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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

NDB・介護DBの連結運用に向け、審査の効率化、利用者支援充実などの方向固まる―厚労省・医療介護データ有識者会議

2018.10.26.(金)

 NDB・介護DBの連結に向けて、「研究者からのデータ提供申し出を効率的に審査していく」「オープンデータ等を利用者ニーズを踏まえて充実していく」「データベースの構造や診療報酬などについての研修など、利用者支援を充実していく」「実費について費用負担を求めていく」—。

 10月25日に開催された「医療・介護データ等解析基盤に関する有識者会議」(以下、有識者会議)で、こういった方向が概ね固められました(関連記事はこちらこちらこちら)。

11月15日に開催される予定の次回会合で、最終とりまとめを目指し、その後、検討内容を社会保障審議会の医療保険部会と介護保険部会に報告した上で、来年(2019年)に高齢者医療確保法(高齢者の医療の確保に関する法律)と介護保険法の改正案を提示することになります。

10月25日に開催された、「第8回 医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」

10月25日に開催された、「第8回 医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」

 

第三者提供の件数増加を見据え、審査の効率化、利用者支援の充実を図る

 ある人が、「過去にどのような疾病に罹患し、それに対しどのような医療提供が行われ、どのような効果があったのか。さらに介護が必要な状態となってから、どういったサービスを提供し、どのような効果が得られたのか」といったデータを一元的に集約・解析し、医療・介護等の質向上を目指す「全国保健医療情報ネットワーク」が2020年度から本格稼働する予定です。この事業によって、データに裏打ちされた、有効な▼医療▼介護—等の確立が期待されます。

その一環として、有識者会議では、まずNDB(National Data Base:特定健診・医療レセプト情報を格納)と介護DB(介護保険総合データベース:要介護認定情報と介護レセプト情報を格納)について、「更なる利活用を推進する」「両データベースの連結を行う」ための検討を行っています。今年(2018年)7月に中間的な議論の整理を行い、そこでは、▼NDB・介護DBの利活用を促進するために、根拠法(高齢者医療確保法、介護保険法)を改正し、利用目的に「第三者提供」なども含める▼両データベースについて、匿名性を維持するなどセキュリティを確保した上で、データの連結解析を可能とする―などの方針を固めました(関連記事はこちらこちらこちら)。

さらに有識者会議では、来年(2019年)の国会へ高齢者医療確保法(NDBの根拠法)・介護保険法(介護DBの根拠法)の改正案を提出すべく、年内に最終とりまとめを行う予定を立て、(1)研究者等に対するデータ提供(第三者提供)(2)データベースの整備・保守管理(3)オープンデータ等の取扱い―の主に3つの項目について、残された課題や対応方針を検討しています。

10月25日の有識者会議には、これまでの議論を踏まえた「対応の方向性」案が厚生労働省保険局医療介護連携政策課の宮崎敦文課長から提示されました。構成員からは異論は出ておらず、下記の方向が固まったと言えるでしょう。

まず(1)の第三者提供では、個人情報ではないものの機微性の高いデータであることを踏まえ、データ提供の申し出に対して、「セキュリティは十分に確保されているか」「研究目的は公益的なものか」などを慎重に審査します。その際、▼第三者提供の促進、つまりデータ提供申し出件数の増加▼NDB・介護DBの連結したデータ提供も申し出—を想定し、次のように「審査の効率化」を目指すことになります。

▽第三者提供の可否の決定に当たり、現在と同様に、個々の申し出の利用目的・利用内容を確認することが基本となる

▽利用ニーズの増加に対応するため、第三者提供の枠組みの制度化の状況も踏まえつつ、「円滑な審査」のための方策(適切な審査頻度の確保等)を検討する

▽NDB・介護DBの連結解析について、適切・迅速に第三者提供するため手続きの効率化方策を検討する

 「円滑な審査」について、構成員からは「審査回数の増加」を求める意見が出ていますが、さらに厚労省保険局医療介護連携政策課保険システム高度化推進室の廣瀬佳恵室長と宮崎医療介護連携政策課長は、▼一部の審査委員のみで構成される分科会(第1分科会、第2分科会といったイメージ)▼テレビ会議の活用―なども検討テーマに掲げています。実際の運用面を議論する中で、より具体的に検討されていくことになるでしょう。

