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GemMed塾 短期間で効果を出せるコスト削減の手法とは ~パス改善と材料コスト削減~

認知症の行動・心理症状(BPSD)発生予防の取り組み評価、リハ・栄養・口腔の一体的取り組みさらに推進―社保審・介護給付費分科会(3)

2023.12.13.(水)

Gem Medで報じているとおり、来年度(2024年度)の介護報酬改定に向けて、12月11日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、改定内容に関する「審議報告」の取りまとめに向けた議論を行いました。

年内に審議報告をまとめ、別に政府が予算案編成過程で決定する改定率などを踏まえて、年明けから具体的な単位数設定・基準等設定論議に入ります。

本稿では、同時改定も強く意識した「認知症対応力の強化」「リハビリ・栄養管理・口腔管理の一体的取り組み等」に焦点を合わせます(医療・介護連携に関する記事はこちら、生産性向上等に関する記事はこちら

介護事業所・施設での認知症対応力強化を図る、行動・心理症状の発生予防も評価

認知症患者は、2018年に500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」という状況を迎えましたが、2025年には約700万人(同じく5人に1人)、2040年には約800-950万人(同じく約4-5人に1人)に達し、さらにその後も増加が続くと見込まれます。このため、2019年には認知症施策推進大綱が、本年(2023年)には認知症基本法が制定され、認知症患者の意向を十分に踏まえた総合的な対策(認知症との共生、認知症予防など)を進めることとされています。

認知症対策は、医療・介護・福祉の各施策が連携し、総合的に進めることが極めて重要であり、厚生労働省老健局老人保健課の古元重和課長は12月11日の介護給付費分科会に次のような「介護報酬での認知症対応力向上案」を提示しました。

▽訪問介護、訪問入浴介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護の【認知症専門ケア加算】について、認知症高齢者の重症化緩和や日常生活自立度IIの者への専門的ケアを行うことを評価する観点から「利用者の受け入れに関する要件」を見直す(関連記事はこちら

▽訪問リハビリについて、認知症リハビリ推進の観点から「認知症に対して認知機能や生活環境等を踏まえ、応用的動作能力や社会適応能力を最大限に活かしながら生活機能改善を図る」リハビリ実施を評価する新加算を設ける(関連記事はこちら

▽(地域密着型)通所介護の【認知症加算】について、「従業者に対する認知症ケアに関する個別事例の検討、技術的指導に係る会議等の定期的な開催」を要件化するとともに、「利用者に占める認知症割合」要件を緩和する(関連記事はこちら

▽小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護の【認知症加算】について、▼「認知症ケアに関する専門的研修修了者配置や認知症ケアの指導、研修等の実施」を評価する新区分を設ける▼新区分の取り組みを促進する観点から、現行区分の評価見直しを行う(関連記事はこちら

▽認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院について、「認知症の行動・心理症状(BPSD)発現を未然に防ぐ、出現時に早期に対応するための平時からの取り組みを推進する」観点から、認知症のチームケアの取り組みを評価する新加算を設ける(関連記事はこちら

▽介護老人保健施設の【認知症短期集中リハビリテーション実施加算】について、▼入所者の居宅を訪問し生活環境を把握する」ことを評価する新区分を設ける新区分の取り組みを促進する観点から、現行区分の評価見直しを行う(関連記事はこちら



増加する認知症高齢者に対し、より適切なケア提供を目指す内容であり、委員から異論・反論は出ていません。もっとも、認知症高齢者グループホーム等における「心理・行動症状(BPSD)予防に資する取り組み」の新たな評価に関連し、田母神裕美委員(日本看護協会常任理事)が「既存加算の算定率は非常に低い(グループホームの【認知症専門ケア加算】は加算Iで0.05%、加算IIで0.00%)。認知症対応力の底上げが重要であり、研修受講要件などは十分に工夫しなければならない」と注文を付けています。また通所介護の認知症加算に関する要件についても、古谷忠之委員(全国老人福祉施設協議会参与)が緩和・工夫を求めています。「加算取得に当たり研修受講などが要件となっているが、研修が近隣で受けられない、すぐに満席になってしまい受講できない」という事態が生じることを懸念した注文と言えます。

