2022改定で感染防止対策加算の充実、特定行為研修修了看護師の評価、食事療養費の引き上げなど要望―日病協
2021.9.3.(金)
日本病院会や日本リハビリテーション病院・施設協会、日本私立医科大学協会など15の病院団体で構成される「日本病院団体協議会」(日病協)が8月27日に、厚生労働省保険局の濵谷浩樹局長に宛てて2022年度の次期診療報酬改定に向けた要望書(第2弾)を提出しました(同局医療課の井内努課長が代理受領)(日本病院会のサイトはこちら)。
すでに4月に総論的な第1弾要望を行っており、今般の第2弾要望では、より詳細な個別点数を意識したものとなっています。
2022年度改定に向けた中央社会保険医療協議会等の論議が精力的に進められています。秋からは個別具体的な議論に入る前に、病院サイドの要望を厚労省に伝え、改定論議に素材に盛り込ませることを狙っていると言えます。
【2022年度改定に向けたこれまでの中医協等論議】
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日病協の第2弾要望は、大きく(1)入院基本料(2)働き方改革・多職種協同などを進めるための評価・基準緩和(3)地域における医療機能分化・連携強化の推進(4)ICT推進(5)救急医療の充実(6)食事療養費の見直し―の大きく6項目です。
目次
コロナ対応踏まえ、ICUの算定日数上限見直し、感染防止対策加算の充実を
まず(1)では、新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえながら、▼特定集中治療室管理料の算定上限日数延長▼感染防止対策加算の算定要件見直し(加算2でも地域連携加算の算定を認め、非常勤講師の組み合わせによる常勤加算を可能とするなど)と大幅増点―を求めました。
前者については、同日(8月27日)の「入院医療等の調査・評価分科会」(中医協の下部組織)でも論点に上がっており、小山信彌副議長(日本私立医科大学協会参与)は「ECMO(体外式膜型人工肺)装着患者のみならず、人工呼吸器での呼吸管理が必要な患者についても上限を見直してほしい」と、同日の定例記者会見でコメントしています。
特定行為研修を修了した看護師の配置や特定行為実施を診療報酬で評価せよ
また(2)では、▼急性期看護補助体制加算の増点(看護補助者の人件費に見合う加算点数とすべき)▼医師事務作業補助体制加算の増点と算定要件見直し(回復期・慢性期病院で算定可能とすべき緊急入院要件などを見直すべき)▼特定行為研修修了者の評価▼入退院支援加算の人員基準緩和―を求めました。
このうち「特定行為研修修了者」とは、国が指定した研修施設で一定の研修を終えた看護師のことで、医師・歯科医師の包括的な指示の下で、一定の医行為を行うことが認められます。医師働き方改革を進める中では「医師の業務の一部を他職種に移管していく」(タスク・シフティング)ことが不可欠とされ、そのシフト先候補として「特定行為研修修了者」に注目と期待が集まっています。日病協では、「特定行為研修を修了した看護師の配置」を体制加算として新設すること、「特定研修行為修了者による特定行為実施」を加算として評価することを強く求めています。
特定行為研修修了者の養成数については「2025年度までに10万人」との目標値が示されていますが、昨年(2020年)10月時点で2887名の養成にとどまっています。その背景の1つに「研修施設」がまだ十分でないこと(宮崎県では今年(2021年)8月時点で未設置)、研修修了者が活躍する場が十分に確保されていない(知識・スキルを身に着けても、それを発揮する場が限られている)ことなどが指摘されています。2020年度の前回診療報酬改定では【総合入院体制加算】の選択要件の1つに盛り込まれるなど、診療報酬による評価が徐々に行われてきていますが、日病協では更なる評価の拡大・充実を求めています(関連記事はこちら)。
一方、(3)では、医療機能の分化・連携強化を推進するために「入院患者が他医療機関を受診した場合の入院料減算」について廃止することを求めています。
入院患者が、他医療機関を受診した場合(入院傷病と別の傷病で診察等が必要だが、当該医療機関には対応できる診療科がない場合など)には、「入院医療機関でのコストが減少する」(他院受診中は、入院医療機関では医療資源投入が行われない)ものとして入院料が5-40%減額されます。
しかし、医療機能の分化・連携の強化を進める中では「1医療機関で提供可能な医療」の範囲が狭まり、「連携先の他医療機関を受診する」ケースが増えてくることでしょう。その際に、この減額規定があることで、各医療機関が「減額は困るので、自院でさまざまな機能を持とう」と考え、結果「機能分化・連携の強化が進まない」と日病協は訴えます。
コロナ感染症対応の中で「医療機能の分化・連携の強化の遅れ」「医療資源の散在」が浮き彫りとなり、これが医療提供体制の逼迫につながっています。今後、中医協でどういう議論が行われるのか、注目する必要があるでしょう。
また、(4)では、「オンラインを活用したインフォームドコンセント」の加算評価を求めています。
救急患者すべてに夜間休日救急搬送医学管理料などの算定認め、食事療養費の引き上げを
(5)では、救急医療の充実を目指し、▼夜間休日救急搬送医学管理料▼院外トリアージ実施料―の算定要件緩和を求めています。
前者の夜間休日救急搬送医学管理料は、地域医療支援病院や救急告示病院等において、夜間・休日・深夜に救急搬送される患者が少なくなく、大きなコストがかかる(受け入れのための調整や、入院初期の濃密な検査など)点を経済的に評価するものです。現在、初診患者について600点の加算が認められていますが、日病協では「初診料算定患者のみが救急搬送されるわけでなく(通院中の患者が状態が急変するなどして救急搬送されることもある)、再診料算定患者を含めて救急搬送されるすべての患者について、加算算定を認めるべき」と求めています。
また後者の院内トリアージ実施料についても、現在「初診料算定する初診日」に限って算定が認められますが、再来患者でもトリアージの必要性は変わらず、「救急搬送されるすべての患者について算定を認めるべき」と要望しています。
さらに(6)では、人件費が高騰する中で▼入院時食事療養費を増額する▼特別食加算を増額する▼嚥下食・アレルギー食を特別食加算の対象に追加する―ことを求めています。
このテーマは2020年度の前回改定でも病院団体が強く要望していましたが、「財源確保」という面で大きなハードルがあります(すべての入院患者が対象となるため、わずかな引き上げをするにも莫大な予算確保が必要となる)。2022年度改定に向けてどういった対応が検討されるのか、この点も注目する必要があります。
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