骨粗鬆症治療薬イベニティは心血管系事象に留意、2型糖尿病治療薬ザファテックは高度腎機能障害患者等にも投与可能に―厚労省
2019.9.10.(火)
骨粗鬆症治療薬の「ロモソズマブ」(イベニティ皮下注)、虚血性心疾患や脳血管障害などの心血管系事象の発症可能性に留意が必要である。また2型糖尿病治療薬の「トレラグリプチンコハク酸塩」(ザファテック錠)、減量の上で「高度の腎機能障害患者」「透析中の末期腎不全患者」にも投与可能に―。
厚生労働省は9月6日に通知「『使用上の注意』の改訂について」を2本発出し、こうした点について製薬メーカーに改訂を指示するとともに、医療現場に対し注意喚起しました(厚労省のサイトはこちらとこちら)。
改訂の指示が行われたのは次の2医薬品です。(1)については「速やかに」、(2)については「できるだけ早く」使用上の注意を改訂することが求められます。
(1)骨折の危険性の高い骨粗鬆症の治療に用いる「ロモソズマブ(遺伝子組換え)」(販売名:イベニティ皮下注105mgシリンジ)(厚労省サイトはこちら)
▽新たな【警告】:海外における「アレンドロン酸ナトリウム」(骨粗鬆症治療剤)との比較試験で、本剤(ロモソズマブ)のほうが心血管系事象(虚血性心疾患または脳血管障害)の発現割合が高い傾向が認められている。また市販後、本剤との関連性は明確でないものの「重篤な心血管系事象を発現し死亡に至った」症例も報告されている。本剤投与にあたっては、▼骨折抑制のベネフィット▼心血管系事象の発現リスク―を十分に理解し、適用患者を選択する。また、本剤による治療中は、心血管系事象の発現がないか注意深く観察し、徴候や症状が認められた場合には速やかに医療機関を受診するよう指導する(従前の「効能・効果に関連する使用上の注意」から【警告】に移行)。
▽【効能・効果に関連する使用上の注意】:「日本骨代謝学会・日本骨粗鬆症学会の診断基準における重症度(▼骨密度値がマイナス2.5SD以下で1個以上の脆弱性骨折を有する▼腰椎骨密度がマイナス3.3SD未満▼既存椎体骨折の数が2個以上▼既存椎体骨折の半定量評価法結果がグレード3―)等を参考に、骨折の危険性の高い患者を対象とする」「旨を追記する
▽【重要な基本的注意】の項において、「虚血性心疾患または脳血管障害のリスクが高い患者への投与は、『本剤の骨折抑制のベネフィット』と『心血管系事象の発現リスク』を考慮して判断する。少なくとも過去1年以内の虚血性心疾患または脳血管障害の既往歴のある患者に対して本剤の投与は避ける」旨を追記し、内容を明確化する
(2)2型糖尿病治療薬の「トレラグリプチンコハク酸塩」(販売名:ザファテック錠100mg、同錠50mg)(厚労省のサイトはこちら)
▽【禁忌】から、「高度の腎機能障害患者または透析中の末期腎不全患者」を削除する(【重要な基本的注意】に移行)
▽【慎重投与】の「下垂体腫瘍がトルコ鞍外に進展し、視力障害などの著明な患者」を「下垂体腫瘍がトルコ鞍外に進展し、視力障害などの著明な高プロラクチン血性下垂体腺腫の患者」に改める
▽【用法・用量に関連する使用上の注意】の項において、従前「中等度腎機能障害患者では、排泄遅延により血中濃度が上昇するため投与量を減量する」とされていたところ、中等度だけでなく「中等度以上の腎機能障害患者では投与量を減量する」旨と改める(高度の腎機能障害患者等でも、投与量を考慮した上で、本剤投与が可能なる)。
高度の腎機能障害患者または透析中の末期腎不全患者(血清クレアチニン値が男性で2.4mg/dL超、女性で2.0mg/dL超、クレアチニンクリアランスが両性ともに30未満)の患者の投与量は「週1回25mg」を参考に減量する。なお末期腎不全患者では「本剤投与と血液透析との時間関係は問わない」点に留意が必要である
▽【慎重投与】の項において、従前「中等度の腎機能障害のある患者」とされていたところ、中等度だけでなく「中等度以上の腎機能障害のある患者または透析中の末期腎不全患者(腎機能の程度に応じて本剤の血中濃度が増加する。本剤の投与量を減量し、患者の状態を慎重に観察する)」旨と改める
【関連記事】
パーキンソン病等治療薬のアポカインやカバサール等、急激な減量・中止は薬剤離脱症候群に繋がる―厚労省
脳虚血改善に用いるカタクロットやキサンボン等、「重篤な意識障害を伴う大梗塞患者」への投与不可に―厚労省
痛風等治療薬の「フェブリク錠」、心血管疾患の増悪や発現に注意を―厚労省
オプジーボ・キイトルーダに「小腸炎」の副作用、多くの鎮痛薬を「12歳未満」等で禁忌に―厚労省
2型糖尿病治療薬メトホルミン含有製剤(メトグルコ等)、中等度の腎機能障害患者へ【慎重投与】可能に―厚労省
ゲル充填人工乳房の使用患者が悪性リンパ腫を発症、リスクの説明とフォローアップを―厚労省
