Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

コロナ感染症で「がん検診の受診控え」→「大腸がん・胃がん手術症例の減少」が顕著―がん対策推進協議会(1)

2021.3.12.(金)

新型コロナウイルス感染症の影響で「がん検診」等の受診控えが生じ、主に検診で見つかることの多い「大腸がん・胃がん」の手術症例が大きく減少。胃がんでは「腹膜播種による手術不能」症例が増加している―。

3月11日に開催された「がん対策推進協議会」(以下、協議会)に、こういった状況が報告されました。

協議会では「現在の第3期がん対策推進基本計画における『がんとの共生』『基盤整備』分野の中間評価」に向けた議論、「妊孕性温存療法への助成事業」に関する議論なども行っており、別途、お伝えいたします。

なお、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの調査でも「がん症例の落ち込み」が明確になっています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

検診で見つかる「大腸がん・胃がん」で症例減が目立つ、膵臓・食道がんなどは減らず

新型コロナウイルス感染症が昨年(2020年)初頭より我が国でも猛威を振るう中で、「患者の減少」が生じています。例えば、新型コロナウイルスへの感染リスクを抑えるために「患者サイドが医療機関受診を控える」事例や、新型コロナウイルス感染症の重症者に医療資源を集約するために「予定入院・予定手術を延期する」事例など、さまざまなケースがありますが、「待てないはずの『がん』患者」も大きく減少している状況が分かってきています。

3月11日の協議会では、日本癌治療学会理事長の土岐祐一郎参考人から大阪大学・関連病院(38施設)における大腸がん・胃がん手術症例の状況が報告されました。土岐参考人によれば「38施設で大阪圏のがん患者の約半数、日本全国のがん患者の約5%を診療している」状況です。

まず、「大腸がんの切除症例」(ポリペク、粘膜切除を除く)数は、2019年4-12月と2020年4-12月とを比較すると「10.3%の減少」となりました。月別に見ると以下のとおりで、5月に最も落ち込み、その後、回復したものの、年末の第3波でまた落ち込んでいる状況が伺えます。

▼4月:8.9%減
▼5月:27.7%減
▼6月:14.5%減
▼7月:16.4%減
▼8月:3.3%減
▼9月:6.1%減
▼10月:0.5%減
▼11月:8.0%減
▼12月:8.8%減

大腸がん手術症例の推移(がん対策推進協議会(1)1 210311)



また、「ステージ別」・「1施設当たりの症例数別」に見ると、「症例数の比較的多い施設(年間100症例超)」で、「軽度(ステージゼロ―I)症例」の数が大きく減少していることが分かりました。

進行度の低い大腸がん手術症例が、大規模施設で減少している(がん対策推進協議会(1)2 210311)



次に、「胃がんの切除症例」数を見てみると、2019年4-12月と2020年4-12月とを比較すると「19.1%の減少」となっています。月別に見ると以下のとおりで、大腸がん症例に比べて「傾向は同様であるものの、落ち込み度合いが大きい」ことが分かります。土岐参考人は「6月までは予定手術延期など病院サイドの要素があったが、7月以降は解消しており、患者サイドの要素(検診減など)が大きい」とコメントしています。

▼4月:5.6%増
▼5月:26.8%減
▼6月:8.2%減
▼7月:37.0%減
▼8月:31.9%減
▼9月:7.0%減
▼10月:24.5%減
▼11月:6.7%減
▼12月:29.7%減

胃がん手術症例の推移(がん対策推進協議会(1)3 210311)



「ステージ別」に見ると、大腸がんと同様に「軽度(ステージI―II)症例」の数が大きく減少しています。さらに「切除できない症例」(開腹したものの腹膜播種があり、腫瘍切除できなかった症例)が増えていることも分かりました。

進行度の低い胃がん手術症例の減少が目立つ(がん対策推進協議会(1)4 210311)



こうした「がん手術症例の減少」は、がん種によって傾向が異なるようです。土岐参考人は、「大腸がん・胃がんなどの主に『検診』で見つかるがんでは、減少傾向が強い」、その一方で「膵臓がん、肝臓がん、食道がんなど、主に患者の自覚症状で見つかるがんでは、手術症例数は減っていない」ことを紹介しています。