今後、こうした注文も参考にしながら詳細な詰めを行っていきます。

リハビリ・栄養管理・口腔管理の一体的推進を介護報酬面でサポート

また、リハビリ・栄養管理・口腔管理の一体的実施が要介護者の重度化防止・自立支援に向けて極めて重要であることは述べるまでもないでしょう。リハビリの効果は患者の栄養状態に大きく左右され、栄養状態改善のためには「口からの食物摂取」が重要であることが指摘されています(関連記事はこちら)。2024年度は診療報酬、介護報酬等の同時改定が行われることから、医療・介護両面からリハビリ・栄養管理・口腔管理の一体的実施」に向けてた手当てが行われます(関連記事はこちら)。

介護報酬上の手当てについて古元老人保健課長は、膨大な提案を行いました。

まず「リハビリ・機能訓練、口腔管理、栄養管理の一体的取り組み」の推進に向けて次のような報酬対応が提案されています。これらの提案に異論・反論は出ておらず、今後、詳細な単位設定が進められます。

▽訪問リハビリ、通所リハビリについて、▼口腔アセスメント・栄養アセスメントを行う▼ リハビリ計画等のリハビリ・口腔・栄養情報を関係職種の間で一体的に共有(必要に応じて LIFE情報を活用)▼共有した情報を踏まえ、リハビリ計画の必要な見直しを行い、見直し内容を関係職種で共有する—ことを評価する新加算を設ける(関連記事は(関連記事はこちらこちら

▽介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護の【個別機能訓練加算(II)】、介護老人保健施設の【リハビリテーションマネジメント計画書情報加算】、介護医療院の【理学療法、作業療法及び言語聴覚療法】について、▼口腔衛生管理加算(II)・栄養マネジメント強化加算の算定する▼リハビリ実施計画等のリハビリ・機能訓練、口腔、栄養の情報を関係職種間で一体的に共有(必要に応じてLIFE情報を活用)する▼共有した情報を踏まえ、リハビリ実施計画・個別機能訓練計画を見直し、見直し内容を関係職種で共有sる—ことを評価する新区分を設ける(関連記事はこちら

▽(地域密着型)通所介護、通所リハビリ、、認知症対応型通所介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院について、「リハビリテーション・個別機能訓練、口腔管理、栄養管理に係る一体的計画書」の見直しを行う(関連記事はこちら

大規模な通所リハビリでも、質の高いリハビリ実施で「高い基本報酬」算定可能に

また、介護保険リハビリの充実に向けて、次のような対応案が掲げられました。

▽訪問リハビリ・通所リハビリにおいて、「入院中にリハビリを受けていた利用者に対し退院後の介護保険リハビリ計画を作成するに当たり、入院中に医療機関が作成したリハビリ実施計画書を入手し、内容を把握する」ことを義務付ける(関連記事はこちらこちら

▽訪問リハビリ・通所リハビリにおいて、「医療機関からの退院後に介護保険リハビリを行う際、リハビリ事業所の理学療法士等が医療機関の『退院前カンファレンス』に参加し、共同指導を行う」ことを新加算で評価する(関連記事はこちらこちら

▽介護老人保健施設・介護医療院の開設許可があったときは「訪問リハビリ事業所の指定があった」ものとみなし、通所リハビリ・訪問リハビリのみなし指定を受けている老健施設・介護医療院について「施設の医師配置基準を満たす」ことで「リハビリ事業所の医師配置基準を満たす」ものとみなす(関連記事はこちら

▽訪問リハビリについて、介護予防訪問リハビリの基本報酬に一定の差を設ける(関連記事はこちら

▽介護予防訪問リハビリ、介護予防通所リハビリについて、▼利用開始から12か月が経過した後の減算を拡大する(ただし、定期的なリハビリ会議によるリハビリ計画見直しを行い、
LIFEへリハビリデータを提出しフィードバックを受けてPDCAサイクルを推進する場合は減算を行わない)▼要介護認定制度の見直しに伴い、より適切なアウトカム評価に資するようLIFEへのリハビリデータ提出を推進するとともに、【事業所評価加算】を廃止する—(関連記事はこちらこちら

▽訪問リハビリについて、入院中にリハビリを受けていた利用者が、退院後早期に介護保険リハビリを受けられるよう「退院後1か月」に限り、入院医療機関の医師の情報提供のもと、訪問リハビリテーションを実施した場合の減算を見直す(関連記事はこちら

