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がん対策の成果・効果を適正に評価するためのロジックモデル、指標確定、がん施策に患者・住民の声も活かすべき—がん対策推進協議会

2023.7.12.(水)

第4期がん対策推進基本計画の中間評価を行う際のロジックモデル・指標を確定する—。このモデルに沿って、各施策を推進するとともに、成果・効果を把握し、次の第5期計画に活かしていく—。

7月10日に開催されたがん対策推進協議会で、こういった内容が概ね固められました。最終文言調整を土岐祐一郎会長(大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学教授、日本癌治療学会理事長)と厚生労働省とで行って近く確定させ、都道府県計画作成につなげます。

なお、今後、がん対策推進基本計画をベースに、各都道府県で地域の実情も踏まえたがん対策計画を作成していきますが、そこでは「患者・住民の声も活かしていく」ことが非常に重要である点も確認されています。

がん対策、最終目標から個別施策に落とし込むロジックモデルを完成

我が国のがん対策は「がん対策推進基本計画」に沿って進められ、今年(2023年)3月28日に新たな「第4期がん対策推進基本計画」が閣議決定されました。

●第4期がん対策推進基本計画はこちら

第4期計画では、「誰1人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す」ことを全体目標として掲げ、▼がん検診受診率の向上(目標値を50%→60%に引き上げ)によるがん予防の推進▼がんと診断されたときからの「緩和ケア」実施や、新規医療技術の速やかな臨床実装などによるがん医療の向上・充実▼アピアランスケア(外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケア)にも配慮したがんとの共生の充実▼これらを支える研究や人材育成、教育などの基盤強化—が進められます(関連記事はこちらこちら)。

第4期がん対策推進基本計画の概要(がん対策推進協議会1 230428)



ところで、がん対策推進基本計画については、間隙をなくすために「中間年に効果の評価を行い(中間評価)、その結果を次の計画に活かす」ことになっています(計画終了から評価を行ったので、次の計画までの間に隙間がうまれてしまう)。中間評価は、▼評価する項目(例えば死亡率など)を明確化する▼スタートラインのデータ、中間年のデータを集める▼両者を比較し「効果が出ているかどうか」を評価する—形で進められますが、効果を評価する指標に「ロジックモデル」の考え方が盛り込まれました。

7月10日の会合では、前回の議論を踏まえて▼ロジックモデル▼評価指標—案が厚労省から示され、これを概ね了承しています。

●ロジックモデル案はこちら(今後、最終の文言調整の可能性あり)
●評価指標とデータソースの一覧案はこちら(今後、最終の文言調整の可能性あり)

例えば、最終成果(アウトカム)としては「死亡率低下」「生存率向上」などを設定しています。

この最終成果(アウトカム)を達成するために、「がん予防」の分野では「生活習慣病の改善」(1次予防)、「検診受診率の向上、精度向上」(2次予防)等を進めていきますが、前者の生活習慣改善に向けて「がん診療連携拠点病院等での、地域住民を対象としたがんに関するセミナー等の開催」を推進していくこととし、その「回数」を評価指標に据える案が提示されました。

セミナー開催が増えていけば、地域住民に意識改革が進み、がん予防につながり、結果、死亡率の低下・生存率の向上につながるという考え方です。

この考え方そのものに異論は出ていませんが、黒瀬巌委員(日本医師会常任理事)や久村和穂委員(金沢医科大学医学部公衆衛生学非常勤講師、石川県がん安心生活サポートハウス ソーシャルワーカー、日本サイコオンコロジー学会代議員)、阿久津友紀委員(北海道テレビ東京編成業務部長、SODANE編集長)など、医療関係者から患者代表まで幅広い立場の委員が「セミナーの開催回数ではなく、セミナー参加者を評価指標に据えるべきではないか」との指摘が出されました。「形だけのセミナー開催」でなく、WEB開催・オンデマンド開催(自分の都合の良い時間に受講できる)等を含めた「実のあるセミナー開催」を求める意見と言えます。

大きく頷ける意見ですが「実態をどう把握するか、把握できるのか、実現可能としていつから把握できるのか」などについて技術的検討が必要なため、今後の調整事項に位置づけられました。



また、「がん検診受診率の向上、精度向上」(2次予防)に向けて「住民に対し、がん検診の正しい情報提供を提供する市町村の数の把握」を評価指標に据えること、優れた医薬品等の新規開発に向けて「がんに関する臨床研究の実施数の把握」を評価指標に据えることなどの考え方が固められましたが、「具体的にそれらの数などをどう把握していくかについては、検討を進める」とされている事項が多くあります。

この点について、石岡千加史委員(東北大学大学院医学系研究科臨床腫瘍学分野教授、日本臨床腫瘍学会理事長)は「全体として評価指標・ロジックなどの大枠は、計画スタート時点で決めておくべきではないか」と指摘しています。確かに、事前に評価内容を固めておくことは重要ですが、新たな指標の設定まで計画を動かせないという事態も困ります。この点、調査・研究を急ぎ、「中間評価までに内容を固め、遡ってのスタートラインデータの収集、評価時点でのデータ収集を進める」ことが重要となります。



さらに、評価項目について「実数」とするのか「割合」とするのかについても議論が行われています。石岡委員は「例えば支持療法の実施状況などでは、実数把握が重要ではないか。割合は後に評価を行う際に、拠点病院数で除すれば算出できう」と指摘。一方、患者・家族代表である大井賢一委員(がんサポートコミュニティー事務局長)は「対象患者のうち、どの程度の人・割合が恩恵を受けているか」を見ることが重要と指摘し、「割合」把握も重要であるとしています。

項目、場面によって「実数が重要となるケース」「割合が重要となるケース」「実数・割合の双方が重要となるケース」が異なるとも考えられ、今後、土岐会長と厚労省で最終整理が行われます。これらの指標に基づく中間評価に向けた議論・検討は2025年度の中頃から進められ、2026年の比較的早い段階で中間評価報告書がまとめられます。この中間評価議論・検討が始まるまでに、上述した「検討中」の項目について一定の結論が出される見込みです。



ところで、7月10日の協議会では、がん対策を進めるうえでの「患者・市民参画」推進に向けて、▼井上富美子参考人(ミルフィーユ小児がんフロンティアーズ名誉理事長、小児がん対策国民会議共同代表)▼鈴木牧子参考人(がんピアネットふくしま理事長)—の2氏から意見聴取。両参考人は、都道府県のがん対策協議会にも参画していますが「長期間委員を務める者(例えば地域の大学教授など)がいる」「事前の資料等説明が十分ではない」「議論が専門的すぎる」などの理由から、患者・住民の声が「地域のがん対策計画に反映されにくい」という課題があることを紹介しています。

こうした声を、がん対策推進協議会委員も重視し、「委員選任の透明性・公平性をしっかり確保する必要がある。多様な意見が重要である」(前田留里委員:京都ワーキング・サバイバー理事長、全国がん患者団体連合会理事、樋口麻衣子委員:富山AYA世代がん患者会Colors代表)、「都道府県の協議会でも、患者代表の割合●%以上などの規定を設けることを検討してはどうか」(阿久津委員)、「国から都道府県に対し、より患者・住民参画を促すよう積極的に働きかけるべき」(大賀正一委員:九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野教授、日本小児・血液がん学会理事長)などの意見が出ています。今後、都道府県レベルで「がん対策計画」を作成するステージに入る中で、非常に重要な指摘と言えるでしょう。

第4期がん対策推進基本計画の運用スケジュール(がん対策推進協議会 230710)



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