昨年(2020年)5月、コロナ感染症の影響で、がん検診は「前年から8割減」

また、国立がん研究センター「社会と健康研究センター検診研究部」室長の高橋宏和参考人からは、次のような「がん検診の状況」が報告されています。

▼日本総合検診医学会、全国労働衛生団体連合会の調査(180機関を対象)によれば、昨年(2020年)4月・5月に健康診査(事業主健診、特定健診、人間ドック健診、学校健診、その他)の受診者数は前年同期の2割程度にまで落ち込んだが、その後、前年並みの水準にまで回復している

健康診査の状況(がん対策推進協議会(1)5 210311)



▼日本対がん協会の調査によれば、5大がん(胃・大腸・肺・乳・子宮頚)検診は、昨年(2020年)4月・5月に前年同期の2割未満にまで落ち込み、その後、回復傾向にあるが7月時点でも6割程度にとどまっている

がん検診の状況(その1)(がん対策推進協議会(1)6 210311)



▼聖隷福祉事業団の調査によれば、5大がん検診は、昨年(2020年)5月には前年同期の4割程度にまで落ち込んだが、その後回復し、前年並みの水準に戻っている

がん検診の状況(その2)(がん対策推進協議会(1)7 210311)



このように「4月・5月」の検診受診減が、上述の「大腸がん・胃がん切除症例の落ち込み」(つまり、手術の遅れ)につながっていると考えることができます。胃がん症例では「腹膜播種によるインオペが増加している」という話もあり、「手術の遅れによってがんが進行してしまった症例が増えている」可能性も考えられます。より詳細な分析を進めるとともに、「各種の検診施設や医療機関では、新型コロナウイルス感染症対策をしっかり行っており、適切に検診、治療を受けられる」旨を患者・国民に広く周知し、「自己判断での検診・受診控えをなくす」努力も必要と考えられます(関連記事はこちら)。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

【関連記事】

がんの罹患率・死亡率は全体として低下傾向にあるが、乳がん・子宮がんでは横ばい—がん対策推進協議会
2023年度からの第4期がん対策推進基本計画に向け、現行「第3期計画」の中間評価を実施―がん対策推進協議会
第3期がん対策計画の中間評価に向け、希少がん対策やがん患者の就労支援状況などを把握―がん対策推進協議会
「正しいがん医療情報の提供」、第4期がん対策推進基本計画の最重要テーマに―がん対策推進協議会
第3期がん対策推進基本計画の中間評価を2020年度に実施、評価指標の検討始まる―がん対策推進協議会

地域がん診療連携拠点病院、機能・実績に応じ「高度型」「特殊型」など3分類に―がん診療提供体制検討会
がん携拠点病院の新要件固まる、2019年4月から新要件に基づくがん体制始まる―がん診療提供体制検討会
地域がん拠点病院、2019年から機能や実績に応じて3区分に―がん拠点病院指定要件ワーキング
拠点病院にABCの区分設け、補助金などに反映―拠点病院の指定要件ワーキング

第3期がん対策推進基本計画を閣議決定、ゲノム医療推進や希少・難治がん対策など打ち出す
病院にピアサポーターが必要な本当の理由、がん患者を支える非医療職の実像

【2018年度診療報酬改定答申・速報6】がん治療と仕事の両立目指し、治療医と産業医の連携を診療報酬で評価
第3期がん対策基本計画案を了承、2020年までに受動喫煙をゼロにする—がん対策推進協議会
がんゲノム医療を提供できる中核病院を、本年度(2017年度)中に7-10施設指定—がんゲノム医療懇談会
第3期がん対策の素案、予防・医療充実・共生・基盤整備すべてを重点分野に—がん対策推進協議会
がんゲノム医療、当面は新設する「がんゲノム医療中核拠点病院」で提供―がんゲノム医療懇談会
第3期がん対策基本計画、「がんの克服」をスローガンに掲げる—がん対策推進協議会
「免疫療法」の推進、科学的根拠のない免疫細胞療法と峻別し、がん対策基本計画に明記を―がん対策推進協議会
次期がん対策基本計画の全体目標、「予防」「治療」「共生」を軸に調整―がん対策推進協議会

