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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

2020年度診療報酬改定を了承、「医師の働き方改革推進」を重点課題に据える―社保審・医療保険部会

2019.11.29.(金)

11月28日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、2020年度の次期診療報酬改定の基本方針が概ね了承されました。

「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」を2020年度改定の【重点課題】に据え、▼医師等の長時間労働などの厳しい勤務環境を改善する取組の評価(医療機関内における労務管理や労働環境の改善のためのマネジメントシ ステムの実践に資する取り組み推進など)▼地域医療の確保を図る観点から早急に対応が必要な救急医療体制等の評価▼業務の効率化に資するICTの利活用推進―などを具体的な項目として例示しています。

12月上旬に社会保障審議会・医療部会でも基本方針論議が行われ、両部会の意見を踏まえて最終的に基本方針が策定されます。このため、医療保険部会では「文言等の最終調査」について、遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)に一任しています。

11月28日に開催された、「第122回 社会保障審議会 医療保険部会」

遠藤部会長「医師の働き方改革推進への懸念がある点も踏まえて改定論議進めよ」

繰り返しになりますが、2006年度の診療報酬改定から、▼改定基本方針を社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で決定する▼改定率を内閣が予算編成過程で決める▼基本方針と改定率を受け、中央社会保険医療協議会(中医協)で改定内容を詰める―という役割分担が行われています。かつて中医協を舞台として、診療報酬改定をめぐる汚職事件が生じ、「背景には、中医協の所掌範囲・権限があまりに大きくなり過ぎたことがある」と指摘されたためです。

医療保険部会では9月27日から基本方針策定論議をスタート 10月31日11月21日と議論を重ね、その内容を踏まえた「基本方針案」が11月28日の会合において厚生労働省保険局医療介護連携政策課の山下護課長から提示されました。

基本方針案は、(1)改定に当たっての基本認識(2)改定の基本的視点と具体的方向性―の2部構成で、(1)の基本認識では▼健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現▼患者・国民に身近な医療の実現▼どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、医師等の働き方改革の推進―を担保する必要があるとした上で、これを実現するためには「社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和」が極めて重要であることを強調しています。

また(2)では、(A)医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進(B)患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現(C)医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進(D)効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上―の4項目を提示。

そのうえで、A「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」について、2024年4月から、すべての勤務医に罰則付きの新たな時間外労働上限(原則960時間以内、救急科や研修医などでは厳格な要件の下で1860時間以内)が適用されることなどに鑑み、2020年度改定における【重点課題】に据えています。

働き方改革等を推進するための具体的な方策としては、▼医師等の厳しい勤務環境を改善する取り組みの評価(医療機関内における労務管理や労働環境の改善のためのマネジメントシステムの実践に資する取り組みの推進、タスク・シェアリング/タスク・シフティング・チーム医療の推進、届出・報告の簡素化や人員配置の合理化の推進)▼地域医療の確保を図る観点から早急に対応が必要な救急医療体制等の評価▼業務の効率化に資するICTの利活用の推進(ICTを活用した医療連携の取り組みの推進)―を掲げました。

さらに、患者・国民にとって身近で安心・安全 な医療を実現していくために「診療報酬制度を分かりやすくするための取り組みの継続」「医療制度に対する理解を深めていくための普及啓発も含めた、国民に対する丁寧な説明」などを将来的な課題に位置付けています。

●医療保険部会に提示された基本方針案●

2020年度診療報酬改定基本方針の概要(医療保険部会 191128)



こうした基本方針案に対し、費用負担者を代表する委員、中医協で言うところの支払側サイド(佐野雅宏委員:健康保険組合連合会副会長、安藤伸樹委員:全国健康保険協会理事長、藤原弘之委員:日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長ら)は、「医師の働き方改革のみが【重点課題】に据えられたことは残念である」「制度の安定性・持続可能性を十分に踏まえた診療報酬改定とすべき」と指摘。とくに佐野委員は、具体的な方策に関して「救急医療体制の評価などが例示されているが、真に緊急度と必要性の高いところに限定した手当を行うべき」と注文しています。

佐野委員らの主張は、医療保険部会での議論開始から一貫しています。遠藤部会長はこうした点にも配慮し、厚生労働省に対し「医師の働き方改革の診療報酬でのサポートについて懸念を持つ委員がいる。中医協においては、こうした懸念も踏まえた議論を行ってほしい」と要請しました。



このほか、松原謙二委員(日本医師会副会長)と横尾俊彦委員(全国後期高齢者医療広域連合協議会会長/多久市長)から「有床診療所の役割を踏まえた評価」を基本方針に明示してほしいとの要望(前回会合で原勝則委員(国民健康保険中央会理事長)から提唱)があるなど、若干の注文が付きましたが、基本方針案そのものは概ね了承されています。



ところで、基本方針策定論議は、医療保険部会と医療部会とで並行して進められています(医療部会の論議に関する記事はこちらこちらこちら)。医療部会では12月上旬に最終論議を行う予定であり、医療保険部会が先んじて内容を固めた格好です。ただし、医療部会においてどのような最終論議がなされるかは不明で、「文言の修正や追加」が行われる可能性も否定できません。最終的には、▼遠藤・医療保険部会長▼永井良三・医療部会長(自治医科大学学長)▼厚労省―の三社で基本方針の文言について最終調整を行うことになる見込みです。
 
 
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地域包括ケア病棟の実績評価要件、在宅医療提供の内容に大きな偏り―入院医療分科会(2)
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入退院支援加算1の「病棟への入退院支援スタッフ配置」要件、緩和すべきか―入院医療分科会(1)
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7対1から急性期2・3への移行は3%強にとどまる、看護必要度IIの採用は2割弱―入院医療分科会(1)
2020年度改定、入院医療では「救急」や「認知症対策」なども重要論点に—入院医療分科会(2)
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2018年度改定で新設された【急性期一般入院料1】を選択する理由はどこにあるのか―入院医療分科会
2020年度の次期診療報酬改定に向け、急性期一般入院料や看護必要度などを調査―入院医療分科会



妊産婦の診療に積極的な医師、適切な要件下で診療報酬での評価に期待―妊産婦保健医療検討会