 
 また、研究者の中には、NDB等の構造や診療報酬・介護報酬に関する知識などが不十分なために、非効率なデータ提供申し出を行うケースや、またデータ提供の申し出を躊躇してしまうケースもあります。第三者提供を促進し、優れた研究に結びつけるためには、利用者(研究者)に次のような支援を行っていく方針も確認されました。

▽迅速なデータ提供、利用者の利便性向上に向け、「電子的な申し出手続き」を可能とする

▽適切で安全なデータ利用の確保に向け、「法令遵守のための研修」をe-learning等を活用し提供する

▽データベースの正しい理解を促すため、「医療保険・介護保険におけるレセプトデータに関する研修」や「ダミーデータの提供」などを行う

▽利用者が、個別ニーズや課題に応じて相談・助言を受けられる仕組みを設ける

▽利用者支援を継続的に提供できる体制についても検討する

NDB・介護DBが連結解析に向け、オンサイトリサーチセンターのニーズも増大

 ところで、NDB等のデータを用いた研究を行うためには、厳重なセキュリティ体制を確保した研究室等の設置が求められます。しかし、これには費用面などのハードルもあるため、現在、▼厚労省▼東京大学▼京都大学―の3か所に「オンサイトリサーチセンター」が設置されています。研究者等が、センターに赴き、そこでNDBのデータにアクセスして集計等を行う、というイメージです。今後も、「安全で高性能な利用環境」として運用するとともに、さらに「NDB・介護DBをともに解析できる」環境を整備するなど、費用面も勘案しながら「利便性に配慮した機能の充実」を目指していくことになります。

なお、現在、探索的研究や個票に当たる研究などの場合にはオンサイトリサーチセンターの利用が求められます(実質的に「NDBの全データを提供する」ことに近くなり、研究者にデータを郵送することができないため)。今後、介護DBとの連結も可能となれば、オンサイトリサーチセンターの利用ニーズがさらに高まっていくでしょう。石川広己構成員(日本医師会常任理事)は、こうした点を踏まえ、「オンサイトリサーチセンターの増設」を検討するよう求めており、今後の重要な検討課題になるでしょう。
医療介護データ有識者会議2 180927
 
 さらに、(3)にある、比較的緩やかなセキュリティ環境でも提供可能な「サンプリングデータセット」(1・4・7・10月分の単月データについて、個人の特定性をより低下させたデータ集)や、利用者のニーズを踏まえた「オープンデータ」(定式化された集計データ)を充実していくことも、利用者の知識・スキル向上に極めて有用です。宮崎医療介護連携政策課長は、▼NDBオープンデータをさらに充実する▼介護DBについてもオープンデータの整備を検討する▼連結されたオープンデータについても、利用者のニーズに即して検討する▼サンプリングデータセットについて、安全性確保に留意しつつ、「活用方法に関する利用者への情報提供」「利便性の高い提供方法」などを検討する―考えを示しています。

 
なお現在、NDBデータは研究者に「DVDを郵送する」形で提供されていますが、希望に応じて「クラウド環境を利用した提供方法」を設け、併せて、▼クラウドを利用する場合の十分な安全性確保のための対応▼クラウド環境上での、データ解析等に必要なアプリケーションの整備—なども検討することになります。

 
 またNDB等の利用を促進する中では、(2)の「整備・保守管理」の重要性が増していきます。「迅速なデータ提供」「安全性の向上」などを可能とするため、宮崎医療介護連携政策課長は、▼データベースの保守・管理は、当面、国が主体的に実施する▼利用者のニーズや最新のIT技術の動向を踏まえ、継続的に支援・改修を行う体制を検討する―考えも示しました。

