Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

都道府県別・2次医療圏別の「医療提供体制」「介護提供体制」の2022年度データを公表―日医総研

2023.8.21.(月)

日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は8月14日に、ワーキングペーパー「地域の医療提供体制の現状―都道府県別・二次医療圏別データ集―(2023年4月)」を公表しました(日医総研のサイトはこちら)。



我が国の医療提供体制は都道府県の作成する「医療計画」に沿って整備されます。医療計画には「地域におけるがん医療の拠点となる病院をどこにするのか」「地域に必要なベッド数はどれほどにするのか」などを記載しますが、そのベースとなるのが「地域をどの範囲に設定するか」であり、▼2次医療圏:一般的な入院医療を完結できるエリア▼3次医療圏:特殊な医療(臓器移植、広範囲熱傷、特殊な疾病など)提供も完結できるエリア—を各都道府県で設定します。

このエリア(医療圏)の中で「医療提供が完結できる」ように、エリア内の中にどういった機能を持つ医療機関をどの程度整備し、ベッド数はどの程度にするか、などを考えていくのです。例えば2次医療圏の中で▼高度ながん治療を提供できる「がん診療連携拠点病院」をどの病院にするのか(がん医療圏)▼高度急性期・急性期・回復期・慢性期の機能別病床数は、それぞれどの程度確保するのか(地域医療構想)—などを考えていくことになります。

日医総研では、地域でこうした点を検討する際の一助となるように、地域の医療施設、医療従事者、介護施設、介護サービス職員、在宅医療などに関わるデータを集計・公表しています。

例えば「北海道」の状況を見てみると、次のような特徴が伺えます。

【高度急性期医療】
▽全身麻酔が年間1万件以上行われているのは「札幌圏」と「上川中部医療圏」(旭川が含まれる)の2つのみ

北海道の2次医療圏別全身麻酔の実施状況(地域の医療提供体制の現状(2023年4月)1 230814)



【医療従事者数】
▽総医師数の偏差値(全国平均を50として多寡を見た数値)が全体では「48」、病院医師数では「51」、診療所医師数では「42」で、総医師数はほぼ全国平均レベルだが、診療所医師数は少ないと言える
▽総看護師数の偏差値は「59」で多い
▽リハビリ専門職総数の偏差値は「55」でやや多い

【ベッド数】
▽人口当たり一般病床数の偏差値は「63」で多い
▽人口当たり療養病床数の偏差値は「58」で多い
▽人口当たり回復期病床数の偏差値は「49」で全国平均レベル
▽ 人口当たり精神病床数の偏差値は「55」でやや多い

【介護施設】
▽高齢者施設・住宅の総定員数(介護療養病床含む、75歳以上人口1000人当たり、以下同じ)合計の偏差値は「61」で多い
→内訳を見ると、介護保険施設は「50」で全国平均レベル、高齢者住宅等は「63」で多い
→介護職員(介護施設等)合計の偏差値は「51」で全国平均レベル
→施設別定員数の偏差値は、老人保健施設「49」、特別養護老人ホーム「49」、介護療養「51」、介護医療院「51」、有料老人ホーム「48」、軽費老人ホーム「58」、グループホーム「63」、サービス付き高齢者向け住宅「65」

【在宅医療等】
▽在宅療養支援診療所の偏差値は「40」で少ない
▽在宅療養支援病院の偏差値は「48」で全国平均レベル
▽訪問看護ステーションの偏差値は「46」でやや少ない
▽介護職員(在宅、75歳以上人口1000人当たり)合計の偏差値は「50」で全国平均レベル



もっとも「偏差値」のみを見て「この地域では医療提供体制が整っている、不足している」と安易に論じることは危険です。

例えば、北海道における2次医療圏別の病床数(病院、診療所、病院+診療所)の偏差値を見てみると、北空知圏(深川町など)で「97」、中空知圏(滝川市、砂川市)で「88」、西胆振圏(室蘭市、登別市など)で「85」、「北渡島檜山圏(長万部町、八雲町など)で「71」といった地域で非常に高くなっています。一方、大都市札幌を抱える札幌圏は「61」にとどまっています。偏差値のみを見れば「前者の地域のほうが札幌よりも医療提供体制が充実している」ように見えます。しかし、地域によっては少ない人口が散在しており、医療機関へのアクセスが必ずしも円滑に進まないところもあります。さらに人口の少ない地域では、ほんのわずかなベッド整備などが偏差値に大きな影響を及ぼすこともあります。こうした点も考慮して「地域の医療提供体制の課題」などを探っていく必要があります。

北海道の2次医療圏別ベッド数の状況(地域の医療提供体制の現状(2023年4月)2 230814)