千葉県がんセンター、4月から都道府県拠点病院に復帰―がん拠点病院指定検討会
同一医療圏で複数のがん拠点病院を指定する場合、明確な「相乗効果」が必要―がん拠点病院指定検討会

がんの地域連携パスを活用し、拠点病院単独でなく地域全体でがん患者を支えよ―がん診療提供体制検討会(2)
がん医療の均てん化を進めるが、粒子線治療やゲノム医療など一部は集約化も必要―がん診療提供体制検討会(1)
がん拠点病院の指定要件、2018年1月目途に「医療安全」項目の追加など根本的見直し―がん診療提供体制検討会
がん診療連携拠点病院におけるステージ別症例数や人員体制など、国民に分かりやすく情報提供―がん診療提供体制検討会
第3期がん対策推進基本計画、ゲノム医療や希少・小児がん対策などを柱の1つに―がん対策推進協議会
第3期がん対策推進基本計画の策定に向け、集中的に議論を重ね早ければ年内に骨子案策定―がん対策推進協議会
がん対策基本計画の中間評価まとまる、「死亡率20%減」は達成できず―がん対策推進協議会
がん対策推進基本計画の中間評価、6月10日の協議会で報告書とりまとめへ―がん対策推進協議会
がん対策の最大目標「死亡率の20%減少」、達成困難な状況に危機感―がん対策推進協議会

自治体独自のがん拠点病院として、東京新宿メディカルセンターと東海大八王子病院を指定—東京都

第3期がん対策推進基本計画を閣議決定、ゲノム医療推進や希少・難治がん対策など打ち出す



群馬大病院、2019年7月から「都道府県がん診療連携拠点病院」に復帰―厚労省
都道府県がん拠点病院50施設、地域がん拠点病院339施設など4月1日から新指定―がん拠点病院指定検討会



がんゲノム医療の推進に向け、遺伝子パネル検査を6月から保険収載―中医協総会(1)
遺伝子パネル検査の保険収載に向けた検討進む、C-CATへのデータ提出等を検査料の算定要件に―中医協総会(1)



新設される【がんゲノム医療拠点病院】要件固まる、3年で100人以上の治験等実績が「望ましい」―がんゲノム医療拠点病院等指定要件ワーキング
新設される「がんゲノム医療拠点病院」、中核病院なみの診療体制を敷きゲノム医療を自院で完結―がんゲノム医療拠点病院等指定要件ワーキング

がんゲノム医療、自分に最適な抗がん剤見つかる可能性は10-20%にとどまることなど説明を―がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議



がん医療の内容、実績、クリニカルパスを他院と比較し、がん医療の質向上を目指す―CQI研究会
胸部食道がん、平均値では胸腔鏡手術のほうが開胸手術よりも術後日数が長い―CQI研究会
ベンチマークと臨床指標でがん医療の均てん化を推進―CQI研究会、8月開催
大腸がんの在院日数、短縮傾向もなお病院格差-CQI研究会が経年分析
乳がんの治療法、放射線実施率など格差鮮明―CQI研究会、臨床指標20項目を調査
前立腺がん手術、在院日数最短はダヴィンチ、合併症発生率は?―第10回CQI研究会
拠点病院は現場の使命感で支えられている、今こそ「医療の質評価」の普及を――九がん・藤院長

ステージ3Bの医療経済学者、がんで逝った友への鎮魂歌

新型コロナ禍で「自身の判断で治療中断するがん患者」も、がん拠点病院は「治療継続の必要性」呼びかけよ―がん拠点病院指定検討会(2)
2020年7月に外来・入院とも患者数復調続く、予定入院患者減少のトップは「胃がん」―GHC新型コロナ分析第5弾
2020年6月、外来・入院ともに「患者数復調の兆し」が見られるが、がん患者症例数はさらに減少―GHC新型コロナ分析第4弾
2020年5月、新型コロナでの患者減がさらに拡大、がんや脳梗塞・心不全患者も減少―GHC分析第3弾
4月には新型コロナで外来・入院ともに患者大激減、がん医療へも影響が拡大―GHC分析第2弾
3月時点から新型コロナで外来・入院ともに患者減、白内障・ポリペク割合の高い病院で患者減目立つ―GHC分析