画期的な抗がん剤オプジーボとキイトルーダで「結核」の重大な副作用―厚労省
乳がん治療薬の「ベージニオ錠」、間質性肺炎の重大な副作用で死亡症例も―厚労省
多くの糖尿病治療薬で「外陰部・会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)」、画期的な抗がん剤オプジーボで「下垂体機能障害」の重大な副作用―厚労省
タケキャプ錠にSJS等の副作用、果糖など含有の点滴を果糖不耐症患者に投与する低血糖や肝・腎不全など誘発の恐れ―厚労省
タミフルとゾフルーザに「出血」の副作用、ワルファリンとの併用に注意を―厚労省
画期的抗がん剤のオプジーボやキイトルーダに「血球貪食症候群」の副作用―厚労省
エクリズマブ(遺伝子組換え)製剤、二次性血栓性微小血管症の患者には有効性・安全性が未確立―厚労省
抗菌剤クラビット錠等に大動脈瘤や大動脈解離の、C型肝炎治療薬のスンベプラ等に急性腎障害などの副作用―厚労省
乾燥弱毒生水痘ワクチンに「無菌性髄膜炎」発症の可能性、接種から数年後に発症した事例も―厚労省
甲状腺がん等の治療に用いるレンビマカプセル、気胸に注意し、肺転移患者には慎重投与を―厚労省
メバロチンとリポクリンなど、やむを得ない場合、腎機能悪化に注意の上で併用投与認める―厚労省
抗菌剤のビクシリン注射用等において、「急性汎発性発疹性膿疱症」の副作用―厚労省
インフルエンザ治療薬、異常行動に十分注意した処方を!タミフルは未成年者に解禁―厚労省
肺炎治療等に用いるロセフィンに痙攣等の、乾癬治療薬のオテズラに重度下痢の副作用―厚労省
アトピー治療剤のプロトピックや免疫抑制剤のプログラフ、妊婦には催奇形性リスク考慮した使用を―厚労省
ピロリ菌感染の治療等に用いるボノピオン等、肝機能障害が現れることがある―厚労省
キイトルーダ、「硬化性胆管炎」が現れることがあるため、十分な観察を―厚労省
統合失調症治療薬やアドレナリン、【禁忌】事項などを見直し―厚労省
ウプトラビ錠とプラビックス錠等は併用禁忌、サムスカ錠に急性肝不全の副作用―厚労省
造影剤のイオヘキソールとイオメプロールに「急性汎発性発疹性膿疱症」の副作用—厚労省
MRI造影剤の「脳への残存」を危惧、検査の必要性を慎重に判断せよ—厚労省
輸血には感染症伝播のリスク、患者観察などを徹底せよ―厚労省
サワシリンに血小板減少、病院で広く使われる消毒薬にアナフィラキシーの副作用—厚労省
RSウイルスによる新生児下気道疾患治療薬「シナジス筋注液」に血小板減少症の副作用―厚労省
アデムパス投与で有害事象・死亡が多く、ワーファリンに難治性皮膚疾患の副作用―厚労省
画期的抗がん剤のオプジーボ、硬化性胆管炎の副反応―厚労省
肺炎球菌ワクチンのニューモバックス、注射部位壊死・潰瘍の重大な副反応―厚労省
悪性黒色腫・非小細胞肺がん治療に用いるキイトルーダ、心筋炎の副作用―厚労省
精神神経用剤のデパス、抗不安剤のソラナックス、メイラックスなど、薬物依存に注意―厚労省
神経症における不安・緊張などを和らげるアタラックス、急性汎発性発疹性膿疱症の副作用―厚労省
多発性骨髄腫治療に用いるレブラミド、B型肝炎ウイルスの再活性化を促す副作用―厚労省
うつ病治療に用いるデュロキセチン塩酸塩など、自動車運転などの際には十分な注意を―厚労省
胃潰瘍治療などに用いるポラプレジンク、銅欠乏症による汎血球減少や貧血の副作用―厚労省
ワルファリンとミコナゾールは併用禁忌、オプジーボに心筋炎などの副作用―厚労省
多発性硬化症治療薬のタイサブリに急性網膜壊死などの副作用―厚労省
ボルタレンに消化管狭窄・閉塞、ハーボニー錠に高血圧・脳血管障害の副作用―厚労省
てんかんの部分発作治療に用いるオクスカルバゼピン、重篤な皮膚障害に留意を―厚労省
抗てんかん剤レベチラセタなど7医薬品、新たに「重大な副作用」-厚労省
ハーボニー錠などC型肝炎治療薬、B型肝炎ウイルスを活性化させる恐れあり慎重投与を―厚労省
タミフルに「虚血性大腸炎」、ラピアクタに「アナフィラキシー」の副作用判明―厚労省
ロキソニン錠に「小腸・大腸の狭窄・閉塞」の副作用判明―厚労省
乳がん治療薬のエリブリンメシル酸塩、スティーブンス・ジョンソン症候群の副作用判明―厚労省
皮膚T細胞リンパ腫治療薬のベキサロテン製剤、脂質異常や膵炎などの副作用に留意―厚労省
血圧降下剤のアジルサルタン、横紋筋融解症などの重大な副作用が判明―厚労省
新たに保険収載されたC型慢性肝炎治療薬の「ヴィキラックス配合錠」、肝不全の副作用―厚労省
画期的な抗悪性腫瘍剤のニボルマブ、重症筋無力症や大腸炎の副作用―厚労省、PMDA
大腸がん治療薬のパニツムマブ、中毒性表皮壊死融解症の重大な副作用―厚労省