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GemMed塾 看護モニタリング

急性期病棟からの膀胱留置カテーテル持ち込み率14.0%、積極的なカテーテル抜去と排尿自立訓練が重要—日慢協

2020.7.10.(金)

急性期病棟から回復期・慢性期病棟への転院患者のうち、14.0%は膀胱留置カテーテルを実施したままの転院となっている—。

膀胱留置カテーテルを実施した患者の3割強は、訓練により排尿自立が可能であり、不必要な膀胱留置カテーテルであった可能性が高い—。

より積極的に「膀胱留置カテーテルの抜去」に向けた取り組みを進める必要がある―。

日本慢性期医療協会は7月3日に、「急性期機能を有する病棟からの膀胱留置カテーテル持ち込み患者とその実態についての調査」結果を公表し、こうした点を強調しました。

急性期病棟からの膀胱留置カテーテル持ち込み率は14.0%、3割強の患者は排尿自立可能

日慢協の武久洋三会長は、かねてから「急性期病棟では介護力が弱いことから、不適切な膀胱留置カテーテルの実施や日常的なリハビリの不足などによりADL低下・関節拘縮等が生じてしまう。回復期・慢性期病棟に転院・転棟してからリハビリを実施するが、効果が現れるまでには時間もかかり、効果が十分に出ないこともある。それが寝たきり患者を多く生み出しているのではないか」と指摘しています。

手術後の患者や転倒リスクの高い患者などでは、膀胱留置カテーテル実施が必要なケースもあり、決して「膀胱留置カテーテル=悪」ではないことは当然です。しかし、急性期病院・病棟の中には、人手不足から「トイレへの付き添い」や「オムツ交換」などの手間が大変なことを背景に、必要性のない(少ない)、つまり不適切な膀胱留置カテーテル実施を行っているところもあるのではないか、と武久会長は指摘し、これが▼尿路感染▼膀胱結石▼尿道皮膚瘻―の発症、身体の可動域が狭まることによる「身体機能・精神機能の低下」を引き起こしている可能性があると強調。その上で、2019年に「回復期・慢性期病院(日慢協会員病院)を対象に、患者の入院時の状況(どこから入院してきたのか、入院時の状態はどうであったか、入院時に既に膀胱留置カテーテルが実施されていたか、など)を調査する」考えを示していました。

今般、その調査結果がまとまり公表されたものです。

調査対象は、回復期・慢性期病棟(ここでは、▼療養病床病棟入院基本料1▼地域包括ケア病棟▼回復期リハビリテーション病棟▼障害者施設等入院基本料取得病棟▼特殊疾患病棟入院料取得病棟▼介護療養型医療施設―)に入院・入所する1万198名で、うち急性期病棟(ここでは、▼急性期一般病棟入院料算定病棟▼特定機能病院において急性期の患者に診療密度が特に高い医療を提供する病棟▼救命救急病棟▼集中治療室―など)からの転院患者は4874名でした。

まず「膀胱留置カテーテルの持ち込み」(回復期・慢性期病棟に入院する前から膀胱留置カテーテルを実施され、それが継続したまま転院する)状況を見ると、対象患者1万198名中1079名で、全体の10.6%となっています。また、急性期病棟からの膀胱留置カテーテル持ち込みは681名で、膀胱留置カテーテル持ち込み全体の63.6%を占めています。

回復期・慢性期病棟への膀胱留置カテーテル持ち込み数は「急性期病棟から」が最も多い(日慢協調査1 200703)



膀胱留置カテーテル持ち込みの状況を施設別に見ると、▼急性期病棟:14.0%▼急性期以外の病棟:10.5%▼在宅:4.4%▼特別養護老人ホーム:7.5%▼介護老人保健施設:6.7%—となっており、日慢協では「明らかに急性期病棟からの持ち込み率が高い」とコメントしています。

回復期・慢性期病棟への膀胱留置カテーテル持ち込み率を施設別に見ても、「急性期病棟から」が最も高い(日慢協調査2 200703)



また、膀胱留置カテーテル持ち込み患者について、回復期・慢性期病棟における「抜去」の状況を見ると、1079名の持ち込み患者の27.4%(296名)について抜去を実施。抜去実施率を転院前施設別に見ると、▼急性期病棟からの転院患者:29.5%▼急性期以外の病棟からの転院患者:27.2%—となっています。また、抜去は転院から20日までの実施が8割程度となりました。

さらに抜去後の状況を見ると、次のような状況が明らかとなりました。

▽32.3%はトイレでの自立排尿が可能となったが、19.0%は排尿訓練をしてもオムツのままである

回復期・慢性期病棟への膀胱留置カテーテル持ち込み患者のうち、3割強は訓練により排泄自立が実現できている(日慢協調査4 200703)



▽病棟ごとにみるとFIM点数が改善(抜去しない場合には明確な改善なし)

膀胱留置カテーテル離脱者のほうがFIM点数改善が見られる(日慢協調査5 200703)



▽排泄訓練等のために、カテーテル抜去患者では入院日数がやや長い



また、日慢協では急性期病棟における膀胱留置カテーテル実施の理由として▼尿閉▼全身状態不良▼閉塞—などを、急性期病棟においてカテーテル抜去ができなかった理由として▼尿閉▼全身状態不良▼褥瘡—などが多いと推測。さらにその背景として、▼重症者が多い▼知識・技術不足▼他職種との連携不足▼抜去への関心不足▼マンパワー不足—などをあげています。

膀胱留置カテーテル離脱が困難な理由として、尿閉・全身状態不良・褥瘡などがあげられている(日慢協調査6 200703)

膀胱留置カテーテル離脱が困難な背景にはさまざまある(日慢協調査7 200703)



こうした状況を踏まえて日慢協では、「膀胱留置カテーテル実施者の3割強が排尿自立を実現できており、積極的に抜去する取り組みが必要である。排尿自立支援のための研修会、実技研修会をさらに充実する必要がある」と強調。また「急性期病棟で、膀胱留置カテーテルを実施する理由を調査することも有用」と指摘しています。

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