▽訪問リハビリの「リハビリ計画作成に当たり事業所医師が診療せず、適切な研修修了等をした事業所外の医師が診療した場合の減算(診療未実施減算)について、▼事業所外の医師に求められる「適切な研修の修了等」の適用猶予期間(2024年3月末まで)を3年間延長する▼適用猶予期間中でも、事業所外の医師が「適切な研修の修了等」の要件を満たすことを、事業所が確認する義務を課す—(関連記事はこちら

▽通所リハビリの事業所規模別基本報酬について、▼通常規模型、大規模型(I)、大規模型(II)の3段階を、「通常規模型、大規模型の2段階」に変更する▼「【リハビリマネジメント加算】算定率が利用者全体一定数超」「リハビリ専門職配置が一定数超」の大規模型事業所は、通常規模型と同等の評価を行う—(関連記事はこちら

▽居宅介護支援、介護予防支援(訪問リハビリ、通所リハビリ)について、ケアマネジャーがケアプランに通所・訪問リハビリを位置づける際に意見を求める「主治の医師等」の中に「入院中の医療機関の医師」を含むことを明確化する(関連記事はこちらこちら

▽介護老人保健施設の【短期集中リハビリテーション実施加算】について、▼原則として入所時・1か月に1回以上「ADL等の評価」を行った上で、必要に応じてリハビリ実施計画を見直す▼評価したADL等のデータをLIFEを用いて提出し、必要に応じて提出情報を活用する—ことを要件とする新区分を設ける(新区分の取り組みを促進する観点から、現行区分の評価見直しを行う)(関連記事はこちら



リハビリ充実を目指す内容で異論・反論は出ていませんが、「通所リハビリの大規模型事業所について、減算が導入された際には『財政中立』(大規模を減算した分、通常規模を引き上げる)ではなく、単純な減算が行われた。今回の見直しでも『財政中立』(大規模減算を縮小する分、通常規模を引き下げる)での対応を行ってはならない。リハビリの質が担保されている事業所は、当然、相応の評価とすべき」(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)、「老健施設の【短期集中リハビリテーション実施加算】で新区分を設けるのであれば『財政中立』(新区分を高く評価した分、既存区分を低くする)で行うべき」(伊藤悦郎委員:健康保険組合連合会常務理事)といった注文がついています。この点は「介護報酬改定率がどの程度になるか」と密接に関連し、改定率も踏まえながら調整を進めていくことになります。

介護報酬でも口腔管理・栄養管理の充実を目指す

さらに「口腔管理」「栄養管理」の充実に向けて、次のような対応案も示されています(関連記事はこちら)。

●口腔管理の充実
▽居宅療養管理指導費について、算定対象を「通院・通所が困難な者」から「通院困難な者」に見直す

▽訪問介護、訪問看護、訪問リハビリ、短期入所生活介護、短期入所療養介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護について、「事業所と歯科専門職の連携の下、介護職員による口腔衛生状態・口腔機能の評価の実施、利用者同意のもとの歯科医療機関・ケアマネジャーへの情報提供」を評価する新加算を設ける

▽居宅療養管理指導(歯科衛生士等が行う場合)について、「終末期がん患者の利用者」での算定回数上限を緩和する。

▽特定施設入居者生活介護について、3年間の経過措置を置いたうえで【口腔衛生管理体制加算】を廃止し、同加算の算定要件の取り組みを一定緩和した上で基本報酬の要件に組み込む

▽介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院について、「利用者の入所時・定期的な口腔衛生状態・口腔機能の評価の実施」を義務づける

●栄養管理の充実
▽居宅療養管理指導について、「終末期等で、一時的に頻回な栄養管理・介入が必要と医師が判断した利用者」に対し、期間を設定したうえで追加訪問することを可能とする

▽介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院について、「施設の管理栄養士が入所者等の栄養管理情報を他の介護保険施設や医療機関等の医師、管理栄養士、ケアマネジャーに文書等で提供する」ことを新加算で評価する(関連記事はこちら

▽介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院について、「医療機関から介護保険施設への再入所者」等で療養食が必要な利用者を【再入所時栄養連携加算】の算定対象に加える



これらの対応案にも異論・反論は出ていませんが、「施設から医療機関等へ移った際の栄養情報共有は極めて重要である。医師、管理栄養士、ケアマネジャーのみを共有対象としているが、全職種に広げ、多職種で栄養を含めた情報共有を進めるべき」(田母神委員)との注文も出ており、今後、詳細を詰めていくことになります。

なお、診療報酬でも裏返しの対応(医療面での対応)が検討されています。



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