティスと言える(國土典宏部会長:国立国際医療研究センター理事長)▼「皆で特定行為研修を受けよう」と考える組織風土が素晴らしい(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)▼病院全体で特定行為研修の推進、特定行為研修修了者の活躍をフォローすることが重要であり、それが実践されている(石垣泰則委員:日本在宅医療連合学会代表理事)▼病院長のリーダーシップの重要性を再確認できる好事例である(樋口幸子副部会長:済生会看護室室長)—などの声が出ています。



なお、同院では「特定行為研修修了者を養成・活用することの意義」などを院内(病院長、稲井副看護部長ら)で繰り返し話し合い、認識を一致させたうえで、前述のとおり「病院長が強いリーダーシップ」を発揮して育成・活用が推進されています。

多くの病院において、まず院長が「特定行為研修制度とは何か」「どのようなメリットがあるのか」を認識し、育成・養成を自ら強力に進めていくことに期待が集まります。その際、自院が指定研修施設に指定されれば、業務の相当部分を研修に充てることができ、病院側・看護師側双方の負担を軽減することも可能となります。この点について外科系学会社会保険委員会連合による2019年3月19日開催の記者懇談会では、日本外科学会の馬場秀夫理事(熊本大学大学院生命科学研究部消化器外科学教授、当時)から「特定機能病院が、特定行為研修の指定研修機関となり、特定行為研修修了看護師の養成を進めることが重要」と訴えており、こうした動きがさらに活発になることが期待されます。

こうした議論は今後も継続されます。

特定行為研修の指定研修施設申請を2026年8月から電子化し、病院の申請負担を軽減

また2月26日の会合では、現在「紙の書類を郵送する」ことで行われている指定研修機関申請を、電子化する方向を確認しました。申請書類をエクセルファイル化し、重複記載を削除することなどにより、申請の負担を軽減することが狙いです。

厚労省は「今夏・秋(2025年秋・夏)の次回会合で、電子申請フォーマットを確認する」→「来夏(2026年8月)の申請から電子申請フォーマットを運用する」考えを示していますが、委員からは「既存の指定研修機関が変更・追加申請などを行う際には、紙ベースでの申請も可能となるような経過措置」(紙申請・電子申請の併用期間設定)などを検討してほしいとの声も出ており、厚労省で詳細が検討されます。電子化により病院側の申請負担が減少し、より多くの病院が指定研修施設申請を行うことを部会委員も期待しています。

●現在の電子申請フォーマット案はこちら



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