まず3情報でデータの紐づけを行い、後に「個人単位の被保険者番号」による紐づけも

 NDBと介護DBには、患者・利用者のレセプト情報等が格納されていますが、格納の段階で個人が識別できないような「匿名加工」が施されています。

 今後、両データベースを連結することになりますが、その際、NDBに格納されているAさんの医療レセプトと、介護DBに格納されているAさんの介護レセプトを紐づけるための、特別の「鍵」(識別子)が必要となります。この点について宮崎医療介護連携政策課長は、次のように段階的に対応していく考え方を示しています。

▽2020年度に向けて、▼カナ氏名▼性別▼生年月日—の3情報をハッシュ化して作成した識別子をもちいて連結を行う

▽2021年度以降、▼3情報による識別子に基づく連結精度の検証▼「個人単位の被保険者番号(医療保険)」をハッシュ化して作成した識別子の整備—を行う

 
 段階的な対応の背景には、「個人単位の被保険者番号」導入は2021年度予定で、2020年度実施のNDB・介護DBの連結に間に合わないという点もあります。

なお、2021年度以降、「個人単位の被保険者番号」による連結が行われた後にも、「3情報による識別子」は残し、「より多様な識別子を用いることで、連結の精度を高める」(廣瀬・保険システム高度化推進室長)考えです。

データ提供に係る実費について、研究者等に費用負担を求める

 さらに、データベースの運用や費用負担については、次のような方向が確認されました。

【運用】

▽第三者提供の判断など、データベースの在り方の根幹に関わる性質の事務は「国」が担う

▽▼第三者提供の手続▼利用者支援▼オンサイトリサーチセンターの運営補助—などの関連事務は、レセプトの取り扱いに関する知見や高度専門的な解析等に関する知識をもつ「他の主体」との役割分担を検討する(国による関与、適切なガバナンスの必要性という視点に留意)

▽データ利用の成果について、「国」「他の主体」が協力し多様な機会を通じて広報に努める

【費用負担】
▽原則として、個々の第三者提供に要する作業等に応じた費用負担を利用者から求める

▽公益性の高い利用が費用負担によって抑制されないよう、個々の第三者提供の利用目的の公益性等を勘案して費用負担を軽減する仕組みを検討する

「費用がどの程度になるのか」が気になります。具体的な金額は、システム構築・維持費用や、作業量、第三者提供の申し出の増加状況見込みなどを勘案する必要がありますが、宮崎医療介護連携政策課長は、「MID-NETは、PMDA(医薬品医療機器総合機構)が運営し、将来の更新コストなども勘案して高額な利用料(例えば医薬品メーカーが製造販売後調査に利用する場合には、1品目当たり4000万円超)が設定されているが、NDB・介護DBでは、国の利用(医療費適正化計画などへの利用等)分なども勘案するため、そこまで高額にはならない」と見通しました。

 
 7月の中間整理(利用目的や第三者利用の法定化など)に、これらの方向性を加味し、11月15日開催予定の次回会合で最終取りまとめを目指すことになります。

難病DBなどとの連結は、NDB・介護DB連結の運用状況を見ながら検討

 なお、医療・介護等に係る公的データベースには、NDB・介護DBのほかにも、▼DPCデータベース▼全国がん登録DB▼難病DB▼小児慢性特定疾患DB▼MID-NET—があります。

 これらをすべて連結することで、エビデンスに基づく効果的・効率的な医療・介護サービスの確立や、パスの構築、優れた医薬品・医療機器の開発などが可能になると期待されます。しかし、各データベースは、それぞれ独自の仕様等がある(例えば、がん登録DBや難病DBでは、個人特定が可能な形でデータが格納されている)ことや、連結により個人の特定可能性が飛躍的に高まる(難病患者などは極めて少ない)ことなどを踏まえ、▼まずNDB・介護DBの連結を優先的に進める▼NDB・介護DBの連結状況などを見ながら、他のデータベースの連結可能性や技術的課題について検討していく—方針が確認されました(関連記事はこちら)。

公的データベースの概要、NDBや介護DBは格納時点で匿名化されるが、難病や小児慢性特定疾患のDBは匿名化されていない(本人の同意を得て実面で格納)

公的データベースの概要、NDBや介護DBは格納時点で匿名化されるが、難病や小児慢性特定疾患のDBは匿名化されていない(本人の同意を得て実面で格納)

 
 
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