都道府県別・2次医療圏別に詳細なデータが示されており、自施設の所在する地域の状況をまず確認してみることが重要です。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

【関連記事】

2024年度からの第8次医療計画、「医療人材の確保」「効果的・効率的な医療提供体制」などの視点をさらに重視せよ—厚労省

民間病院の機能再検証に遅れ、2025年度の地域医療構想実現に向け「機能再検証の進捗状況」を定期チェック—地域医療構想・医師確保計画WG

医療圏・基準病床数の設定、医療従事者の確保、すべての開業医に夜間・休日や公衆衛生対応など求める方針固める—第8次医療計画検討会(3)
在宅医療・介護連携、在宅における口腔・栄養・リハビリの一体的提供を強力に推進していく—第8次医療計画検討会(2)
地域医療支援病院と紹介受診重点医療機関、両者の違いはどこにあるのか今後明確化を図ってはどうか—第8次医療計画検討会(1)
訪問看護師・専門性の高い看護師など計画的に育成!病院薬剤師の「奨学金返済を免除する」仕組みを検討!—第8次医療計画検討会
脳卒中等の急性期対応では医療機関へのアクセスを最重視、精神疾患の慢性期入院患者減踏まえベッド数適正化を—第8次医療計画検討会
小児・周産期医療、「集約化・重点化」と「患者アクセスの確保」とのバランスを地域ごとに慎重に判断せよ—第8次医療計画検討会(2)
すべての開業医に地域で不足する医療機能(夜間対応など)への協力求める、外来機能報告データの利活用推進—第8次医療計画検討会(1)
平均在院日数の地域格差、「地域性があり容認すべき」と考えるか、「医療の標準化に向け解消すべき」と考えるか—第8次医療計画検討会(2)
医療提供体制の基礎となる2次医療圏は適正な規模・エリア設定が重要、他計画にも影響するため優先検討を—第8次医療計画検討会(1)
かかりつけ医機能は医師個人・医療機関の双方に、「制度化や登録制」に疑問の声も—第8次医療計画検討会
「病院・クリニック間の医師偏在解消」「ベテラン医師ターゲットに据えた医師偏在解消」など進めよ—第8次医療計画検討会(2)
病院薬剤師や訪問看護師、特定行為研修修了看護師、医療計画に「ニーズ踏まえた確保策」規定へ—第8次医療計画検討会(1)
医療・介護サービスの一体提供可能とするため、在宅医療圏域は「市町村単位」が望ましいのでは—第8次医療計画検討会(2)
医療安全の向上に向け、例えば医療機関管理者(院長など)の「医療事故に関する研修」参加など促していくべき—第8次医療計画検討会(1)
2次救急と3次救急の機能分担、巡回医師等確保・オンライン診療によるへき地医療支援など進めよ—第8次医療計画検討会(2)
周産期医療・小児医療提供体制、医療の質確保や医師の負担軽減のため「集約化・重点化」を急ぎ進めよ—第8次医療計画検討会(1)
がん拠点病院が存在しない医療圏への対策、効果的な糖尿病対策、精神疾患対策の評価指標などが今後の重要論点—第8次医療計画検討会(2)
外来機能報告データ活用し、紹介受診重点医療機関の明確化だけでなく、幅広く「外来医療機能分化」論議を—第8次医療計画検討会(1)
高額医療機器の共同利用推進、「読影医・治療医配置なども勘案」した広範な議論求める声も—第8次医療計画検討会(2)
外来医師偏在の解消に加え、「かかりつけ医機能の明確化、機能を発揮できる方策」の検討も進める―第8次医療計画検討会(1)
人口減の中「2次医療圏」をどう設定すべきか、病床数上限である基準病床数をどう設定するか―第8次医療計画検討会
今後の医療提供体制改革では、「医療人材の確保」が最重要論点―第8次医療計画検討会
外来機能報告制度や紹介受診重点医療機関が「医師偏在」を助長しないよう留意を―第8次医療計画検討会
感染症対応では情報連携、看護師はじめ医療人材確保が最重要、課題検証し早急な改善を—第8次医療計画検討会
感染症対応医療体制を迅速確保できるよう、強制力持つ法令の整備を検討してはどうか—第8次医療計画検討会
集中治療認定医を専門医と別に養成し、有事の際に集中治療に駆け付ける「予備役」として活躍を—第8次医療計画検討会
2024年度からの医療計画に向けた議論スタート、地域医療構想と医師配置、外来医療など考えるワーキングも設置—第8次医療計画検討会

新興感染症発生に備え、予め「都道府県と医療機関で対応内容の協定を締結」し、一部医療機関に協力を義務付ける—厚労省